手を組むふたり
お読み頂き有り難う御座います。ブクマ、ご評価、拍手誠に有り難う御座います。
ニックとミーリヤが去ったあと、アローディエンヌ視点に戻りますね。
どうしましょう。
目の前で人拐い……いや、オルガニックさんの同意の上だから、同行?
兎に角……目の前で触手プレ……いや、植物でオルガニックさんを拘束したミーリヤ様と言う、ちょっとRが付くっぽいイベントが起こった上に、あっという間に姿を消されてしまったわ。
何てギャルゲっぽいの……。多分やったことないけど。
じゃなくて!!
……あんなにお嫋やかなのに、ミーリヤ様滅茶苦茶迫力有ったな。
ヒールでだんっ!て足を踏み鳴らすところなんて最高にカッコよかったわ。
脅し慣れって言うのかな……。やだカッコいい。
「……許さない、許さないわミーリヤ。あたくしのオルガニックを……奪うだなんて、八つ裂きじゃすまさない」
……横の涙目でギリギリ歯ぎしりしてるブライトニアも超怖いけど。何だか天井の飾りとか、机もガタガタしてるし。
思わず頭を撫でたら頭をこすりつけられて抱き着かれてしまった。
「アローディエンヌに抱き着くな、フロプシー!!何時までも気安いし慣れ慣れ良いんだよ!」
「アロンがあたくしに優しいのは当然でしょ!!」
げ、何で義姉さま迄張り付いてくんの!?
何この悪役令嬢サンド!!
こんな美女と美少女なサンドイッチは、モブ貴族男性なビジュアルの私だと物凄く残念だし、是非とも他の殿方で見たいんだけど!!見渡すばかりにイケメンばっかだし!!
……即思ってしまった自分が欲望に沿い過ぎね。うっわ両方から超いい匂いがするわ。
片方えーと今はアレッキアだから嫁?妻?
ああややこしいな!
「はっ!そんなんだから蝋燭野郎に逃げられるんだろ、いい気味」
「何ですって馬鹿兄貴!!」
「目見えてんの?大体今の私は女だし、アローディエンヌの伴侶であって兄貴じゃない。大体僕を義兄さまって呼んでいいのはアローディエンヌだけ。私を義姉さまって呼んでいいのもアローディエンヌだけ」
「義姉さま、そんな事は凄くどうでもいいですわ。ブライトニアは傷ついてますのよ!」
両腕を取られてるから振り払うアクションも取れないな!
咎めたら、義姉さまの顔が近付いてきて………頬っぺたに感触が!
ちょ、何キスしてくんの!?
「ちょ、義姉さま!」
「………男の子だと、ちょーっと表情出るね。かあわいい、アローディエンヌ」
「ふざけないでくれます!?」
「だってえ、花咲か令嬢の言った事は事実じゃなあい。いきなり地位を得たかなんだか知らないけどお、結局花咲か令嬢に拐われたしい、蝋燭野郎を守れてないよねえ。オマケに押しつけがましくて嫌わてやんの。おっかしい」
「……!!馬鹿兄貴っ!!」
「義姉さま!!ブライトニアに謝ってください!」
「ふふう、アローディエンヌのお願いでも、やだあ」
煽り方が………本当に酷い!!
そしてブライトニア、顔が滅茶苦茶怖い!!その美少女顔でギリギリ歯ぎしりしないで!!
「おい……言い過ぎだろうが。マジ血も涙もねえな、アレキちゃん」
「アレキに人間味のある同情を期待する方が時間と声帯の無駄遣いだぞ、レルミッド」
……あ、ルディ様。………滅茶苦茶ゾクッとしたんだけど!此方も怖いわ!!
……何だか、滅茶苦茶お顔が……澄んだ薄茶色の目が座ってて、珍しく無表情気味でいらっしゃるんだけど。
この方、ゲームでもあんまり……いや、後半嫌われたら蔑む表情はバリエーション有ったわね。
ってゲーム基準で考えてもしょうがないけど、爽やかなイケメンが怒り心頭だと……生で見るとやっぱり怖いな!!
いや、誰でも怒ったら怖いんだけどさ!!特にこの場にいらっしゃる方々は!
ルディ様はそっと王子様らしく白い手袋に包まれた右手を、ブライトニアに差し出した。
そんな場合じゃ無いけど……凄くスチルっぽいな。
「フィオール・ブライトニア皇女、僕が手を貸そう。僕を子供扱いした上虚仮にした報い、受けさせてやる」
「オイ……マジか、ルディ」
「マジだ。此処まで苛ついたことはアレキ関連以外にあんまりない。ミニアは中々の快挙だな」
「あっそ、私もお前が居るだけで苛つくから消えろ」
「酷い事言わないでください義姉さま!!」
「いいわねルディ。其処の馬鹿兄貴と違って使えるじゃない」
あ。ルディ様の手をブライトニアが取って……ばしって音が鳴る位結構がっちり握手してる。
………両方、顔めっちゃ怖………いんだけど。
ええと……ダークサイドに落ちてる気がするのは気のせいかしら?
