13:年下の美少年
「アメリア聖女さま~! 今度はボクの番だよ!」
子供のようにドレスを引っ張られ、慌てて振り向くと、ディオンの天使のような笑顔と目が合う。
「は、はい。踊りましょうか」
身長差に注意しながら、手や腕の位置を調整する。
再びワルツが流れ始めた。
ディオンは音楽にあわせ、軽やかにステップを踏み始める。
「アメリア聖女さまって、ボクの1歳上だよね。ねぇ、年下ってどう?」
「え、ど、どうって……?」
ディオンは見た目では12、3歳ぐらいにしか見えない。
つまりかなり年下に見える。
その年下の、天使のような美少年から年下ってどう、と聞かれると……。
なんだか戸惑ってしまう。
それは君ヒロをプレイしていた時もそうだったが、今もまさにその状態。
そんな私を見たディオンはくすりと笑みを漏らす。
「アメリア聖女さまって、なんだかウブですね。その感じだと……もしかしてあまり男性に慣れていないのかな? だったら年上だろうが、同い年だろうが、年下だろうが、関係ないよね?」
ディオンは見た目に反し、結構グイグイくるなぁ。
男性に慣れていない……。
なぜそんなことまで分かるの、ディオン!?
今はうら若い18歳だが、前世ではアラフォー女子。
それなり男女の機微についても学んできたつもりだ。
「……好きになった人が、たまたま年上だった、同い年だった、年下だった、ということではないのかしら?」
「ふうん。もしかして割りと経験ある?」
「け、経験!?」
な、なんの経験!?
こんな子供から経験なんて言葉が出ると、ドキッとしてしまう……って、ディオンは1歳下!
「やっぱり経験ないね。まあ、それはどうでもいいや。ともかくさ、アメリア聖女さま。ボクのこと好きになって。いっぱい甘えさせて」
「え!?」
「甘えさせてくれたら、その分、ボクからもいっぱいお返ししてあげるから」
い、一体なんの話をしているの!?
さっぱり分からない……。
君ヒロのディオンってこんな感じだった……?
「あとさ、ボク、独占欲強いから。ボク以外の男子と仲良くするの、許せないな」
「そ、そうなの」
「そうなの、って、そうだよね!? アメリア聖女さまは、自分が好きな相手が他の女性から言い寄られているのを見て、悲しくならないの!?」
ものすごい正論。
なんでこんな子供に、当たり前のことを指摘されているの、私!?
「そ、それは……勿論悲しいわ」
「じゃあ、アメリア聖女さま、ボク以外の男性とは仲良くしないで」
うん!? 途中まで正論だったけど、なんかズレていない!?
「気持ちは分かります。でもここにはディオン様以外の男性もいるのですから、無視することはできないですわ」
「ディオンでいいよ。どうせそう呼び合う仲になるのだから。……確かにここにはボク以外もいるけどさ。あ、解決方法発見」
ディオンはアプリコット色の瞳を細めてニコリと笑う。
な、何、解決策って!?
「もうボクに決めたって。国王陛下に伝えてよ」
「え……」
うーん、国王陛下に伝えるなら、なぜディオンをこのメンバーに加えたのかと聞きたい。あ、でも……。君ヒロのプレイヤー目線で考えれば、ディオンは間違いなく、美少年枠。そしてこの需要は確実にある。
とはいえ、いきなりディオンに決めるって……。
あ、でもディオンはまだ17歳。
結婚の際、女性は「聖女聖痕確認の儀式」を終えていること、男性は法律で明文化されているわけではないが、暗黙の了解で18歳になっている。
ということは、ディオンを選べば、ディオンが18歳までは結婚が延びる。私の延命が確約だ! しかも、ディオンを心から愛しているのかと言われると……。残念ながら恋愛対象ではない。弟のようにしか見えない。
「ボクさ、誕生日が3月なんだよね。だから18歳まではまだまだ時間があるでしょ。つまりアメリア聖女さまを待たせることになっちゃうんだよね。でも心配しなくていいよ。その日がくるまでの間、たっぷり甘えさせてあげるからね。もうボクなしでは生きていけないようにしてあげるから。身も心もね」
天使のような美少年の外見には不釣り合いな妖しい笑みを、ディオンは浮かべる。
も、もしかしてディオンって、天使の皮を被った悪魔!?
よく分からないが、ディオンを選んだら、抜けられない沼にハマりそうな気がする……。本能が危険だと言っている気がした。
「あーあ、もうお終いか」
ディオンはそう言うと、お行儀よくお辞儀をした後に、私の手をとる。スチュワートと同じく、またも手の甲にキスをするのかと思ったら。手の甲をペロリと舐めた。
驚いた。
何がって、その舐め方がなんて表現すればいいのだろう。
官能的……?
とにかくゾクッとした。
同時に、ディオンを絶対に選んではいけないと感じている。
聖なる力も目覚めない上に、聖女失格、闇落ちする気がした。
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次回は夜更新です。20時前後で公開します~
午後の睡魔に打ち勝つ方法→コーヒーを買いに行く。
動けばなんとか目が覚めます!


















































