4月10日月曜よる8時2分 あり得べからざる断章
可笑しい一話で収まりきらなかった???
月も星も隠れてすっかり暗く成った今の時間は8時だった。
そこまで遅く無い様に感じるが、お母さんは大体7時頃に布団に入り込み一瞬でぐっすり寝るし小学一年生には結構な時間だ。
それこそ内緒で肝試しでもしようとしない限り、この時間に出歩く事はそうそう無いだろう。
家から出て住宅街から街頭の有る場所まではそこそこ距離があった。とは言え、飽くまで小学生基準だけど。
遠く薄明かりが見える、明かりの無い暗がりの道路を軽快に歩く。
走りたい気持ちもあるが、私は敢えて歩いて行くことにした。
こう言うのを通と言うのだっただろうか?
夜の通である私は敢えて歩くのだ。
そろそろ街灯の有る道路の曲がり角、十字を描く様に信号が設置されてる交差点に辿り着く。
曲がり角すぐ其処の信号には男の人が居た。
後ろ姿しか見えないがスーツを着け肩を落とした大凡30代くらいの疲れ果てた印象の男だ。
たぶん仕事帰りのサラリーマンなのだろう、この時間帯は住宅街のすぐ其処なのも相まって車こそそこそこ通るが人は余り居ない事が多い。
丁度私が信号付近につくとサラリーマンであろう男が後ろに…私の方に振り向いて来た。
普通の顔だった、唯一何か特徴が有るとしたら一目見て判る程に疲れた表情をしている事だろう。
後ろ向いた事だって可笑しな事では無い、誰だって夜に一人で居る時に後ろから誰か来る音がしたら振り向くだろう。私だってそうだ。
だから何か可笑しな事が有るとしたら、この時間帯に子供が一人で出歩いて居るのに何でも無い様に前を向き直した事だろう。
一つ勘違いしないで欲しいのだけど、別にこのサラリーマンであろう男が薄情な訳じゃ無い。
事情がある、勿論種もあれば仕掛けもだ。
彼が私に違和感や異常性を感じないのは私が手に持っているランタン「ホルマリン漬けのトラペゾへドロン」が原因だった。
「ホルマリン漬けのトラペゾへドロン」の外見はランタンだ、だけど中に入っているのは日でもなければ電球でも無い。
液体だ…ホルマリン、もっともこれが私たち人間がホルマリンと定義した水溶液とは限らないけど。もしかしたら人以外の存在にとってのホルマリンかも知れない。
そして中心、ホルマリンの中にはトラペゾへドロン…平行な辺のない四角形からなる多面体が浮いていた。
その色は銀色の様な玉虫色の様な不思議な色だ。時たま触手の様な形に成っている事が有る。
それに加えて常にそこそこ明るく光っているから明かりとしても使えるのだ。
これを初めて手に取った時に知ったのだがトラペゾへドロンは這い寄る混沌の断章で出来ているらしい。ホルマリンは外宇宙の副王の断章で出来ているみたいだ。
這い寄る混沌と外宇宙の副王が何なのかは良く分からないけど。
弟に聞いてみたら何か知ってるみたいだけど、這い寄る混沌は兎も角外宇宙の副王の断章で出来たホルマリン漬けに関しては珍しく何時も無表情な顔を引き攣らせて「…ありえない」と言っていた。
弟曰く最も近しい表現で言うならば「無を取得した」様なものとのこと。
やっぱり良く分からない。無は取得出来ないと思うけど、それともだから有り得ないと言ったのだろうか。
考えても仕方ないのでそう言うものだと思う事にした。
それでは、そろそろ説明をしようと思うけど「ホルマリン漬けのトラペゾへドロン」の効果は究極的に言えば認識への干渉…らしい。
何となく理解した事なので細かく聞かれても困る。
正確に言うならば「這い寄る混沌の基本機能の一つの再現」をする「神秘」みたいなのだ。
外宇宙の副王のホルマリン漬けにより、トラペゾへドロン単体では影響力が足りない過去・現在・未来への干渉を可能にするとか。
因みに再現される這い寄る混沌の基本機能の一つは「人の枠組みから上向きに外れた見た相手を精神崩壊させる程の魅力を精神崩壊させずこれといった強烈な感想を抱かない様にする」で過去・現在・未来への干渉は例にすると…
写真や映像記録や人の記憶
現世
初見時や遠くからの瞬間的な視界または脳内補正
などらしい。
まあ、知った所で何か変わる訳でも無いので雑学みたいなものなのだけれど。
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