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サポートキャラに悪役令嬢の魅了は効かない  作者: 宇和マチカ
番外編

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20/212

番外編そのいち。悪役令嬢に疑問で質問・騎士編

話がひと段落したのでふざけた企画のような小話です。

こういうのやってみたかった!憧れてたんです!

因みに他の攻略対象は書くかどうかは未定です。

此処は王城。

冬の大火で燃えたが、流石戦火に耐えた王宮。

辛うじて機能出来る範囲内は焼け残っていた…。


「悪役令嬢に疑問でしっつもーん!!…て書かれてんな、何だこれ」

「……」


その一角、とある中庭。

そこに二人の貴公子が集められていた…。

一人は短く切られた青い髪に赤茶色の瞳のがっちりした体の爽やかな青年。

そしてもう一人は、ふわふわした赤い髪に薄青い瞳の耽美な見た目の青年だった。


王宮の中庭に置かれたテーブル。

そして置かれた謎の紙…。そして同じ学校に通っていた貴公子が二人。

両方とも実に人目を惹く容貌だ。

だが二人は大して仲良くもない。

一人は戸惑い、一人はイライラを隠さなかった…。


「……おい、アレッキオ卿。何か言えよ」

「何で俺が君なんかと顔付き合わせて、会話しないといけないの」


存分に不機嫌を隠そうともせず、嫌な顔を惜しまないアレッキオ。

のっけから微妙なムードが漂う。


「あの大火事を生き残った者同士仲良くしようぜ」

「人の命は儚いから、犠牲者が増えるかも知れないね」

「あぁー、疫病とか怖いよな」

「…嫌味が通じない。分からないように燃やしていいかな」


アレッキオの左手がチカチカ光り出す…。

尋常じゃない魔力の集まり方と速さを目の当たりにし、青い髪の青年は思わず椅子を引いて体をのけぞらせた。


「おお…機嫌悪すぎだな。えーと、スペシャルゲストを呼んでるんだが」

「あっそ」


アレッキオは微塵も興味を示さない…。

青い髪の青年が合図すると、回廊から一人の黄色掛かった灰色の頭に青い目の令嬢が出てくる。

アレッキオの手がチカチカ光っているのを見つけて、目を剥いた。


「ヒッ!!何をしてますの義兄さま!!」

「あー、アローディエンヌだあ!会いたかったよお」

「いや、朝見送りましたけど、何で私が連れてこられて呼ばれるんですか。

て言うかここって王城ですか!?」


わたわた怯えたりキョロキョロ見回す令嬢を前にした途端、アレッキオの殺意も魔力も綺麗にかき消えていた。

…変わり身の凄さに青い髪の青年は引いた。


「えーっと…すまないな、アレッキオの義理の妹殿。

えーと、アロー?アローディ嬢?」

「人の嫁を変な名前で呼ばないで。ユール夫人だから」

「は?」

「いえいえいえ!!騎士サジュさま!!

義兄さまの事はお気になさらず!!」

「えー、何でえ!?」

「何でえじゃありません!!いいから!!」


(何でこんなややこしい現場なのよ……て言うか攻略対象じゃん!騎士サジュさまだー!!いえー!!)


アローディエンヌは初めて見る『攻略対象』にテンションを上げていた。

彼女の魂に刻まれたミーハー心は消えていないようだ。


「アローディエンヌぅ?」


(あ、義兄さまの目が怖っ…。浸れもしねーのかよ…。しょうがないわ、早く始めよう)


彼女はミーハーだが空気は読めたので、自制した。

そしてアローディエンヌは4脚ある内の一つ…一つ空けて座った二人の青年の間に座る。

ややこしい事になるのは自明の理なので、緩衝材になる為だ。

義兄の隣のみに座っておけば良かったのかもしれないが、騎士サジュにミーハー心が生まれ、更にちょっと下心が生まれたのだった。


だが、座った瞬間、即座に義兄の方へ椅子ごと引き寄せられ、サジュとアローディエンヌの間には不自然な隙間が出来た。

……勿論雰囲気は更に微妙になったが、最早どちらも突っ込まなかった。

黙っていた方が穏やかになると察したからである。


「……えー、義兄さまに質問です」

「何でも聞いてえ」

「おお、凄い掌返しだ」


(狭いわ…何でこんなに空いてるのに引っ付くんだ)


ちょっとイラッとしながらも、アローディエンヌは司会進行を自ら行った。

幼児期に仕込まれた、義兄を何とか安定させる役は染みついているようだった…。


「義兄さまは義姉さまのとき、髪の毛伸びてませんか?

