ぷろろーぐ
ふと、今日も夜に外へ出歩きたくなった。
夜歩きはもう何度か繰り返した事だけど小学生になって少ししただけの私には悪い事をしていると言う背徳感があった。
そもそも事の発端は弟だった。
私の弟は夜になると何時も露に成った様に消えて居なくなる。
弟によると「周りに何も見えない様な暗闇」に何時の間にか居るらしい。
弟は何時も暗闇から「ナニカ」を持ち帰っていた。
とある日に私は「ナニカ」の一つである「星辰の飴玉」を食べた。
星空の様な或いは宵闇の様な味だった。
食べた時何故かそう思った。
手に持った時に何故か名前と効果が判った。
「ナニカ」そうだね…暫定的に「神秘」と呼ぼうか。
「神秘」の類は大概そうなのだ、まるで世界の全てから否定され完全に個で成立しているかの様な雰囲気を持ちながらも認められたい様な引き摺り込む様な魔性と定められた理に叛逆する様な不可思議性がある。
どれもこれも冒涜的で…神秘的だった。
言葉にするのが難しいのだがそうとしか言えなかった。
「星辰の飴玉」は純粋な力の塊だった、食べた者の何らかの力を副作用も無しに強くする。
この時の私は知らなかったが力が強くなる「神秘」は多々あれど代償が無いのは極めて珍しいらしい。
私が「星辰の飴玉」を食べた瞬間、思考が透き通る様な感じがして、端的言うと頭が良く成ったのだ。
これだけ聞くと何処か間抜けにともすれば誇張表現にも聞こえるが他に言いようが無かった。
とは言え、天才に成ったのかと言うそんな事も無い。
記憶力が上がり、集中力が上がり、それなりに深く考えれる様に成った。
言ってみればそれだけだ。
だとしても小学一年生の私には十分なほどだった。
それから暫くしてふと…そう、本当にふと夜の世界を見てみたい歩き回りたいと思ったのだ。
原因の一つは弟から良く「くらやみ」の話を聞いていたからだろう。
他にも有るかもしれないが、強いてこれと言えるものは思い浮かば無かった。
親に止められないのかと思うのだろうが、お父さんは何時も仕事で中々家に帰って来ないし、お母さんは一度眠ればなかなか起きないのだから私の良心の呵責以外の問題は特に無かった。
そうだとしても、外に私見たいな子供が入れば色々と問題が有りそうなものだが、其処ら辺は弟の持ち帰ってきた「神秘」を使う事で対処できた。
外宇宙を縫い付けているらしい、メンズ用なのだろう縦長の黒色と灰色の四角い無骨なショルダーバッグ「外宇宙の貯蔵庫」が有るし持てる限りの「神秘」も持って準備は万端と言えた。
私個人としても、どれだけ入れても重さがバッグ一つ分から変わらない「外宇宙の貯蔵庫」は渋い見た目も相まって結構好きだった。
肩から鞄の紐を掛け立ち上がる。
「さてと…」
時間も丁度良いし私もそろそろ夜の世界に繰り出すとしよう。
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