52:タイムオーバーですよぉ
私がしみじみ頷いていると。
「あー、もー、今はダンスタイムでしょ。それじゃなくても人数が増えて、アメリア聖女さまと過ごせる時間が減っちゃうのに。タイムオーバーですよぉ」
ディオンがぷりぷりした様子で部屋に入ってきた。
「それは申し訳ないことをしました。さあ、アメリア聖女、行ってください」
メリトゥス副神官長が微笑を浮かべる。
……本当に、メリトゥス副神官長は、大天使!
メリトゥス副神官長にお辞儀をして、ディオンの方へと向かうと……。ディオンは私の腕を掴むと、ホールの中央目指し、ぐんぐん歩いて行く。
「ディオン様、そんなに急がないでください」
「だって。ボクの持ち時間が減っちゃうでしょう」
「でも、私はドレスですから、そんなに早くは」
「うわぁ」「!?」
一瞬何が起きたか分からなかったが。
目を開けると、ディオンはロバートに襟首をつかまれている。私の体はロバートに支えられていた。
「し れ 」
ロバートはそう囁くと、すぐに私から体を離した。
「!? 今、何が起きた!? というか、苦しいだろう、ロバート、手を離せ!」
「今、ロバート様が手を離したら、転倒しますわよ、ディオン様」
私の言葉にディオンは自身がどういう状態か理解したようで、まずは体勢を整えた。するとロバートはすぐに、ディオンから手を離す。
「ディオン、君は前を見ず、アメリア聖女様の方を見ながら歩いていた。だからロバートがそばにいることに気づかなかった。君はロバートにぶつかりそうになっていたと、気づいていたかい?」
駆け付けたルイ王太子の指摘に、ディオンは目を丸くする。
どうやら全く、気づいていなかったようだ。
「ぶつかる寸前に、ロバートが君の襟首を掴んだ。咄嗟だったし、アメリア聖女様を支える必要もあったから、仕方ないと思うよ。君に腕を引かれていたアメリア聖女様もまた、君がバランスを崩すことで、倒れそうになっていた。それを支えたのがロバートなのだから」
ディオンは状況を理解したようで、罰が悪そうな顔になる。
一方のロバートは……。
ぶ厚いレンズの眼鏡をかけたまま、表情一つ変えずそこにいたが。
「軽食 す」
そう言うと、軽食と飲み物を提供する部屋の方へと、すたすた歩き出した。
「あ、あの、ありがとうございました!」
慌ててその背中に声をかけると。少しだけこちらを振り返り、ペコリと頭を下げ、ロバートは再び歩き出す。そうしている間にディオンはルイ王太子に「レディをエスコートする時は、ゆっくり歩かないとダメですよ」と注意を受けている。
「アメリア聖女様、ドレスに不具合などありませんか?」
ルイ王太子に尋ねられ、裾など確認するが、大丈夫そうだった。
「はい、問題ないです」
「それは良かったです。……ディオン、分かっているね?」
ディオンは拗ねたような顔をしているが……。
「……分かったよ。……ごめんなさい、アメリア聖女さま」
「こちらこそ。ディオン様を待たせてしまったわよね。ごめんなさいね」
すると。
ディオンの頬がポッと赤くなった。
「それではアメリア聖女さま。ボクとダンスをお願いします」
先ほどとは違い。
恭しく私の手を取り、ゆっくりした足取りで。
ディオンは私をホールの中央へとエスコートした。
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もう1話、更新しますー。
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