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小さな1粒、集めました

さみしがりやの神様。

作者: 暁柚那

神様だって寂しくなるんだ。






私はこの名もなき川の主。

龍神と呼ばれたのはその昔。今は名前なんてものはない。

人があまり信仰する機会が減ったからなのか。


あと少しでこの川も埋めたてられ、人が住みやすい環境になるという。

人は分からぬ、自然とともに生きてきたのはとうの昔。

今はその自然を破壊し続けている。

きっとそれの対価はあとで人が払うのだろう。


この蛇みたいな長い長い胴も、昔は澄んだ白緑色だった。

そして私の瞳の色も焔が燃えるような真紅だった。

が、今はもうどちらもくすんでしまっている。

川が濁っているからか…。

昔は透明で澄み切っていた。川も白緑色の自分も白緑色の木霊も生き生きしていたのを覚えている。


そしてら彼ら…新緑に包まれ木々の傍にいた、白緑色に身を包む木霊たちも高天原に帰るか、いつの間にか姿を消してしまった。

彼らがいなくなってから数年悩んだ末、

私も高天原に帰るとするか。

と決意した。

もう少し見ていたかったこの世界。

だが、人と交わらなくなり、白緑色の木霊たちもいなくなり、ごみが多くなったこの場所にいるのは…。


…さみしい。

だから……。


少しだけふぅと息を吐いて、今度は腹一杯になるまで息を吸う。

そして、息を吐きながらぐおおお!と、人には聞こえぬ声を発してから、大きな風を撒き散らしつつこの地を離れる。

沢山の色が溢れていたこの地に…この時代にお別れを。

ちらり、と目で振り返りながら高天原へと旅立とう。

また、『ここに戻りたい』と思えるまで。それまで幸あらんことを。

まだ私の体の色が白緑色の龍でありますよう、願いを込めて。






神様だって泣いたり笑ったりするんだよ。

それが例え龍の神様だろうが。

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