44:ど、どうしましょうか。
咄嗟に思いついたことを答える。
「そ、そうですね。五人全員がよく見えてしまい……。とても一人だけ選ぶことができないというか」
私の答えに宰相ピアソンとランドル総神官長が顔を見合わせる。
なんだか背中に汗が伝う。
「五人全員を気に入っていると……。でもアメリア聖女様から、いずれかの男性に触れることはない。遠慮されている……のかもしれませぬな。でも客観的に観察していた者の意見では、アメリア聖女様は五人の男性を気に入っていないわけではないが、それ以上でもそれ以下でもないと。あの五人の何が不服なのであろうかのう?」
ランドル総神官長の白緑色の瞳でじっと見られると、なんだか落ち着かない。こちらの考えを読まれてしまいそうで。
「『聖女聖痕確認の儀式』まで男性と過ごすことがありませんでしたので、その、まだ男性そのものに慣れていないのかもしれません……」
苦し紛れでそう答えると。
どう考えても、宰相ピアソンもランドル総神官長も、納得できているとは思えなかったのだが。それ以上、五人の男性について聞くことはなかった。代わりに何か足りない物はないか、必要な物はないか、などを尋ねた。ひとしきり私への質問が終わると……。
「最後にアメリア聖女様から、我々に聞きたいことはありますか?」
「あの、北のアクシャ国とは何か問題は起きていませんか?」
もし。
聖女を暗殺するとしたら。
北のアクシャ国が一番怪しかった。
聖女暗殺に成功したとして。
暗殺者は無事、クリスタル・パレスから逃げきれるか、王宮や宮殿から逃走できるか。捕まる可能性だってある。もしアクシャ国の間者と分かれば、戦争は避けられない。なにせ聖女暗殺なのだから。
そうなるとアクシャ国が来る戦争に備え、準備をしていたっておかしくはない。武器の増強や兵士の増員など何かしていれば、それはイェール王国でも把握しているはず。
アクシャ国に関する情報は聞こうと思えば、ルイ王太子に聞くこともできた。ただ、彼はもう十分過ぎるほど私のための安全対策を講じてくれている。その上でまだアクシャ国に関してしつこく聞くのは……。
ここは、乙女ゲー『君がヒロイン』通称“君ヒロ”の世界だ。だから私も自分が悲劇の聖女アメリアであると分かっている。やがて暗殺されることも。でもルイ王太子にはあくまで夢の中で襲われたとしか話していない。根拠に乏しい起こるかどうかも分からない襲撃事件のために、ルイ王太子は十分過ぎるほど動いてくれた。その上で、未だ襲撃が怖い、アクシャ国が怪しいと相談するのは……。躊躇われた。
もしラシッドがいれば、アクシャ国に関する情報など、簡単に調べてくれたはずだ。でもラシッドはいない。だが目の前にイェール国の宰相がいる。アクシャ国に関する情報など、調べる必要もなく、毎日のように耳に届いているはずだ。だからこそ、尋ねてみることにしたのだ。
「アメリア聖女様、よくお分かりになりましたな。聖なる力に目覚める前に、既にその力の片鱗がみえているのかのう」
ランドル総神官長がそう言えば、宰相ピアソンも深々と頷く。
「実はアクシャ国の第四王子と、ルイ王太子様の妹君にあたるルシール様との婚約が内定したばかりで」
「そ、それは……つまり、友好関係が深まるわけですよね?」
「ええ。過去の遺恨を乗り越え、絆を深めることになります」
私の予想と真逆の動き。
そうなると、暗殺者の黒幕はアクシャ国ではないのか……。
私は考え込むことになったが、宰相ピアソンとランドル総神官長は、聖女の聖なる力の片鱗を垣間見たと、満足そうに帰って行った。
おはようございます。
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続きはまた朝の時間帯に公開しますー。
引き続きよろしくお願いいたします。





















