「はっ、私がお前に使われる?出来る訳無いだろ、間抜けなフロプシー」
「……ぐちゃぐちゃにしてやるわ」
「出来るもんなら」
「止めろやお前ら!!」
「モメる前にーちょっとー待ってくれるー?」
あ、マデル様と、ドートリッシュ!?
ドートリッシュが滅茶苦茶涙目だけど。
「……ルディちゃんー、いえ、ショーン王子様ー。ミーリヤ……マーシャ・ミリアーナ・ダンタルシュターヴに代わってー、無礼を謝罪するわー」
「ひ、引っ掻き回してすみません。でもですけど!!其処の王子が」
「謝罪以外はお黙りなさい、モブニカ伯爵夫人」
こ、怖ああああああ!!こっちも怖いわ大迫力だわ、マデル様!
でもどうしてドートリッシュが滅茶苦茶小さくなってショボンってしてるの!?
「……何故か嫌われているのは知っていたが、僕はサジュの姉君に何かしたのか?」
「ホラ覚えてない!!息をするようにエロイ事を言いまくってるからですわよ!!」
え、ルディ様がドートリッシュにセクハラ言動したってこと!?
い、何時なのかしら。あ、もしかして学園で?
でも、ええ!?でも、ルディ様そういう言動……ドートリッシュにするキャラかなあ。結構レディファーストなキャラだと思ってたけど、ええ……。
「モブニカ夫人、我慢と言う言葉を知らないの?知りたいの?」
「……つまり、僕がサジュの姉君に不愉快な事を言ったのを覚えていて、その意趣返しだと?」
「ち、違いますルディ様!!姉さんはそういう事はしません!!ただ、粗忽で思いっきり迂闊なだけで!!」
「酷いわサジュ……い、言い返せないじゃないの……!!」
「ふむ?」
ルディ様はこて、と首を傾げた。
あ、良かった。殺意に満ちた怖いお顔が元の爽やかなイケメンに戻ってらっしゃるわ。
「覚えが無くて申し訳ないが、そう言う事なら謝罪しよう。気軽に発した言動で傷つけて申し訳なかった、モブニカ伯爵夫人」
「……」
ルディ様の謝罪に……ドートリッシュが未だ嘗て見た事無いくらい頬っぺた膨れてるわ。
横のマデル様がイラッとしてらっしゃるわね……。
「許す許さないはー貴女の裁量だけどー、貴女にもかなりの非が有るのよー?分かってるのー?」
「う、そうですわ……ね。す、すみません……。発言は今でも結構許せませんし腹立ちますけど、私の行動のせいでご迷惑をかけましたわ、ショーン王子様」
「受け入れよう、一応手打ちと言う事でいいか?」
「……多分、感じ悪く接しますけど、はい」
「そうか、有難う。握手でもするか?」
「要りません。妻に触れないでください」
「すんませんけど、オレも姉さんにこれ以上関わられるのはちょっと」
「そうか、それならそうしよう」
凄い勢いでルーロ君とサジュ様がドートリッシュの前に立ちはだかってらっしゃる。
何時の間に……。
しかし、ルディ様は嘗て何を仰ったのかしら。
こんなにドートリッシュとサジュ様に恨まれてるとは……。そしてルーロ君もルディ様を毛嫌いしてるとは……。
お断りされたルディ様は何とも思ってらっしゃらないみたいだけど、あ、お怒りの方々が……。
「貴方達ー、身分とか、謝罪の仕方ってものがー分かって無いわねー」
「……サジュ、勉強しなおしだな」
「御養父殿何時の間に居たんだよ!?て言うか、オレ悪くねえよな!?」
お式じゃなくて、見張りの方にいらっしゃったバルトロイズ様を呼ばれたのは……あ、陛下か。
後ろの方で頭を抱えてらっしゃる……。
ああ、ご心痛が伝わって来るわ……。
「姉の為に憤ったのは悪くないが、態度が悪い。ルディ、お前の言動も良くなかった。思う所は有るだろうが、収めろ」
「一応影響力に関しては気を付けていたがな、まあ至らぬことも有ったようだ。すまんな伯父上」
「……すんません、御養父殿」
「……チッ、状況が状況だけど何かムカつくな」
「おいレルミッド、お前が怒ってどうする。要らん事言うんじゃねーぞ。お前ももーすぐ成人なんだからそれなりの態度を取れ!」
「『騎士』と『貴公子』のお家は仲いいですねえ」
「俺は何の血筋も関係なく自分の意志で自分の責任で行動してますので」
「……モブニカ伯爵、お話合いが必要ね」
「多忙にて、王宮でお会い出来る時期が来たらいいですね」
「やめてえルーロさまあああああ!!マデル様に喧嘩を売らないでええええええ!!」
大人の態度……。ううむ、確かに必要だけれど、皆様はそのままでいて欲しいわ……。
マデル様の仰ることは分かるし必要だけど……型に嵌まった礼儀正しい皆様方……。それはそれで偶にならいいかもしれない。
……複雑だわ、個人的な我儘だけど。
そして地味にルーロ君とマデル様の仲、悪くない?何で?おんなじ国なのよね?
