日常
三題噺もどき―ごひゃくはちじゅういち。
机に座ってパソコンをいじっている。
家の中だと言うのに、外より寒い自室。
それなりに服を着こんでみたり、ひざ掛けをしたりとしていても、寒い。
何より手足の冷えが酷くて、その癖に顔は暑いと言う状況に陥っている。おかげで頭があまり回っていない感じがして、あくびも止まらない。眠くはないんだけど。
「……」
そんな状態だから、何をするにも、どうにもあと一歩足りない。
まぁ、こんな状態でなくても、こうも寒いとなにもやる気は起きないんだけど。
いい加減早起きぐらいはしてみようと頑張っているのだが、どうにも起きると昼前とかになっている。……今までどうやって起きてたんだろう。
「……」
パソコンをいじってはいるものの、マウスでスクロールしているばかりで。
動画サイトを眺めているんだけど、何か面白いものはないかと思うばかりで、何も見つからない。最近、こういう動画を見るのも疲れるんだよなぁ。妹に進められたりはするんだけど、次女とは動画の趣味は合わない。その他の趣味は案外あっていたりするんだけどな。魔法使いとか悪魔とか天使とかそういうのが結構好きなのだ。まぁ、今のところだし趣味は変わるし、こういう趣味はあまり口外してもいいことはない感じがするから、身内で済ませているんだろうけど。外に趣味仲間ができればいいな。
「……」
まぁとりあえず。
見慣れた動画でも流しておこうと、カーソルを合わしてクリックをする。
ゲーム実況の動画だが、もう既に何十回とみていて、内容も覚えているので、見たとて新鮮さは皆無だったりする。
だから、ぼうっとするには丁度いいんだけど。
そう思いながら、動画を再生し始めたタイミングで。
『ピンポーン』
と、玄関のチャイムが鳴った。
「……」
荷物が届く予定はなかったが、最近母が何かと注文していたりするので。
それだったら、再配達を頼んだりするのは申し訳ないと思い。
立ちにくい椅子の上から立ち上がり、ほんの少し急ぎ足で階段を降りる。
あまり急いでいくと階段から落ちるのでそこは注意しながら。……いい年してと思うが、階段を踏み外すのに年齢は関係ない。落ちる時は落ちる。
「……」
階段を降りきって、玄関とリビングを仕切るドアの横にあるモニターを確認する。
誰かが居れば、そこに映る仕様になっている。会話もできるんだけど、うちの人はあんまりこれを使わない。もうここまで来たら、玄関開けてしまった方が早いと思うんだろうな。せっかちではないんだが、めんどくさがりなんだよなぁ。
「……?」
しかし、そのモニターには。
誰も映っていなかった。
広がるのは、我が家の狭い駐車スペースの景色だけで。
私の乗る中古車がぽつんと1つあるだけだ。
「……」
ピンポンダッシュとか映らないように人がかがんでいない限りは、幽霊の仕業かもしれないが。まぁ、そんなことはないわけで。……いや幽霊の存在を信じていないと言うわけではなく。過去に一度見たことがあると言うと揶揄われるので言わないけれど。
「……」
この家ではよくある事なのだ。
きっと玄関を開けたら。ドアノブのあたりに鞄がぶら下がっているんだろう。
……まぁ、このチャイムは回覧板を置いておきますからねというサインである。道路を挟んで向かい側の家に住むご老人が、チャイムだけ鳴らして鞄を置いてさっさと帰ってしまうもんで。二階にいると、降りてくる間にもう居なくなっているのだ。
「……」
荷物ではなかったことに少し安心したが、回覧板だったことに少しモヤッとした。
私が仕事をしている間もこうして置いていっていたらしいが、この時間、基本的に我が家は無人なのだ。いい加減そのあたりを気にしてほしいと思うのは、おかしな話なんだろうか。その鞄が誰かに取られないと言う保証でもあるんだろうか……これでなくせばこっちの責任になるんだろう?これだから近所づきあいは嫌いなんだ。いい加減自治会やめればいいのに……。
「……」
まぁ、そんなあれこれをするのも、私ではなく両親なので。
とりあえず、玄関のドアをひらき、案の定ドアノブにかけられていた鞄を取り上げる。
適当に玄関に置いておき、さっさと部屋に戻る。この後誰かにもっていかないといけないんだろうけど、どこに行けばいいのかも知らないし、連絡をみるべきは両親なので私はノータッチである。
「……」
あぁ、もう。なんかこの一連の作業だけで疲れた。
何でこんなに疲れるんだろうな……階段の上り下りも好きではないし、なんでこの家二階建て何だろうな。平屋にすればよかったのに。体力がなくなりつつある私が悪いんだけど。普通に疲れる。この階段。家に文句を言っても何もかわりゃしないんだけど。
「……」
部屋に戻れば動画は半分ほど終わっていた。
まぁ、別にいいか。覚えているし。
もう何かに文句を言うのも疲れる。
お題:悪魔・幽霊・チャイム