モブに三択は与えられないんだよね!!
お読み頂き有難う御座います。ブクマ、ご評価、拍手誠に有難う御座います。
ニックを巻き込んだ、いえニックとブライトニアのデート、始まります。
……。
…………。
いやね、ホント……。何で朝起きてお部屋の扉を開けたらプレゼントを貰うのかな。
この、箱……。大きさにして、ティッシュの箱位の箱、マジどうしたら宜しいので候。
「ようニック、漸く観念したらしいな」
「覚悟は固まったようで宜しい事です。此れで幸せな獣人が増えましたね、素晴らしい」
朝から獣人として獣人の為の幸せを御節介しに来る回し者……いや、獣人諮問委員会のおふたりに絡まれて、表情筋がひっくひく動いてます、ニックです。
今日は素敵な雪の朝を迎えています。北だとがっさりめに降るんだね……。
いやあ、……豪雪中止になんないかなあ。
勿論疲れてぐっすり寝たから全くノープランだよ。と言うか浮かんでこないよ。何度も言うけど非モテアラサーだからね!!コレ覆らないテストに出るよ!!
そうそう昨日はね。プンプン怒ったミニアさんが王宮にね、送ってくれてさあ。
「オルガニック、お部屋は何処?」
「はいはいはーい、ウサちゃんはこっちねー」
「あらあら、もう遅いんだから静かにね」
「有難う有難うマデルさんルーニアさん!!そう、節度ある距離が大事だよね!!」
「マデル、ルーニア!!あたくしオルガニックの婚約者っ!!放しなさい!!」
おお、なすすべもなくズルズル引き摺られて行くブライトニアが。
……つおい。拝みたくなったよ。
ボクもあんな強さが欲しいようなモブでありたいような複雑な厨二を心に宿す男子ゴコロな訳さ。
「ありがたやありがたや。最早、四騎士でなくて友愛慈愛の四女神と崇め奉ってもいいね」
「止めてくれオルガニック殿。背筋が寒くなった」
「どんな感性してるんです?」
ヒドス。
えーと、その後ルディ様とレルミッドさんがミニアさんに宮殿の方に連れてかれ……お出でになってて、サジュ君とサロ卿とご飯を食べたんだった。
サジュ君は死ぬ程疲れていたみたいだよ。よっぽどマデルさんの宿題がオーバーキルだったみたいだね。
「……オレ、あの魔窟で正気を保ってらっしゃるサロ卿マジ尊敬します」
「……何時でも帰って来て構わんぞ」
……サロ卿もお疲れみたいだね。
昨日を回想していたら、ギー卿が何かをボクの手に置いた。
うん、ナニコレ。宿屋の割引券?
「今日は帰って来なくてもいいぞ」
「……いや、未成年とお宿に泊まるって不自然ですからね!?必要有りませんから!!ボクは暗くなる前にお家に帰って早寝派ですのでええええ!!」
「休憩と言う手段が有るでは有りませんか」
「無い無い無いです!!」
此処にもご休憩と言う概念が!!いやどうでもいいよ!!そんな情報知りたいけど今要らないよ!!
どっかで聞かれてんじゃないだろうね!?ボクが連れ込まれたらどうしてくれるの!?
即、ソーレミタイナに連行されて監禁コースじゃないかああああ!!
「と言うかこの箱、何ですのん!!」
「朝っぱらから効能を語るのもなんですが、勝率8割を誇るひに……」
「言うたらあかんで候ったら!!いや、大体分かってるけど脳が拒否してるんだよ!!て言うか勝率って何の!?普通、明るい家族計画的な奴なら防ぐ方だよね!?」
「ハッハ、馬鹿だなニック。獣人は産めよ増やせよでナンボだろ。防いでどーする」
そんなん勝率言わないよおおお!!寧ろこの件に関しては失敗じゃないのおおおお!!
って何で爽やかな朝からこんな赤裸々トークを繰り出してるの!?ご婦人が通りかかられたらどうするのよおおお!!流石に朝から後ろ指刺されたくないで候!!
「そう言うのは酒場で男子トークやろうよおおおお!!」
「オルガニック!!オルガニック!!」
「ぐおおおおおお!?」
ホラアアア!!こういう駄目なタイミングの時にやってくるうううう!!
「オルガニックお待たせ。あら?黒猫と……何?」
「お初お目に掛かります蝙蝠ウサギ姫。私めはオルガニック殿とお仕事を共にさせて頂いておりますギー・サレトスと申します」
「……ああ、宿屋のヤドカリね」
「若干ヤドカリとは違う種類ですが、そうです」
ブライトニアがギー卿とお話をしている隙を狙って、ボクは折角鍵を掛けたお部屋をまた開けて、箱を叩き込んだよ。
うん、ボクは何も見ていない!!何も知らない!!