「ショーンの扱いなんてどうでもいいです。もっとぞんざいでもいい位です」
「アレキにどう扱われようと興味が湧かんからどうでもいいな」
「と言うか、コレッデモン王国絡みとルディが原因なの?オルガニック巻き込んでくれたのはどう責任を取ってくれるのよ」
「……ウサちゃんー、気付いちゃったのねー」
「マデル、あたくしをアホな駄姉共と一緒に考えてるの?あたくし、耳はいいのよ」
「蝙蝠ウサギですもんね、フィオール・ブライトニア」
ふん、って胸を張って、ブライトニアは袖でごしごし目の縁を擦ってる。
ああ、ドレスがめっちゃ皺と汚れが……。この子は本当に動物的と言うか……服に全く頓着しないわね。
いや、私も頓着しないけど。
気付けば……あれ、頓着しそうな面子って……義姉さま位?
身長差が殆どなくなってる真横の義姉さまを見ると、赤めの口紅を塗った唇を尖らせていた。
忘れてたけど白いウェディングドレスなのよね。ソーレミタイナの披露宴というか、お食事会?で私が着てた奴の色違い。
滅茶苦茶似合うけど、やっぱり悪役令嬢オーラは消えないな。
そしてギュウギュウ抱き着かれて苦しいし、胸がめっちゃ当たって何だか腹立つわね。
「なーんだ……意外と冷静で面白く無いな。もっと暴れ倒すかと思ったのに、拍子抜け」
「何ですって義姉さま、煽ってましたの!?」
何で無闇矢鱈と争いを勃発させたいのよ!?
「だってフロプシーって短気じゃない。こんな事なら蝋燭野郎をもっと炙ってやれば良かった」
「聞こえてるわよ馬鹿兄貴!!あたくしはオルガニックの言う通りにしてるだけよ!」
な、何だって!!
あ、確かにオルガニックさんの言う事なら聞くんだものね!!
……それもどうかと思うけど………しないよか、マシかしら。
「そ、そう言えば周りを壊してないわね!!偉い!!偉いわブライトニア!!」
「はわわ、本当です!!凄いですオールちゃん!!」
「……殺意が湧こうがー何だろうがー、公式な場ー、いえ余所で物を壊さないのはー当たり前なんだけどねー」
「で、ですわね……。でも偉いわブライトニア!!オルガニックさんの願い通り、平和的に解決しようとしてるのね!?」
「甘いわーお花ちゃんにフォーナちゃんー。ウサちゃんにはー無闇に褒めたら増長するからー甘やかしちゃー駄目なのよー。だから人の気持ちを察するとかー慮るとかーすっ飛ばして獣人らしく走っちゃうのよー。この子もー施政者になるんだからー其処を鍛えないとー駄目なのよー」
「うっ、申し訳御座いません……」
「はうう、御免なさい」
……うっ、叱られてしまった。つ、つい甘やかしてしまうわね。
「細かい人間関係はレギに任せればいいのよ!適材適所って言うんだから!」
「レギちゃんをー労わる気持ちも無いのにーそんな事言うもんじゃないのー。あんなに若いのに苦労掛けてどうするのー」
「……ブライトニア、レギ様に優しくしてあげて欲しいわ」
「駄目だよアローディエンヌう?きみがそんな事言ったらあの蝙蝠ガキが調子に乗るじゃない」
「……義姉さまも平和的になりませんの?」
「私は何時だってアローディエンヌとの愛と平和に溢れた感じで生きたいと思ってるよお?」
「周りも気にしろや」
あ、視線の端の陛下がめっちゃ頷いてらっしゃるわ。
お話に入って来られないけど、聞き耳は立てられてるみたい……。
「諸悪の根源のルディには馬車馬のように働いてもらうわ」
「そうか、別に僕はニックに対しては諸悪の根源では無いし、怠惰な質だぞ」
「早速具体案を考えなさいよね、ルディ。あたくしへの迷惑料の一環とするのよ!」
「ほう?子供扱いされたんだから力押しじゃないのか?」
「平和的にって言われたんだもの!!」
「……ふむ、ではニックの好きそうな物でも調べておけばどうだ。案外、男なんて転がすネタが分かれば単純なものだぞ、なあレルミッドに伯父上にモブニカ伯爵ルーロ・ノロットイ」
「ハァ!?」
「……伯父を揶揄うな、ルディ」
「……嫌な王子殿下ですね、ショーン様」
……何故にその御三方。
あ、最近くっついたばっかの方々だからか。いや、初々しいわね!ちょっと赤く鳴ってるのそれぞれ萌え!
