お姫様のショッキングな御命令だよ!
お読み頂き有難う御座います。ブクマ、ご評価、拍手誠に有難う御座います。
コレッデモン王国で過ごすニックの元に何やらお手紙が届いたようです。
「ニック、手紙が来てたぞ」
「はえ!?多いね!?誰だろーありがとギー卿」
「親とかじゃねえの?」
いや、親は旅行中だし、未だ手紙届いてない&読んでない可能性が高いよね。
基本放任と言うか、放置……まあ、アラサーの息子が出奔した所で……。
いや、普通モメるね。普っ通に怒られるよね。
あーそれとも、元職場からの叱責のお手紙だろうか。それにしては着くの早すぎだよね。どんな罵倒も覚悟はしてるけど……出来ればソフトめがいいなあ。
SAN値は出来るだけ減らしたくない!そんな望みも棄てられないの!基本メンタル激弱を自覚出来てるから!
「お、おおう……!!」
ボクはお手紙の宛名を見て……絶句した。
……あの子、意外と筆まめなんだね。大して日が経ってないのにお手紙のお返事が来てさ……。
しかもざっと見た感じ、20通位有るんだけど。いやーん……多くなーい?封筒に一文字ずつ書いて入れてるとかなの?それはホラーすぎるけど……これ20通びっしり文字書いてあっても怖い!!
思わぬ悪役令嬢の仕業に吃驚仰天、ニックです。
……思い過ごし&思い上がりで在って欲しいんだけど、人生で一度も貰った事は無いんだけど、凄くラブレターの気配がしますよ。しますよー。怖いよー。
しかし、ウサギのシーリングスタンプって有るんだね……。流石に蝙蝠ウサギは無いだろうけど。
全部フィオール・ブライトニアの目みたいな紫色の封蝋だ。レルミッドさんとはまた違う色だよね。
此処ら辺の入れ知恵はルディ様かなあ、マデルさんかなあ……。
アロンたんだったらうう、分かってても滅茶苦茶悲しい!考えただけで鼻水出そう、ぐすん!!
「ああ、オルガニック殿」
「うほわお!?」
落ち着いた声に呼ばれて、振り向いたら……背の高いお兄さんが!!
「あ、あ!!おおう!!」
「……驚かせて申し訳ありません。……しかし、他の方では其処迄驚かれませんけど、何故俺にだけそんなに驚かれるんです?」
わ、分かってる!分かってるんだけどねえええ!!マジすみません!!
確かに火属性だけど、色合い全然違うし!!ただね、おにいたまと滅茶苦茶背格好似てるのおおおお!!
ビビるんだよおおおお!!
あ、彼はジルさん。
ボクがミニアさんに連れて貰って来た際にお姫様の後ろに居た近衛騎士さんだよ。
派手派手じゃないけど、優しい顔の美形さんだよ!お姫様にのみ口は若干ツンデレだけどね!
幼馴染萌えって奴だね!好きめなジャンルだな!勿論リアルじゃ無くてモブとして眺める方一択だよ!
「あ、えっと!!その!分かってるんだけど!火属性のそういう背格好のお兄さんって言うカテゴリがボクを問答無用でビビらせるコンテンツなの!!」
「……ああ、ユール公爵と俺の背格好は似てるんでしたっけ。しかし、俺は暫くお会いしてませんしそれも大分若い子供の時……女性の姿しか見た事無いので何とも。しかも滅茶苦茶美少女でしたから本当に何とも言い難いですが」
ですよねえ!おねえたまの幼少期……超絶美少女だろうなあ。でも推しであるお子様アロンたんの方が見たいんだよなあ。……せめて絵で並んでいらっしゃる所を見られたり……しないよねえ。
しかし、ジルさんはお姫様を筆頭にこんな美女揃いの王宮勤めだけど、ご婦人を褒めてるの聞いたこと無いな。
まあ、来て日の浅いボクが言うのもなんだけど……珍しいよね。他の人は綺麗だけど超怖いとか言ってるの聞くのに。……それも失礼っちゃあ失礼だよね。
初褒め聞きがおねえたまとは……。いや、おねえたまは死ぬ程めちゃんこ麗しいよ。ただ、おねえたまの話題を聞くと背筋が凍って癒えた筈の古傷(火傷)が疼くんだよ。厨二病的にだけじゃないよ!
「えと、今もおねえたま……アレッキアさんは稀な超絶美女ですよ。滅茶苦茶お怖いですけど」
「そうですか、成長された姿も見てみたいですね。でも来るとしたら男の方ですか、残念です」
「いやまあ、えっと……」
どうコメントしたもんだろうな。
て言うかおねえたまとはいえ、お姫様に余所のおじょーさん……いや既婚者か、を褒めて怒られないのかな。て言うかおねえたまとアロンたんを既婚者って呼ぶの未だマジ辛い。
お姫様と超フラグ立ってるようにしか見えないし……。両片思い全開じれったーいな感じに見えるのに。
いやー、サポートキャラの血が疼くなあ。多分傍観者に徹するしか出来ないだろうけど。
「それはそうと、姫様が呼んでるんですがお時間は大丈夫ですか?」
「あ、えと……宰相府の方にお呼びがかかっている事を報告してからでいいでしょうか?」
「さっき彷徨いてた黒猫卿には言っておきました」
「有難う御座います。彷徨いてたってことはにゃんこさんバージョンかあ。彼は可愛いなあ」
「黒猫卿が可愛い……斬新な意見ですね」
ジルさんが超眉根を寄せてるけど、そうかなあ。
あの艶々な黒い毛並みと言い、左足のくつしたといい、尻尾のツルっと感といいマジ理想の黒猫さんだけどなあ。尻尾触っても怒らないし。
ボクはケモナー迄に至って無いけど、動物好きなんだよねえ。お魚と小動物はとても好きだよ!
