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馬村鹿之助の大学受験  作者: 佐藤 ココ
4度目の正直
27/55

全力で、

 一歩前に出た新藤と金木がこぶしを合わせる。馬村は拍手していた。なんでだ。青組はその様子をみて闘志を燃やしていた。この日のために、お玉リレーも、棒倒しも、騎馬戦も、大繩とびも、頑張ってきたのだ。


 一年生のリーダーであった新藤と金木の様子に、熱くならないわけがない。


 新藤は、

(勝ったらみんなでお好み焼き勝ったらお好み焼き勝ったらお好み焼き……)


 金木は、

(少女漫画で体育祭はボーナスステージ!ずっと俺のターン!!大丈夫俺はかっこいい!!!)


 馬村は、

(大繩とびのリズムは1、2、さーん、1、2,さーん……大丈夫ミスんない大丈夫大丈夫)


 と、それぞれの思いを胸に、体育祭は進む。


 100メートル走に出た金木と新藤は何の面白みもなく1位をとり、部活動対抗リレーでは女子の部でバレー部が1位をとった。新藤は3人抜きの大活躍である。部活動対抗リレーの選手ではない金木は、その間馬村の大繩とびの練習に付き合っていた。


「ゴーーーーーーーール!!!!!ゴールテープを切ったのは、物理部!陸上部に粘り勝ちです!!」


 部活動対抗リレー男子の部には目もくれず、金木と新藤はデジタルカメラを首から下げ、今か今かと招集場所となっている用具テントと黄組テントの間に目を凝らしていた。


「プログラム4番 大繩とびです、選手が入場します」


 入場曲は、暴れん坊将軍、殺陣のテーマである。両手両足を同時にだして、馬村は集団にまぎれて入場した。


「来た!」


 金木は、馬村の様子を見て、「今だ!」とシャッターを切った。その横で負けじと新藤もシャッターを切る。修馬たちはあきれた表情でそれを見ていたが、あまりの馬村の青ざめようにそれどころではないと、真剣に声援を送った。それは、様々な名前の飛び交う中で一際大きく響いた。


「「「馬村くーーーーん!!がんばれー!!!」」」


 おずおずと弱弱しいサムズアップ。修馬たちは顔を覆った。もちろん金木は激写済みである。馬村の強火ファンとしては、お宝ものであった。そうして何事もなかったかのように金木は馬村に手を振る。修馬たちはそれを横目で見た。


(八面六臂の活躍を台無しにする残念っぷり……!)

(やつは少女漫画から何を学んだんだ……)

(他と違う行動をとってるやつがモテるとか?)

(ふっ、同級生の強火ファンとか、おもしれー男……ってなるかぁ!)

(幸いなことは新藤がその様子に同士よ……ってなってることね)

(不憫だな金木)


 散々なことを思われていた金木であった。だが、当の本人は周りの反応など気にもせず、ウサギのように震える馬村を目に焼き付けようとしていた。なぜなら馬村がこのように何かを恐れることなどレア中のレア。できないことはできないと認め、できることをコツコツと積み上げるタイプの馬村は、できないことを恥ずかしいとは考えない。今馬村が恐れているのは迷惑をかけることである。正直、「馬村君なら仕方ない!」という雰囲気があるにはある。それに甘んじる馬村ではないだけだ。


 大繩とびの練習は過酷だった。


『はい、はい、はい、のリズムだ!声出せ!!』

『はい!』

『声が小さーい!』

『はい!』


 馬村は真剣だった。スポ魂漫画もかくやという熱さである。


『馬村ー!!真剣にや……真剣だな……よし、このまま頑張るぞ!』

『はい!!』


 それでも、縄は飛べない。


『よし!飛び方を変えよう!1、2,さーんだ!1で右に動き、2で左に動き3でジャンプだ!』

『はい!』

 

 必死に、全力で飛ぶが、それでも縄に引っかかる。


『いいか、馬村!1、2、さーんで飛ぶんだ』

『はい!』

『大丈夫、みんな、お前が頑張ってるって知ってるぞ、なぁ!』

『『はい!!』』


 何度も、何度も繰り返す。

 そして、ついに。縄は回る。


『飛べた!飛べましたよ!』

『『まーむらぁああああああああ!!!!』』

『頑張ったねぇ!』

『いえ、皆さんがここまで付き合ってくれたおかげです』

『うれしいこといってくれるじゃんか、この後輩は~!』


 全員が一斉に馬村に駆け寄る。これなら1位も目指せるぞ、と色めき立った。※これは体育祭の一競技です。

 そんなこんなで、見事、馬村は青組の大繩競技出場者の心をゲットしたのだった。

 

(1、2,さーんだ!!!)


 決戦の時。早鐘を打ったように心臓がなる。

 ピ―――と言う笛の音が、勝負の始まりを告げた。






























「いやー、2位ってすごいじゃん!」


 修馬が馬村に抱き着こうと、駆け寄る。金木がすごい形相でそれを阻んだ。新藤もそれを後押しするものだから、東雲たちは爆笑だった。


「先輩たちがっ今までっ僕のためにっがんばっ頑張っで、ぐれだがら!!」

「ま、馬村くんーーー!」

「それは高総体の決勝で敗れた高校の新キャプテンのテンションなのよ」


 呆れた顔でそういうのはもちろん東雲だ。


「馬村くんすごいよ……ずっと応援してましたっ、握手してください……!!!!!」

「金木は他校のマネージャー枠を目指してんの!?」

「え、えと、ま、まぁ、平民風情が何を偉そうに話しかけてるのかしら?」

「新藤は無理して悪役令嬢しなくてよろし!」


 残念ながら、体育祭編は、まだまだ続く!!

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