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四代目異世界ハーレム主人公クニツ・ライナ  作者: さとー
ダイアモンドクラブ編
12/49

六代目異世界ハーレムヒロイン クラミー・ヴォルフガング メイクボックスを買う ②

 やってしまった。

 命の恩人を、人生を救ってくれた人を、傷つけてしまった。

 そう後悔する一方で、どうしてあれくらいで傷つくのかと、落胆する気持ちもある。

 私の知るライナ殿は――そもそもあんな状況には陥らないということはおいておき――あの程度の言葉で傷つく人間ではなかった。そもそも傷つく心がなかったようにすら思える、なんだか感情のない魔動人形のような人間だったはずだ。

 あれは戦時という特殊な環境下に置かれていたからなのだろうか? そう考えると、腑に落ちる点もある。クッスレアに腰を落ち着けて、比較的穏やかな生活を送り始めてからのライナ殿は、徐々に人間らしい感情を取り戻しているようにも感じられた。二年ほど前から団員との交流を避けるようになったのは、人間らしい感情と共に思春期がやってきた――つまり、女だらけのこの環境に戸惑っているのだと、そう解釈していた。筋トレや剣術の稽古に打ち込み始めたのも、有り余るエネルギーをを発散させていたに違いないのだ。

 そう、全ては理解できていた。

 なのに今のライナ殿はなんだ? あれほど鍛えていたはずの肉体は出会った当初のように細くなり、私が惚れ込んだ天才性など、見る影もない。昔から世間知らずなところはあったが、最低限の知識さえ与えれば自分で組み立てて全てを理解してくれる人だった。それが今は、一から十まで説明してもまだ足りない。わかりやすいようかみ砕いて説明しなければ理解してくれない。全ての会話に疑問符が混じるのだ。そんなもの、面倒くさすぎて放り出したくもなる。

 分かっている。全ては呪いのせいだ。体力も、記憶も、経験も、知識も、思考力も、呪いに奪われてしまったのだろう。そうでないと説明がつかない。ライナ殿はライナ殿であるという事実は変わりようがないのだから。

 そう頭では分かっていたはずなのに、誕生日を祝ってもらえなかったくらいであんなふうになってしまったということは、まだ私は未練がましくもライナ殿に恋をしていたのだろう。大切だからちょっとの傷が気になるし、大きく膨らんでいるから些細なことで破裂する。恋心とは、どうにも扱いが難しい。しかもそれを扱うのは私ではなく相手なのだから、なおさらたちが悪い。かつてのライナ殿が、どれほど上手に私の恋心を扱ってくれていたのか、今ようやく理解ができた。

 さて、ここまで考えれば、結論は簡単だ。この恋心は、ひとまずしまっておこう。今のライナ殿には、到底この恋心を委ねてはおけない。このままではボロボロになってしまう。

 これから私にとってのライナ殿は、恋する相手ではなく、ただの恩人だ。私はライナ殿の助けになる義務がある。だったらあのとき自決していた、と言いたくなるギリギリの所まで、ライナ殿の求めに応じる義務が。

 疑問があれば分かるまで教えてあげよう。お金がないのなら養ってあげよう。傷つけないよう、大切に扱ってあげよう。私にできることといえば、それくらいだろう。

 あとはまあ、これは心配いらないかもしれないが、性欲をぶつけられるような機会があれば、できる限り応じよう。目つきが悪くそばかすだらけで体つきも貧相なうえ、性格だって最悪。そんな私にぶつける性欲などないだろうが、覚悟だけはしておくにこしたことはない。趣味嗜好は人それぞれだし。それにライナ殿の回りには魅力的な女性ばかりだから、まずはハードルの低い私から手を出し経験値を稼ぐというのも、賢い選択だろうし。

 まあとにかく、心は決まったのだから、あとは実行に移すだけである。

 いつものビン底眼鏡をかけて、性格の悪さがそのまま現れた目つきを隠す。鏡の前で大きな口をかぱっと開けて、脳天気に笑う。まずは傷つけたことを謝って、そのあとは見下しているのがバレないように、脳天気なバカを演じよう。

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