3.義姉との出会いとサポート補正?
お読みいただき有難うございます…。
…おお、何だかすごい勢いですね。
とにかくゲーム内では私の扱いがぞんざいというか、設定が薄い。
まあ、モブサポートキャラに要らんだろという事だろうね。
……ゲーム中は大変過ぎて、サポートキャラの生まれがどうこう何て構える余地なかったから。実際要らんかったけど。
悪役令嬢の仲良くない妹ってポジションらしいってのは、サラッと聞いた…?って程度。
設定資料集でも半ページ取られてるかどうかしかなかったし、ホント薄かったなー。
今までの人生を振り返ると、没落貴族のお子様だった私は、子供の頃に養子に出されました。
流石に酷いか…もうちょっと振り返ってみるか。
4歳の私にしたらそんなに前のことでもないしね。
5年前、アレッキア・ユール……アレッキオ・ユールでもある彼女であり彼は、とある王国の王女と夫(今の私の義両親ね)の子供として生まれたんですな。
可愛く美しくしかも先祖返りの男女に成れるわ魔法チートだわの最高の素質。
そんな将来安泰な我が子に両親は歓喜し、娘として育てる事を決めたそうな。
でも…同時に、義姉は、諸刃の剣を抱えていたのだ。
流石に赤ん坊の頃は無かったらしいが、2歳くらいから魅了の能力が顕著になり、5歳を迎えるころには、日時を問わず老若男女に狙われることにまでなった。
……両親もそんな義姉を守るのに疲れていたらしい。
気持ちは分かるが、其処で諦めたら駄目だろ!!
お前らの子供だろ!?
そして色んな人間に襲われまくっていた義姉は心を閉ざしかけていたらしい。
それに関しては本当に気の毒極まりない。
で、没落かつ貧乏貴族の娘として生まれた私こと、アローディエンヌ。
何時から前世の記憶が有ったんだったかなー、忘れたわ。
神童とか言われた覚えは無いから、ここ1~2年の間かもしれない。
で、4歳になったその日、珍しい事にどこかのガーデンパーティに連れて行かれた。
誕生日を特に祝われもせず、他人んちで過ごしたわけだ。
三十路以下略には誕生日は禁句だから、文句は無かった。
だが折角の機会なので、家では絶対にお目にかかれないお菓子を適当に貪っていたら、
後ろの方の木の葉擦れの音が気になった。
観察してみたら、茂みが不自然にガサガサ動いている。
私は嫌な予感がして、近づいた。
そしたら……貴族らしい年嵩の子供に口を塞がれて、
服を乱されて、ボロボロ泣いているアレッキアと目が合ったと言う訳だ。
勿論私は只のリアル4歳児じゃない。
このおぞましい状況を即座に判断し、大声を出した。
幾つであろうと性犯罪者は滅すべし。
「だれかー!!女の子が男の子にここの茂みで襲われてるー!!」
……叫び声がちょっと4歳児っぽく無かったのは反省している。
だって私、見た目は幼女、中身は三十路以下略……だし。
大声を上げただけだけど、結果的に私が助けたことになった。
まあ、助けたと言うか……大人を呼ぼうと大声を上げただけなんだけどね。
だって私は前世はそんなに強かったわけでもなさそうだし。
今は子供の没落貴族の娘だから物理的には無理。
チート能力?無い無い。
義姉がゲーム中でバンバン放火……いや、火を使っていたから、多分やる人がやれば魔法で人を害せるってのは分かるけど……。
私に出来るのは桶に溜めた水をちょっとの間だけ渦巻かせる魔法だけだ。……何に使うんだろうね、本気で謎。
で、当然ぎゃんぎゃん泣いているアレッキアを慰めてやろうと、ハンカチを貸したら凄い目で見られて……その態度は何だとムカッと来たんだったかな。
若干あの困らせられた悪役令嬢に、色味が似てたからムカついたのもある。
まさか本人だとはな。
「助けてあげたのに何よその態度は」
ぺち、とおでこを叩いてやったら顔を真っ赤にされて…抱き着かれた。
それはもうぎゅうぎゅう張り付かれてワンワン泣かれた。
鼓膜が破れるかと思った。迷惑だから離れろと言っても離れない。
大人が来ても、アレッキアは泣き続けて人の服で涙と鼻水を拭いたわけだ……。
おお、当時の私の一張羅…アイツ、いい奴だったよ。
