表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

超短編集(怖)

親ガチャ失敗

作者: M


 明日から春休み。

 俺達は公園で、同じスマホゲームをして遊んでいた。


「昨日ゲームで課金したいって言ったら、めっちゃ怒られた。」

「俺んちは、お小遣いの範囲ならオッケー。」

「いい親だなぁ。ボクは親ガチャ失敗だ。」


 俺は、親ガチャに成功したほうだと思う。

 両親はともに大企業の正社員。父は課長補佐に昇進したらしい。

 欲しいものは買ってくれるし、好きな料理が食べられる。不自由を感じたことは一度もない。

 両親は優しくて、少しくらい成績が落ちても怒られることもない。


 UR(ウルトラレア)とまではいかないが、SR(スーパーレア)親だと言える。


 友達の羨ましそうな顔を尻目に課金ガチャを引く。


「あぁー、ただの(レア)かよっ。」

「ざぁ〜んねん。」


 友達の言い方にちょっとイラッとするが、どうせ嫉妬だ。

 もう一回課金ガチャを引く。


「よっしゃーUR(ウルトラレア)!」

「良いなぁ。」


 俺は友達の百倍強い。

 …ゲームだけは。

 実は勉強でも運動でも友達に勝てない。


「さっきの(レア)キャラどうすんの?育てるの?」

「育てたりしないよ。今引いた強キャラの経験値にする。」

「ボクにくれよ〜。」

「あげないし。」


 二人で笑った。

 この「くれよ〜」のくだりは二人のお約束だ。


「ちくしょー。ボクの親ガチャ、もう一回引けないかなぁ!」


 友達が叫ぶ。


「リセマラ (※1)しかないんじゃない?」

「それって、良い親に当たるまで死にまくれってことか?」

「んー、そうなるな。」


 また二人で笑う。

 バカみたいな話をして時間が過ぎていく。


***


 夜。子供はもう寝てしまった。


「うちの子は能力低いなぁ。」


 子供が貰ってきた成績表を見て、父親は溜め息を吐く。


「子ガチャに失敗したよね。」


 母親も残念そうな顔をする。


「育てるのにかなり課金したんだがな。」

「いろいろ買ってあげたのにね。」


 父親は母親を抱き寄せる。 


「まだガチャは引けるだろ。」

「ん…そうね。」

「次はUR(ウルトラレア)が生まれるさ。」

「でも、あの子はどうするの?誰かにあげる訳にもいかないでしょ。」


 母親の問いに父親は澄ました顔で答える。


「もう育てないよ。次の子の反面教師にすれば、いい経験値になってくれる。」


※1【リセマラ】

 リセットマラソン(Reset Marathon)の略

 良いキャラやアイテムが出るまで、ゲームアプリの初期化を繰り返すこと。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