8:舞踏会
3階の高さまで吹き抜けたホールになっている。見たこともない大きさのシャンデリアがいくつも吊り下げされている。左右には3階まで続く階段がのびており、その階段には青い絨毯が敷かれていた。沢山の花、そして王旗、王太子旗、騎士団旗、公爵家の紋章旗、神官庁旗が飾られている。様々な楽器を手にした楽団。ホールの中央には……。
君ヒロで見慣れた男性5人が、ゲームそのままの姿でそこにいる。
いや、ゲームで見ていた時より、数億倍素敵に見える……。
メイド長シンシアに促され、そのまま中に進むと。
五人を代表するように、王太子ルイ・アーネスト・ラングが一歩前に出た。
ルイ王太子は……まさにザ・王子様。
スラリとした長身で、髪は少し長めのゴールデンブロンド。
夏空のような碧い瞳に、高い鼻、笑みをたたえた血色の良い唇。
白シャツに濃紺のタイ、スカイブルーのベストとテールコートにズボン。ラペルの繊細な銀糸の刺繍がとても美しい。
とても爽やかな印象は、ゲームそのままだ。
「アメリア聖女様、あなたに会える日を心待ちにしていました。わたしはイェール王国王太子のルイ・アーネスト・ラングです。今日はわたし達五人と、素晴らしい夜を過ごしましょう」
そう挨拶をすると、右手を左胸にあて、優雅にお辞儀をする。
こうやって聖女になる前にも、ルイ王太子の姿は、舞踏会で見たことがある。でも会話をするのは、これが初めて。君ヒロでは見慣れているキャラクターだが、さすがザ・王子様。仕草の一つ一つがとてもエレガント。
ルイ王太子が一歩下がると、筆頭公爵家の嫡男スチュワート・セオ・ランディスが一歩前に出る。
スチュワートは見るからにイケメンオーラが出ていた。
多くの女性から羨望の眼差しで見られてきたことによる、自信のようなものが感じられる。
髪はダークブロンドで、ガーネットのような瞳の色。
端正な顔立ちで、目元のほくろが印象的だ。
白シャツにライム色のタイ、ピスタチオグリーンのベストとテールコートにズボン。ベストの紋織物が秀麗で、目を引く。
「聖女アメリア、私はスチュワート・セオ・ランディス、ランディス公爵家の嫡男です。あなたに会える日をずっと夢見ていました。どうか今宵、あなたのその笑顔を私に向けてください」
スチュワートはルイ王太子のように手を胸にあてお辞儀をしたが、その後、私の手をとった。そして恭しく手の甲にキスをして、元いた位置へと戻る。スチュワートのこの行動に、他の男性陣の顔に、様々な表情が浮かんでいる。
スチュワートは舞踏会で顔を合わせたことがあるし、かなり積極的なタイプであるとは知っていたが、まさかいきなり手の甲へキスをするなんて……。ルイ王太子がしていないのだから、スチュワートもお辞儀だけで済ませると思ったのに。
しかも22歳のルイ王太子に対し、スチュワートは19歳。どうやら年齢も身分にも、物怖じしないようだ。
まあ、この積極性は、君ヒロのゲーム同様であるのだけど。しかし、おかげでこの場は、なんだか緊張感が漂ってしまっている。
ピリッとした空気を和ませるように口を開いたのは……。
「では次は僕が挨拶させていただきましょうか」
そう言って一歩前と出てきたのは、副神官長のメリトゥス・ホワイト・ラング。
国内にあるすべての神殿を束ねる総神官長の右腕と言われる副神官長であるが、元はこの国の第五王子。王位継承の順位も低かったことから、幼少時より神学校に通い、聖職者の道へ進んでいる。現在18歳で、私とは同い年になる。
高い鼻梁に森林を思わせるエメラルドグリーンの瞳。
形のいい唇は柔らかい曲線を描き、淡いピンク色をしている。
透き通るような白い肌に、背中まである長いホワイトブロンドのサラサラの髪。
白い司祭服には、袖や裾に金糸の繊細な刺繍が施されており、美しい容姿にピッタリの装いに感じた。
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