……蝙蝠ウサギはモフっとしてたなあ。腹に入られるとくすぐったかったけど……ってアレ、フィオール・ブライトニアだから!!ロリコン駄目絶対!!
で、結構直ぐに会ってくれる系のお姫様……透き通るような水色の髪に、蜂蜜みたいな金色の瞳の、フェアリーな女王様然としたお姫様。
ユディトお姫様の元にお連れ頂いた訳だ。
いやー、今日も何と言うか周りに清らかなオーラが満ちてるなあ。
最近美女は矢鱈めったら見るけど、タイプの違う美女だよねえ。
今日のお召し物は白に紺色の薄い外套を羽織っておられるんだけどまたよく似合ってるなあ。スタイルが素敵だから……エロイ目で見ないようにしなきゃ。
「お呼びいただき有難う御座います、ユディトお姫様!」
「おー、ニック。元気?宰相府で扱き使われてるんだってな。悪いわね」
見た目はガチな妖精なのに、フランクだよね。
ボクみたいな滅茶苦茶庶民にも気さく過ぎる……。有難すぎるけど。
見た目通りの厳格な方だったら委縮死んでしてしまうかもしれないもんね……。
アラサーだけど、怖いもの恐ろしいものから極力逃げたい脱兎系モブだから!
と言うかここ最近王子様だの皇帝陛下だの国王陛下だの王女様だの……よくお偉方に会いまくるなあ。
……あ、ティミーとレギはよく昔から来てたな。皇族関係共もよく来てた……。
考えてみりゃボク、権力的に綱渡り人生歩いてるなあ……。前半は恩恵どころか害悪だったけど…。
「いえ、滅茶苦茶特技の無い身ですけど、少しでもお役に立てれば……。ただ、計算苦手なんですけどいいんですかね……」
「今の所苦情来てないからいいんじゃないの?」
ええいいのかな……。おおらかだな……。戻ったらお仕事見なおそっと。
折角任せて貰ったんだから、丁寧に慎重にしなきゃね。
「ユディト、本題を」
「うっさいなー、世間話位させろよ。仔ウサギの件はさー、鬼ごっこか、かくれんぼで決着付けろよ」
はへ?
何ですと?
鬼ごっこか、かくれんぼ?
え?
誰と誰が?
……この場合、ボクとフィオール・ブライトニアがああああああ!?
「……今何と仰いましたんです?ユディトお姫様……」
「だからさー、流石に表立ってソーレミタイナと揉めるのは拙い訳よ。正々堂々と完膚なきまでに伸して諦めさせるしか無いでしょ?皇太子に引導渡してきなさいよ、ニック」
「一国の王女様の破壊衝動に駆られた言動も素敵ですけど、引導て!!」
「姫様、流石にそれは言わなさ過ぎです。要するに、オルガニック・キュリナ殿。姫様はコレッデモン王国とソーレミタイナ神皇国の関係改善の為に、平和的に解決せよとのお言葉です」
いっやあ、……ジルさんは意訳が上手いなあ。うっかり信じちゃいそうになるよ。
ただのお姫様の御付きじゃないよね。出来る臣下全開だね!
いやでもしかしどうしたらいいんだろ。
確かにね、ボクが連れてきて貰ったせいでソーレミタイナとの外交が拗れたら超困る。
若干離れてるとはいえ……無い訳じゃないよね。
やっぱり、フィオール・ブライトニアには平和的に諦めて貰うしかないのかなあ。
いやーでもしかーし全く勝てる気がしなーい!
只でさえもモブとチートと言う高い壁が立ちはだかり、悪役令嬢と言う勝ち目のないアドバンテージまで持たれているのに……だから逃げ出したんですけど!
「……汗が凄いですよ、具合でも悪いんですか、オルガニック殿」
「いやまあ、その……多分老化による動悸息切れかと」
「歳が近い貴方にそんな自虐を言われても笑えませんけど」
「ぐ、ハハハすみません。つい。ジルさんは体力勝負ですからお若いですよ」
「そうでもないですけど。オルガニック殿は何と言うか独特な感性がお若いですよね」
「おい、自虐と変な労わり合いは止めろ」
……つい脱線しちゃうね。て言うか体力がどーの言い出すの止めよ。悲しくなるー。
うわーん凹むわー。もっと鍛えておけば逃げおおせてみせますガッテンだ!とか返事出来たのにー!
