白髪の聖女
またもや短編です。
「ついにこの日が来たのね……」
私アレーラはフードを深く被りつつ久しぶりの王都を歩いていた。
今日はクラビア王国の祝賀祭で年に一度聖女が国民の前に現れ祈りを捧げる。
聖女の姿を見ようと国の至る所から人が集まりお祭り騒ぎである。
会場となっている城の広場には祭壇が作られている。
(1年前は私があの前で祈りを捧げていたのね……)
感慨深げに私は祭壇を見ていた。
何を隠そう私が当代の聖女なのだ。
しかし1年前に私は聖女の資格を剥奪され教会から追い出された。
何故追い出されなければいけなかったのか、それは私の髪に原因があった。
私の髪は聖女になる前は長髪で金色だった。
しかし、現在私の髪の毛は真っ白なのである。
因みに私はまだ18歳だ。
10代で白髪って普通の人はわからないだろう、私だって信じられなかった。
こうなった原因はただ一つ、聖女に選ばれてしまったからだ。
私が聖女になったのは15歳の時、それまでは私は公爵令嬢だった。
聖女になった理由は私の右手に聖紋が現れたからだ。
私はその日から教会で聖女としての職務に当たった。
聖女の仕事は祈りを捧げる事がメインだけどそれだけじゃなく慰問に行ったり王族の命により魔物を鎮めたりとか忙しかった。
それでも聖女として国の為に精一杯頑張ってきたつもりだ。
勿論祝賀祭にも出て祈りを捧げた。
国民達が私を見て歓声を上げて気持ち良かった。
しかし、体に変化が起こり始めた。
だんだんと疲れが溜まってくるようになり体が重くなってきた。
体重は変化してないし病気もしてない。
疲れているのか、と思い睡眠をとっても体の重さは変わらず。
そして、外見にも変化が起こった。
白髪が増えてきたのだ。
金髪だった髪が徐々にだが真っ白になっていくのは恐怖だったし混乱した。
これは間違いなく何か起こっている、私は空いた時間を使って聖女について調べた。
いろんな文献を読み漁った結果、私はある事実を突き止めた。
聖女は神に対しての生贄だったのだ。
祈りを捧げると同時に私の中にある『聖力』を吸い取っていたのだ。
この事実に気づいた時、私はショックだった。
このまま私は力を吸い取られて死んでいくのか、と思うと絶望しかなかった。
が、一年前突然私は聖女をクビになった。
新たな聖女が生まれた、というのだ。
この時は私の髪の毛は完全に白髪になっていて雰囲気もどんよりとしていた。
教会としては見た目重視で私を切り捨てる事にしたんだと思う。
まぁ理由がどうであれ聖女から解放されるのだから、私は喜んで教会から出て行った。
これで元の公爵令嬢に戻れる、と思ったが聖女になった時点で俗世とは縁を切った為に公爵家からも抹消されていた。
つまり、私はただの平民になってしまった。
頼れるところもなく途方に暮れてしまった私はとりあえず王国内を旅する事にした。
この1年間、私は国内を周りトラブルに巻き込まれ解決していった。
この見た目なので最初は引かれたが徐々にだが距離を縮めていった。
おかげで教会に籠もっていた頃よりも充実していた。
体調も祈りを捧げなくなってからは回復していったが白髪は治らなかった。
そして久しぶりに王都にやってきた。
やっぱり後任の聖女の事も気になるしね。
なんか後任の聖女、リアーナというらしいんだけど教会が何故か私以上にアピールしまくっている。
しかもリアーナ嬢、王太子の婚約者らしい。
おい、俗世から縁を切るんじゃないのか、私の時と対応が違うじゃねぇか。
しかも婚約って私には無かったぞ。
つまり箔をつけるために教会と国が共謀したのだ。
私の中では教会も国も信頼度は0だ。
私はこの儀式を見た後に国をでるつもりだ。
王都に来たのはケジメをつけるためでもある。
そして鐘がなり儀式が始まった。
しずしずと聖女の衣装を身に纏ったリアーナ嬢が現れた。
おぉ~、という会場の声が聞こえた。
(そっか、ベールで顔が隠れているし表情が見えないから私と代わっても国民にはわからないんだ)
そして祭壇の前にやってきた聖女は手を組み祈りを捧げるポーズをした。
『この者は聖女にあらず』
どこからか低い声が聞こえた、と同時に祭壇目掛けて一瞬だけ光が放たれた。
「ぎゃあああぁぁぁぁっっっっ!!!!」
リアーナ嬢は悲鳴をあげたがその姿は一瞬にして変貌した。
若く美しかったその姿はあっという間に骨と皮だけになってしまいミイラ状態になって倒れそのまま息絶えてしまった。
会場は一気に阿鼻叫喚となった。
関係者達は悲鳴をあげ王太子は泣き叫び国民達は我先にと逃げ出した。
(まぁ、こうなることはわかっていたけどね)
多分リアーナ嬢は聖力が足りなかったんだ、と思う。
だから聖力だけでなく生命エネルギーも全て持っていかれたのだ、と思う。
この先、この国がどうなるかはわからない。
あの声は神の声だろうし怒りを買ってしまったかもしれないが私には関係無い。
まぁパニックになっている姿を見てスーッとしたけどね。