それからあれよあれよという間に私はアレッキアの家に養子に出された。
実の両親はどうしたのだろう。
お金で解決されたのか?手紙すら寄越さないけど。
そしていきなりモブ子供の私がお金持ちの養子に出された理由だが……私は何と『魅了無効』持ちらしい。
それも強力に強力が過ぎて、アレッキアの魅了は全く通じなかった。
勿論そんな設定は知らない。
私はかなりビックリした。
『魅了無効』持ちの子供(つまり私)は当時物凄く脚光を浴びた。
そこらの貧乏貴族の子供から一躍有名人の仲間入りだ。
歴史に残る大発見とまで言われた。
まあ半年ほど前だけど。
……いや、大袈裟な。
きっと世界は広いから他にも居るよ。
きっとそうに違いない……と凄く思ったが、4歳児が言う事では無いので、黙っておいた。
この頃若干途切れたはしたが、当初は滅んだはずの生物発見みたいな扱いを受けていた。
あれは疲れた。
私は現代に蘇った恐竜か何かか。いや、そんなカッコいいものじゃないな。ここで通じないから言わなかったけど。
そして……血とか取られて色々調べられたけど、義姉の老若男女を虜にする魅了が私に全く効かなかったのは、全く解明出来てないらしい。
採血され損じゃないか。
中身三十路以下略でも注射は大嫌いだと言うのに。
しかし私にもよく分からない。
読み込んだ設定資料集にそんな情報無かったからだ。
義姉に声を掛けられようが触られようが何されようが、私は特になんとも思わない。
まあ、顔は可愛いと思うけど。
他の人のようにぼーっと顔が赤くなったり、動悸もしない。
勿論欲望のままに襲ってみたいとか思わない。
だって未来のバッドエンドルートの義兄なら多分キャーキャー言えるけど、目の前の義兄……(今は義姉)は5歳の子供。
私(中身が三十路以下略)には庇護対象でしかない。
庇護対象に欲望をぶつけたいとか救いがたいド変態じゃないか。
私は妄想を脳内で抑えられる節度ある変態だ。
そんな野獣を解き放てる節操無しの変態ではない。
普通はそうよね?
でもそれって義姉の魅了の前では普通じゃないそうだ……。
普通は何か対策しないと義姉の魅了に耐えられないんだって。
……世界が敵で溢れているのことに関しては義兄……義姉が気の毒でならない。
それにしても何故私には魅了が効かないのかね?
モブ補正って奴かな?
いや、モブなら群れて義姉に惚れてるポジションか。
私はサポートキャラ補正だと考えていた。
主人公のサポートキャラだから悪役令嬢には加担しないもんな。
おまけに確か私は表に出ないキャラでショボい魔法しか使えない。多分将来人脈もない。
だから、仮に私が義姉に魅了されて操られても何の役にも立たない。
主人公を蹴落とすのに利用する価値もない。障害になりようがない。
チートなり、引きこもりサポートキャラ!完璧だ!
我、サポートキャラとしてチート也!!ハッハー!!
…実生活に役に立つ能力ではないけどな。
取り合えず自分ではそう納得して、今に至る。
この結論は他の人には頭を疑われること間違いなしなので秘密だ。
4歳児だし。
アレッキアの両親も最初は情緒不安定な娘……息子?のお話相手……?くらいのつもりで考えていたらしい。
だが、実際は不思議!何時の間にか呼んだら、何とかしてくれる便利屋にされていましたとさ!
幾ら何でもしっかりしてるとは言え……4歳の子供におかしくないか?
親なんだからもっと矢面に立てよ、アレッキアを守れよ。
だが、私と言う便利な子守が来てから、義両親はお役御免だ~とばかりに義姉を放置した。
因みに私なんかもっと放置。この頃見かけてすらいない。
まあ私はいいよ。4歳とは言え三十路以下略だから。
だが、義姉は実子だ!たまには抱き締めてあやすくらいしてやれや!!
私は義姉にすっかり慣れて、警報が鳴ったら即座に駆けつけるサービス業してると錯覚するほどだと言うのに。
だから更に義姉は私に張り付くんだよ!
欲しい情報のみくれて、
影は薄く、邪魔をしない、裏切らない、割り込まない…。
これぞ理想のサポートキャラ…ですかね?