おかしくないですか?何でですか?…そう言えばそうですわね」

「アレッキア嬢の時は背中まで長いよな」

「えー、なにその質問。前に適当に伸ばしたのを切って付け毛にしてるだけだよ」

「何で切るんだ?アレッキオ卿の時には縛っときゃいいじゃないか」


サジュの提案をアレッキオは鼻で笑う。


「それ…君に教えて何かどうかなるの?」

「義兄さま」

「童話だと王子様は髪が短いよねえ?」

「…しつこいな、まだ引っ張るんですの?」

「後、単純に長いの嫌ーい。暑いし鬱陶しいから」


ぶんぶんとアレッキオは頭を振る。

炎のような赤い髪が首の動きに従ってフワフワ揺れている。


「アレッキオ卿の顔だと長いのも似合うと思うぞ。

ご婦人方にウケるんじゃないか?義妹殿の感想はどうだ?」

「女性ウケ…はまあそうかもしれませんわね」


(アレッキオ長髪バージョンも二次で量産されてたからなー)


アローディエンヌは前世の知識をぼやっと思い出しながら答えた。

最早全然何の役にも立たない知識では有ったが。


「アローディエンヌが好きなら伸ばすよ?」

「義兄さまの髪は義兄さまのものなので、

どうぞお好みの長さでお過ごしください」

「えへへえ、僕の好みを尊重してくれるアローディエンヌ大好きー」

「止めてください、人前です」


アローディエンヌはアレッキアの手を振り払った。彼女の腰に伸びていたので流石に抵抗したようだ。


「仲いいなー」

「ええと、二つ目の質問…」

「アローディエンヌ、テキパキしててカッコ可愛い」

「アレッキオ卿、シスコンだったんだな」

「俺はアローディエンヌしか好きじゃない」

「お二人共!!」

「すみません」

「ごめんねえ」


(浮かれてたけど、攻略対象って揃うとややこしいんだな…)


アローディエンヌは浮かれた気分を半分くらい棄てた。


「三つ目です。義姉さまの時と義兄さまの時と、アローディエンヌの前。

何で喋り方変えてるんですか?」

「あ、ホントだな」

「演技ですの?」

「別に演技じゃないよー」

「じゃあ素か?」

「そんな訳ないだろ」

「…じゃあ何ですか」


話が進まなくて、アローディエンヌは若干イラッとしていた。


「えっとねえ、分かりやすいから?」

「ええ…分かりやすいかしら…」


アローディエンヌは思わずサジュを見たが、彼も納得している顔では無かった。


「じゃあ例えばねー、アローディエンヌ、私貴女を心の底から愛しているの。二度と離さないわ」

「…何だか変ですわね」


アレッキオの姿でアレッキアの台詞。

どちらも本人だが、何だか違和感がある。


「でしょ?今のは意識して変えてみたよー」


違いを分かってくれ、とばかりにアレッキオはドヤ顔をアローディエンヌに向けた。


「台詞が怖いんだけどな?」

「君の感想は聞いてない。アローディエンヌはどうー?」

「いや別に何とも」

「がーん。酷いよ!」

「それで結局何で使い分けてるんです?」

「え?なんとなく」


これだけ引っ張って特に理由は無かったらしい。

あまりにもあんまりなので、アローディエンヌは義兄を睨んだ。


「さっきからオチが酷いんですけど!!」

「だってえ、別に僕意識して偽ってる訳じゃないもん。直感で変わるんだもん」

「それはそれで怖いな…」


直観と言われてはどうしようもない。

アレッキオの底知れなさには心から引いたサジュとアローディエンヌだった。


「では次に…義兄さまは義姉さまですから、女心が判り放題では?

あーまあそうなんでしょうか?」

「そんなのいらなーい。アローディエンヌの心が知りたいなー」

「…おお、シスコンこえーな」

「大多数のどうでもいい女の心なんて理解してどうするの?」

「…えー、そりゃナンパとか」

「しない」

「流行りのものを好みの女に贈るとか」

「アローディエンヌー、欲しいものは何?」

「…義兄が本当に申し訳ありません」


謝ってもしょうがないが、

アローディエンヌには初対面に近い騎士サジュにすっかり謝り癖が付いてしまった…。


「ああもう次です次。

義兄さまとサジュさまって喧嘩強いんですか?とのことです」

「喧嘩?したことないよ」

「えーと、白兵戦でいいのか?」


アローディエンヌは義兄の言葉をそのまま鵜呑みにしなかった。


(だって返答がどう聞いてもおかしい)


「…義兄さま、絶対嘘でしょう。引っ掛かるんですが」

「えーだってえ、喧嘩って実力が一緒のひととやるんだよね?だからやったことないよー」


アレッキオの考えでは『実力の差が有る争い』は喧嘩ではないようだ…。


「一方的に襲われたらどうすんだ?」

「触られた所から裂く」

「…恐ろしい答えが来たな」

「いえ、サジュさまも大概です。何ですか白兵戦って」

「うーん、軍属の喧嘩なんてじゃれあいだからなぁ。

勿論一方的とか本気は厳罰対象だから…。

本気で人に襲いかかり襲い掛かられってのは…やっぱり白兵戦だなぁ」

「何処のバーサーカーですのあんたらは…」


二人の底知れぬ怖さにアローディエンヌは身震いした。


(義兄さまはともかく、

乙女ゲームの正規攻略対象が戦闘狂とか知りたくなかったわ!!)