「あっ、オルガニックそれ何なの?」
「ハアイ!何でも無い只の箱だよ!!お早うブライトニア!!」
「ホラニック、お洒落して可愛い子が来たんだから褒めてやれよ」
「あたくしを褒めてくれるのオルガニック!!」
いや、褒めるってそんな能動的にグイグイ望むもんなの?
そりゃ、その青空みたいな色のヨーロッパの民族風な衣装、とっても可愛いけど。
でもでもえ、女の子の服褒めるってどーすんの?その襟可愛いねとか?ヒラヒラ似合ってるねとか?先巻いたツインテールがイイネ!親指グッ!とか?
………。
こ、こっ恥ずかしくねっすか!?
世の中の恋人持ちはどうやって褒めてんの!?心にチャラ男を貼り付けるの!?
出来ねえ……せめて三択にして欲しいんだけど!!
「ちゃ、ちゃんと服着てて偉いね……」
……我ながら何ちゅう褒め方だよ。
もう情けなさ過ぎてレルミッドさんに強めにボケって罵って頂きたいいいいい!!
三択なら間違いなくドデーン!!ってな低い音で好感度下がるタイプの選択肢じゃん!!いや、喉から出たの一択だったけど!!
「そうでしょ!?あたくし、オルガニックの好みに寄せようと頑張ってよ!!」
「成程、ニック殿はツンデレ系統ですか」
「ツン……!?誰がですねん!?」
そんなハードなジャンルに転身した覚えマジナッシング!!
て言うかどうしてそれで喜ぶのかなブライトニア!!我ながら酷過ぎる褒め言葉だったと思うよ!!獣人ポジティブ訳分かんない!!
「所で何を持っていたのオルガニック」
「いやいやいやいやいや!!今のボク達には全く!此れっぽっちも必要無いものだよ!!気にしないで!!1光年くらい早いから!!」
「いちこうねんって耕作の年月か何かです?二毛作とかですかね?」
「そんな事はどうでもいいのよ黒猫!!」
「はぁいはいはいはぁい!!今日もドン暗い雲がどっしりのお空でおデート日和だね!!いっくぞー!!」
「オルガニックったら大胆!!あたくし、生きていて良かった!!」
ブライトニアがボクに引き摺られていると言うのに付いてくる。
あ、勿論小脇に抱えて、とかお姫様抱っこは出来ないからね。一般男子、そんな腕力無いよ。
……にこやかに手を振らないで欲しいな、エンリさんにギー卿ったら。
あの箱は帰ったら即、処分しよう。ボク達にはまだ早い。凄く早い。考えたくない気持ちで一杯!
……で、お城から出た訳ですがノープラン。ノープランがボクに伸し掛かる訳だ。
当たり前だね、何にも思い浮かばないんだから。
え、どーしますのん?行き先に三択……。
虚空を睨んでみるも出ない。当たり前だね。モブにそんなシステムは与えられていないんだもんねん!悲しいね!
「……勢い余って出て来たけど、どうしよう。ブライトニア、」
「ああ、あたくしの名前を呼ぶオルガニックが積極的で素敵……」
いや、そんなウットリした目で見られるようなルックスでも無いよ。
ハハッ、思わず目が死んじゃうから止めて欲しいなー。
この子はボクに関してはホントポンコツになるよねー……。ボクはガチで先行きが心配だよ。
彼女をなんかいい感じの方向へ教え導くスキルも無いと言うのにねーん。
いやホント、今からでも何とか軌道修正してくれるカッコいいイケメンが現れないかなあ。
……いや、来ないね。分かってるよ。
駆けつけるヒーローは、例えモブを助けてくれるとしても、爆発とかしてない現場には現れないって。
……爆発現場よりマシだよね、うん。……立ち向かうよ、ボク頑張る頑張れボク!!