じゃなくて……。
「ああ、成程。流石兄上様。レルミッド以外のお噂はかねがね」
「煩えぞティムのボケ!!要らん感想はいーんだよ!!」
「ふん、あたくしはオルガニックを転がしたりなんてしないわ。コレでも尽くす質なの」
そ、そうなんだ。
そういや閉じ籠る先が建設中だの言ってたな。
………14かそこらで恐ろしい子だわ、ブライトニア。
「ニックは弱者だからな。追われれば逃げるぞ。なあアローディエンヌ、しつこくされると逃げたいだろう?」
「……いえ、まあ……確かにまあ、そういう時もあるかもしれませんわね」
「そうだよねえしつこいのは嫌だよねえ。やっぱりあの蝙蝠ガキは焼こう」
「お前のことだアレキ。まあ、興味が無ければどれだけ好みに寄せてこようが、ふーん?それで?で終わるがな」
…………ルディ様のご意見は為になるけど、それ言ったら………。
いやまあ、理想と現実よね。ええ。
「……ルディ、あたくしに喧嘩を売ってるの?オルガニックが見て無いから買うわよ」
「……ニックちゃんが見て無くてもー、私達が見てるしーお話もするわよー」
「卑怯よマデル!!」
……良かった、一応平和的な感じになってるのかしら。
……オルガニックさんがいない方が平和に進みそうかもしれないわ。そう言う問題じゃないけど。
「……しかし、意外ですね。披露宴を無茶苦茶にされたと公爵が怒り狂うかと思いましたが」
アルヴィエ様のボソッとした呟きが……。
確かに……。義姉さまの事だから、もっと怒り狂ってもおかしくないかと思ったけど、割と普通に私の右手を離さないだけで………いや、何時まで握ってんの。普通じゃなかった!
「私は結婚式と披露宴を『陛下を交えて内輪ながらも盛大に開催した』という事実が欲しいだけで、別に宴会自体はどうでもいい」
酷い!!あ、あああ!!
……陛下が!!陛下が倒れそうに!!
そしてチェネレ様が面倒そうに支えて差し上げていらっしゃるけど!!
「ちょ、義姉さま……アレッキア!!何てこと言いますの!!」
「私はアローディエンヌが居ればあ、王城だろうが草原だろうが何処でもいいんだもん」
「陛下、陛下!!大変申し訳ございません陛下!!私は大変昨日のお式もこの披露宴に満足しておりますので!!大変感謝しております!!ご多忙の仲本当に有難う御座います!ほら義姉さま謝って下さい」
引っ張って行こうにも義姉さまが動かないし!
何なのこの力の差!前からだけどせめて男女差は何処へ行ったの!?
「えー。別にー身内の結婚式へのちょっとした資金提供ぐらい普通でしょ」
「あはは……ちょっとしたですか。……結構に結構な金額でしたけどね」
「流石アレキだ。滅茶苦茶図々しいな」
全くよ!!
カンパどころじゃない金額でしょう!!丸抱えさせといてこの言い草!!
酷い、酷過ぎるわ……。予算を頂いた上にハードスケジュールを潜り抜けさせて、お式と披露宴に出て頂いてるのに……。
陛下が真っ白になってらっしゃるじゃないの!!
「それに、この程度で無茶苦茶なんてねえ。……余興としては面白かった。花咲か令嬢と蝋燭野郎がくっつけば、もっと面白そう。確かにガキのショーンやフロプシーと違って歳も合うしね」
「義姉さま!!」
「たかだか1歳違いでガキ扱いか?その心根がガキだ」
「やっぱり馬鹿兄貴、ぐちゃぐちゃにしてやりたいわ………!!オルガニック!平和的にだなんて、何て試練なの!」
「……若様、何てお優しいの……!!私のせいで折角のお式とお披露目を引っ掻き回してしまったのに!!」
「ああ、こんな程度気にしなくていいんだよ、ドートリッシュ夫人。きみはきみで居ればいい」
「感激ですわ若様!なんなりとお申し付けください!」
「……成程ー、諸悪の根源はー、此処にいたわねー」
「若様、ドリーを甘やかさないでください」
此処では……義姉さまがドートリッシュを丸め込んでるし………。ドートリッシュ、コレッデモン王国の人なのに、いいのかしら。
一応ルディ君とドリーの和解(蟠り強めに残る)が成りました。
次はコレッデモンからメッセージが届くようです。