「はぁ…遣りづらい。えー、サジュさまに質問です」

「何だ何だ?」

「アローディエンヌが聞いてくれてるんだから、誤魔化さず誠実に答えろよ」


アレッキオの左手がチカチカ点滅している。

サジュの顔は引き攣った。


「お、おう!」

「義兄さま、脅かさない!

えー、サジュさまはあの大火の日、どこで助かったんでしょうか?…それもそうですわね」

「夜会が面倒でな、従騎士仲間同士で丘の湧き水の所で酒盛りしてた」

「結構遠くまでサボりに行ってるとか、いい度胸だね」

「いや、何か王子とロージアだったか?モメてそうだったし」

「へー、野生の勘って奴?」

「あんまり痴話喧嘩とか見たくないんだよ、俺」

「誰だって見たくない」

「私は見たかったですけど」

「えー、汚いよ?罵り合いだよー」

「今から思えばイベントですし」


アローディエンヌは本来見る専門のミーハーなので、

イベントは何でも見たいのだった。

今まで本人の希望は悲しいまでに叶ってはいないが。


「もー、何でアローディエンヌはあの屑に拘るのー」

「屑って」

「そう言えばどこ行ったんだろうな、ロージア」

「…全くですね」

「知らなーい」


絶対知ってそうなアレッキオに二人の視線が集まる。

しかし見られた本人は、何故かアローディエンヌを見詰めて照れていた。


「アローディエンヌに見詰められると照れちゃうー。あ、サジュ卿は俺を見ないでくれる」

「オレ、何かしたか?」

「何も。俺、アローディエンヌ以外興味ないから」

「義兄さま!失礼な事を仰らないで!」

「だってえー、ホントに興味ないんだよー。

大体これからアローディエンヌと二人の世界が始まるのに

何でこんなのが来るのー?」

「騎士サジュさま…義兄が大変失礼を致しました…」

「…いや、義妹殿も大変だな」


二人が疲れた笑いをお互いに向けるのを見て、アレッキオが膨れた。


「アローディエンヌー、一緒に帰ろー」

「お先にどうぞ、義兄さま」

(他の攻略対象通りかかったりしないかしら)

「か・え・ろ・お?」

「……アレッキオさま、分かりましたから…」

「えへへえー」


(この頃隠さなくなって怖いわ…)


折角王宮に来させられて攻略対処に会えたのに

全く癒されないアローディエンヌであった。


「所で私、何で王宮に来させられたんですの?」


ぽつりと漏らしたアローディエンヌの言葉に、アレッキオは顔を顰めた。


「…そうだよ、おかしいよね。やっぱり攫われたの?」

「いやあ…

義兄さまのおつかいだと言う方が来て…馬車も立派だったし」


典型的な騙され手口にちょっと気の遠くなったアレッキオは、アローディエンヌを抱きしめた。

モガモガと抵抗されたが構わずに力を籠める。


「アローディエンヌ、

僕は君を君の知らない他人に任せるなんてことは絶対しない。

知らない人には付いていかないで」

「耳元でささやかないでください!!

思いきり関係者っぽかったので」

「世間知らずなきみは可愛いけど今度からついて行ったら絶対ダメ」


アレッキオはにっこり笑ってアローディエンヌの両手を掴み、ブンブン振った。

まるで子供のような仕草だが、とても怖い。


「すみません…」

「…防護壁…いや、寧ろ…?考えておかなくちゃ…」

「え?」

「何でもなーいよアローディエンヌう。

折角だし城下町でデートしようねえ」

「…帰るのではないんですか」

「アローディエンヌに似合うお花の髪飾りとかどうかな?」

「え、何で買い物…」

「赤いのか薄い青いのがいいなあ。黄色のクロッカスの飾りとか似合そうだよ。

でもちょっと髪の色に合わないかな?」

「クロッカス?此処にもあるの?いや義兄さま…」

「アレッキオって呼んでえ」

「…アレッキオさま、無駄遣いは…」

「慎ましいんだからあ!そんなところも可愛いね!!」


ダメだ。アレッキオは完全に浮かれている。こうなっては手が付けられない。

機嫌を悪くさせた自覚は有ったので、そのままアローディエンヌは付き合うことにしたのだった…。


「それにしても何でクロッカス…」

「花言葉に疎いアローディエンヌって可愛い」

「…女子力に溢れている義兄さまって怖いですわ」


これが女心分かりたい放題って事だろうか。

特に自分を着飾る趣味が無いアローディエンヌは場違いな事を考えていた。

そして、テンションの振りきれたアレッキオによる城下町の店巡りに付き合わされ、

振り回されるのだった…。



クロッカスの花言葉は『青春の喜び』『切望』『裏切らないで』…。

黄色は『私を信じて』で書かせて頂いてます。重いな!!!

アローディエンヌの髪の毛の色は

黄色がかった灰色頭なので地味に似合わないと思われます。

赤と薄い青は…お察しください(笑)

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登場人物紹介
矢鱈多くなって来たので、確認にどうぞ。とてもネタバレ気味です。
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