「……どっか行きたい所、有るかな」
最早、目の前のブライトニアとコミュニケーションを取るしかあるまいって感じだよね……。
特にコミュ障じゃないけどさあ。この子と喋るのって……かなりの綱渡りな気がして来たよ。
アロンたんはよく感じのいい答えを返しているよね。流石女神だよ。アロンたんの女神像とか建てたらいいんじゃないかな。もしかしたらとっくにおにいたまが建造してそうだけどね……。いや、偶像崇拝禁止されてるかな。そっちも濃厚だよね。
っていかんいかん。ブライトニアに向き合わなきゃ……。
「あたくしの行きたい所?」
「普通、女の子の希望を聞くものらしいしね……」
因みにボクにこの情報をくださったのはルディ様ね。
昨日の面子で女扱いに慣れてらっしゃる唯一の御方と言うかさ。ルディ様以外のティーンエイジャーおふたりはコメントしてくんなかったよ。すみません無茶振りして。
サロ卿も似たり寄ったりな感じだったな……。
ジルさんも慣れてそうだけどデートはしたことないらしいよ。まあ、相手がユディトお姫様だもんね……。
ボク、お相手がお姫様ならお忍びデートが必須イベントだと思っていたよ。キャッキャウフフのちょいハプニング有りーののラブイチャな少女漫画な感じの……。
……って、よく考えればブライトニアもお姫様だよね。コレもお忍びデートになるのか。
相手役がボクと言う頗る残念なモブなんだけど。いや、今からでもお姫様のお付き添い(恋愛無し)で良いんだけど……いや、最早何も言うまい。
……何だろうね、この胸に去来するガッカリ感は。
どう考えてもキャスト配役が間違っておるでは無いか。何と言う事じゃ人生儘ならないな……。
「そう、じゃあ連れ込み宿」
「ブルータスお前もかーーーーーい!!」
獣人はネタ合わせでもしてる訳!?
道行く人々が通報しそうな単語は止めてクレメーーーンスッ!!
「ブルータスって誰!?オルガニック、ソイツが気になるの?殺したいわ……」
「いや突っ込むべきはそっちじゃなくてね!!何かいい感じの事を言っていた偉人の話を読んだだけだから!!て言うか、そんな如何わしい単語を往来で言わないで!!」
「あたくしとオルガニックは婚約者でしょう。多少の如何わしい単語を交わしてもいいと思うの」
「ボクはセクハラトーキングを多少でも君と交わしたくないかな!!
いや、ああ聞き方が悪かった!?ゴメンね!!ブライトニアご趣味は!?」
「趣味……あたくしの、趣味?」
ブライトニアの睫毛長いな。バサバサしてるね。
こうきょとん、としてるとあどけないんだけどなあ……。さっきの発言を忘れそうな顔だよホント。いや、起こった事は消えないけどね。
「……あたくし、趣味って有るかしら」
「あ、そーなの無いの?」
「最近、本は読んでいたけど……あれは趣味かしら」
「え、本?どんな本?」
良かった、フツーな感じの会話の糸口が出て来たよ。
この糸口、触ったら感電するとかそう言うオチじゃ有りませんように……。
「どうやってさりげなく雄、いえ殿方をその気に持っていくか知りたくて」
「……恋愛本かな?」
おおっと、いきなり先行き曇天だぞお!!
頼むからかーわいい感じのきゃぴっとしたご本で有って!!
「だけど本には屑野郎と被虐趣味の女ばかりで、全く参考にならなかったわ。オルガニックみたいな素敵な殿方は全くいないの。でも本番は参考になったかしら。あたくし丈夫だからオルガニックになら多少冷たく虐げられても」
「どうえわああああああ!!する訳無いでしょ!!どんな本読んだのおおおお!!」
て言うか何その本!!
ほ、ほ……誰だあああああ!!そんな本をこの子に見せたのはああああ!!!アロンたんの目を盗んで何やってんのこの子はああああ!!
「……ブライトニア」
「何かしらオルガニック。疲れたの?」
「……そうだね、開始30分と経っていないけどちょっと疲れちゃったな」
寧ろボクのライフはゼロよとコレッデモン王国の中心で叫びたいかな。
いや、喉ガッラガラだから叫ぶの無理だけどね。ハハハのど飴でも買ってくりゃ良かったよ。
「……確か、デートで疲れたら、店に入って甘いものを食べるのよね」
「……そうだね、因みにその情報は誰から?」
「レトナよ。横の犬が生意気で鬱陶しかったわね」
「……え、彼女とあんまり面識ないけど犬飼ってんの?いや、犬……レトナさんの番さんかな?」
確か黒いワンコが番さんなんだよね。サロ卿の番さんのおにーちゃんだったか。
「そうそれ、黒犬よ。生意気な犬だったわ。躾がなってないわね」
「……躾に関してはね……。難しいよね……」
躾……躾ねえ。
……今ボクがひしひしと感じているし人生の課題になってしまったなあ。
目の前のこの、元気すぎる蝙蝠ウサギをねえ。
「どうしたのオルガニック、レトナに同情してるの!?あたくしが目の前にいるのに!?」
「……いや、有る意味君の事で一杯だよ。……兎に角、何か飲もうか。人生は甘くないから今せめて糖分を摂取したいな……」
流石に甘いもののやけ食いはしないけどね……。横にしか伸びない年頃だし、胃腸も労わりたいし。
あ、オサレカフェみっけ。
今ならレインボーなパフェでも食べられそうだよ……。有るのかどうか不明だけどね。
「……クレープ」
「クレープ?」
「オルガニック、クレープが食べてみたいわ」
「え、クレープ?……クレープって大概屋台だけど、お近くには無いね」
「……そうなの?店で食べるものじゃ無いの?」
……忘れていたけどお姫様だったよ。いや、見た目は凄く間違いなくお姫様なんだけどね。
庶民服を着ていてもお姫様オーラが……意外とそんなに無いんだよね。
いや、悪役令嬢様オーラかな……そっちはビシバシするね。
「甘いものだって聞いたからオルガニックと食べたかったのに」
「そっか……。取り敢えずパフェでも食べない?」
流石に今から補給無しに屋台を捜し歩く旅人になりたくない……。
土地勘も其処迄発達してないしね……。結構来たばっかと変わらないレベルだよ。
「パフェ!?ひとつ頼んでひとつのスプーンで食べるのね!?」
「……か、偏ったバカップル情報知ってるんだね……。ひとつじゃなくてふたつのスプーンだけど。あ、別のものにする?別のものがイイカナー?」
「いいえいいえいいえ!!獲物は分かち合うのが番だもの!!是非ともやってみたいわ!初の給餌行為ね!あたくし、あの傘が生えてるテーブルが良いわ!!」
傘はテーブルに生えないよ!!