……うん、開き直ってる気もするけど、鍛え捲ってメンタル強いボクって、最早ボクじゃないね……。
「平和的に完膚なきまでに伸せとは……如何なる方法を用いたらいいのかサッパリ分かりません」
「地の利は教えとくわよ」
それはガチで嬉しい情報だけどなあ。でも、それだけだと……向こうにはマデルさんも居る訳だから。
マデルさんはボクよりもフィオール・ブライトニアに付くだろうしなあ。
うう、女神と相対するの辛いよお。
「恐れながら……三十路前と十代の体力を考えて頂けると嬉しーんですが。ボクインドア……室内業務向きですし、何より特殊能力ゼロですよ!?」
「戦う前から消極的でどうする」
「オルガニック殿を追い詰めないでください、姫様。姫様と違って男は繊細なんですよ」
「お前はどっちの味方だよ!」
幼馴染喧嘩ップル萌えーーー!!
じゃなくてええええ!!
ああああ、ボクの為に争わないでーーー!!とか言ったら怒られるな!
「わーわー!喧嘩しないでください!!分かりました!!分かりました!!ボクが完膚なきまでにフィオール・ブライトニアとかくれんぼすればいいんですね!?皆さんからの熱い応援と地の利を叩き込み、教えて頂いた必殺技や裏技を使って見事に隠れ切ってみせます!!」
そうだよ!勝てばいいんだよ!勝てば官軍さ!
……なんてったって、チートな味方はこっちにもいるからね!お姫様とかミニアさんとか!そしてジルさんも!
……獣人さん達は、グレーだけどなあ……。隙あらば獣人の良さと言うか恐ろしさをお仕事中でも語りに来るからねえ。
アレは何なの、会っても居ないのに獣人同士の仲間意識なの?獣人は獣人の回し者なの?獣人は獣人愛を推奨する系なの?
……獣人がゲシュタルト崩壊して何言ってんだか分からなくなって来たよ。
「……正々堂々とじゃないのかよ」
「しかもさりげなく隠れる方決定なんですね」
「いやーだってー、ジルさんは十代と追いかけっこが可能ですー?」
「疲れるし無理ですね。怪我したく無いですし」
「おいジル……。近衛騎士が怪我したくないって謁見の間で言う科白か!?」
「じゃあユディトは俺が怪我しまくっても良いって言うんですね。暴君すぎやしませんか」
あ、コレモブ的には生温い目で見たらいー感じの奴かな。
……それにしてもどうしよう。
ボクがフィオール・ブライトニアから隠れ切れば……あの子は諦めてくれるんだろうか。
若干……若干、ちょーーーーっと、何かがチクっとしないでもないけど。
うーん……。
もしボクが勝ったら、あの子はまた泣くのか……。
それは結構かなり……見たく無いし、忍びない……。
ボクって駄目だなあ……。そんな事覚悟の上で、出てきた筈なのに。
「はぁい?ニックちゃぁん?」
「うぐお?」
おお!?頬っぺた突かれた!!と思ったら……。
「お話合いはぁ終わってぇ?」
「ミニアさん……」
おお、黒髪巨乳美女……失礼、ミニアさんが入って来たのに気付かなかった!
考え事しすぎて自分の中に入り込み過ぎてたよ!
「えーとあの、お姫様とジルさんがモメてるんですけど」
「何時もの事よぉ。それよりぃ、聞いたぁ?鬼ごっこかぁかくれんぼですってぇ?」
「あ、ハイ聞きました。あっちは了承したんですかね?」
「お返事は未だみたいねぇ。でもぉ、頑張りましょぉねぇ?ウサちゃんとぉルディちゃんのぉお鼻をぉ明かしてやらなきゃぁ」
おお、頼もしい……。頼もしすぎるなミニアさん。
だけど……若干引っかかるよねえ。いや、うん。信じ切っていいのかどうか……。
ミニアさん本来は、女子の味方ッぽいからなあ……。フォーナの件も、上手く煽ってくれたし……。後、若干ルディ様とモメてるもんなあ。
フィオール・ブライトニアの事も、嫌っちゃぁいないっぽいし。
女の勘は無いけど……果たしてモブなボクがどれほど立ち回れるかどうか……。
て言うか疑心暗鬼過ぎ!?でも、ボクのガチな味方って考え始めたら居なくない!?
皆良くしてくれるけど、この件に関しては結構誰も頼れなくない!?
しかし誰に……獣人じゃない男性で、フィオール・ブライトニアに肩入れしてない人……。
……おにいたま、とか。
駄目だ、間違いなく力を貸してくれそうにない。
ティミーは駄目。レギも駄目……。
コレッデモン王国……サジュ君、力貸してくれないかなー。若しくはレルミッドさんが絡んでくれたら……ルディ様もお力を貸してくれると思うんだけどな……。
野次馬気分でいいから……見物にでも来られないかなあ。もし来てたら滅茶苦茶頭下げて頼もう!
他力本願と言うなかれ!
モブだから何でも考えつく限りの手は打つよ!!
意外と筆まめです、ブライトニア。
そしてニックも揺さぶられてますね。