そ、それにきゅうじこうい……。食わせるなんて言ってねえで候。
……どうしよう、クレープ屋台を足を棒でも液体にでもなんでもいいから動かして探し倒せばよかった。
こうして、ボクは……オサレカフェのテラス席、白い日除けの傘が可愛く立てかけられた素敵なテーブルで……バカップル行為を強請られる羽目に陥ったのだった。
後、このクソ寒いのに何がパフェだよテラス席だよ馬鹿じゃねぇのボク!!煮え滾った油でも飲んでろ!!
「……オルガニック、手が震えているわ、緊張しているのね!?」
「いや、フッツーに凍えて寒いかな!!今からでも室内に戻らない!?」
……ホラ、道行く皆さんがこの寒い中バッカだなーって視線を寄越してる!!ボク達以外に誰もテラス席に居ない!!流石だよね!!ボクも地元民ならきっと同じ立ち位置だと思うな!
「ホラオルガニック、このパフェはアイスクリームとケーキが層になっているそうよ、大きいわね」
「……」
メニュー見てテンション高いねブライトニア。
冬に北国でアイスをお腹に放り込んだらどうなるかな?
……ひえっひえになるね。と言うか、アバウト南国に位置するところ生まれのボクは普通に死んでしまいます。
「……スミマセン店員さん。このお店で一番熱い飲み物をふたつくださァい!!」
「パフェは!?」
「パフェはお暑い時がいいと思うんだよ!!ふうふう言いながら熱い飲み物を飲んでる子は可愛いよね!!」
「……可愛いの!?じゃあ良いわ!!煮え滾らせて持ってらっしゃい店員!!」
「ええと、何をお持ちしましょう?」
「オルガニック、ミルクティーは!?ミルクティーよね!?ミルクティーがいいと思うの!!」
店員さんクールだな……。カップル慣れしているのかもしれないね。ボク達カップルじゃないけど、いやカップルだった……。
……へっ、心の拒否反応が中々消えないぜで候……。微妙にしつこいね、ボク。
と言うかブライトニア、ミルクティー好きなのかな。ボクと一緒だな……。
「……ミルクティーをおふたつお願いします」
「畏まりました」
「店員、煮え滾らせるのよ!」
「……いや、煮え滾らせる必要は無いよ……。先程は本当にすみませんでした普通でお願いします」
何だよ煮え滾ったミルクティーって、怖いよ。地獄かい。
そう、ボクもちょっとテンションが引き摺られていたよね。
ビークールビークール!!体感温度は普通に寒いけどね!!早く来て欲しいな!!
「……だけど、ふうふうって言いながら熱い飲み物を飲む……ってどうやるのかしら。大概の飲み物は普通に喉に流し込んでるからちんたら飲んだことが無いわ……」
……ブライトニアに猫舌と言う概念はないのかな。熱い飲み物を普通に喉に流し込むってどう言う作りの喉してるんだよ。
いや、獣人だから猫舌と言う決めつけは駄目なんだけどさ。
……確かに、獣人対処マニュアルは作成不可能なのかもしれないな……。
と言うかマジ寒いね。ホント、室内入りたいな……。
アローディエンヌは引き籠りの割に体が丈夫ですが、ニックは結構虚弱です。
ブライトニアは見ての通り丈夫ですが、義兄さまは小さい頃は結構熱を良く出してたタイプですね。
オチが見えますね……。
もうちょっとデート回、続きます。




