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サポートキャラに悪役令嬢の魅了は効かない  作者: 宇和マチカ
異世界ウェディング、その後の話

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172/212

オルガニック・キュリナのお見合い願望

お読み頂き有難う御座います。ブクマ、ご評価誠に有難う御座います。

寝起きから義姉さまがテンション高い所から始まります。


「おはよおアローディエンヌう、今日も可愛いねえ素敵だよお!男の子のアローディエンヌはあ、おでこ可愛いねえお腹も好きだなあ足もいいねえ頬っぺたもいいよねえ!勿論全部だあいすき!」

「はあ……そうですか」


朝から義姉さまはテンションが高いな……。

別に私、朝に弱い訳じゃ無いけど、何なの……。何で浮かれてるのかしら、ついてけないわ。

悪役令嬢に頬擦りされて目覚める朝ってどうなのかしらね。


思わず乗っかってきそうな義姉さまを押しのけた手を見て……ああ、今日もこの姿……変わってない。

昨日も疲れたから、帰ったらお風呂の後に即行布団へダイブしちゃったけど……寝間着に着替えた覚えがないのよ。

それに、この殿方用の寝間着見た事無い……。やったらビラビラしてるけど、コレ、殿方用よね?

……ズボン有るしな。うん、多分……。鏡見たく無いけど、似合ってないだろうなー。

一体誰が……。……目の前の義姉さまの仕業としか思えないな。

100%義姉さまに剥がれた上に着せ替えられたとしか思えないし!!

それに、ひとりで自室で寝た筈なのに、どうして義姉さまが布団に我が物顔に侵入してるのかしら。

幾ら家主特権でも良くないと思うわ。前から思ってるけどさあ!


「なあにアローディエンヌう?」


人をもみくちゃにしてくる義姉さまは頬っぺたどころか全身余すところなく綺麗で、今日も滅茶苦茶耽美だわ。

何か腹立ってきた。


「……無断でひとの部屋に入らないでください」

「ええー?アローディエンヌのお部屋は私の部屋と繋がってるじゃなあい」

「何時!?」

「あのねえ、そこの本棚の花模様をぐいってやるとお、廊下が出てくるの!いつでも来ていいからねえ!」


……義姉さまが指差す先には、誰かさんの趣味が大半突っ込まれた私の蔵書が詰まった本棚が有る。

この間、下部の戸の建付けが悪いから修理に出した代物で、横枠の花模様は前からあるの。

そういや手を突っ込めるくらいの大きさだけど……どういうメカニズムで廊下が出るの!?

大体何時予想外の大工事がされてたって言うの!?まさか、ソーレミタイナ行ってた間!?

何処の忍者屋敷かビックリハウスだよ!!

大体、義姉さまの部屋と私の部屋って部屋二つ分くらい離れて無かった!?まさか潰したの!?

……ああ、頭痛がして来たわ。


「意味が分からない……」

「ちゃあんとアローディエンヌと僕以外は入れないようにしてあるから、バッチリだよ!」


何がバッチリだよ!!

ホントどう言うメカニズムで!?


「もう、色々何が何だか……大体、用が有る時は普通に扉を叩きますし、別に要らないと思いますわ」

「もおアローディエンヌったらあ鈍いんだからあ。でもそんな所も好きい!何時でもくっつきに来てくれていいんだからね!」


……朝から義姉さまが本当に面倒くさいわ。


「昨日はあ、3回目の初夜だったけどアローディエンヌ疲れちゃったでしょお?だから今日ね、今日」

「はあ!?初夜!?3回めって……はあ!?え、……この姿……はああ!?」

「ふふふふう、楽しみい!あ、朝ご飯はあ、アローディエンヌの好きなミートローフにしたよ」

「いや確かに好きですけど朝から重い!!ちょ、義姉さま!!」


結局乗っかって来られたし!!

結構全力でグイグイやってるのに、殿方でも非力モブな自分が憎いわ!!


「今日は披露宴だねえ。今日のアローディエンヌの衣装はあ、赤がいいかなあ?」

「そんな芸人さんみたいな色は似あいませんし嫌です!!」

「ええー、何でえ?とっても可愛いよ?」


そりゃ義兄さまが着れば何でも様になるんだけどな!?

私モブだから!!間違いなく正月特番のひな壇みたいな事になるでしょうが!!

只でさえモブなのに変な笑いは要らないんだってば!!


……朝から無茶苦茶疲れたんだけど!!

……ミートローフは美味しかったけど、胃もたれしてる気がするわ。

未だ若い筈なんだけど、ストレスよね、コレ。




……披露宴って、朝っぱらからやるものなのねえ。

まあ、現代日本と違って、立食式って言うか……何かずっと座ってて祝辞とか聞いてる感じじゃないみたい。

思い思いにお話してる、軽い立食式パーティって言えばいいかしら。

今は義姉さま陛下とお話をされているわ。

……ご迷惑をお掛けしてないといいんだけど。いや、掛けてるだろうな。

それにしても義姉さまと陛下は流石悪役令嬢と攻略対象……。凄まじく目の保養でお似合いね。

いや、叔父と姪の関係だけどさあ。


「お花ちゃぁん、こっちこっちぃ」

「まあ、ミーリヤ様」


綺麗な赤いドレスのミーリヤ様の傍らには、綺麗な白い色のドレスのマデル様が。

……うーん、やはり美女が着るとドレスまで凄まじく煌めくわね。


「何かぁ食べたぁ?」

「いえ、朝から大量に食べさせられましたのでちょっと遠慮してますわ」

「そーなのー。お祝いをー申し上げるわー。公爵夫人、2回目のお式ーおめでとうー」

「おぉめでとぉ」

「あ、有難う御座います。今は殿方の姿で、2回目と言う訳の分からない披露宴にお越し頂き誠に有難う御座います」


本当にこんな意味の解らない式にお付き合い頂いた方々には感謝しか無いわね……。

何処の世界に2回も性別変えてやるカップルがいるってのよ。


「アロンたん、ちょっとお……相談があるんだけどいいかなあ……出来れば、マデルさんとミニアさんも」


遠慮がちな声が後ろからするなあと思ったら、ちょっと豪華な神官服のオルガニックさんが困った顔をして立っていた。

ブライトニアが居ないみたいだけど……あ、あっちでこっちをじいっと見てる。

視線に気が付いたみたいで、ふふんって笑ってるわ。威圧的な感じがとっても悪役令嬢ね……可愛いけど。


「オルガニックさん?お式に出席頂き有難う御座います。何でしょうか」

「ヒイ!」


私が返答をすると、オルガニックさんが肩を滅茶苦茶震わせて2、3歩バックステップを踏んでしまった。

き、器用ね。私がやったら後ろ向きにひっくり返るわ。


「な、何ですの!?」

「えええと、えうん!御免ねビビッて……。見た目は普通な感じなのに、声、超怖いね……」


あ、声にビビられたのか……。

だよなあ。自分でも若干慣れて……来てない。

……怖いもんなあ。どうなってんのかしら。この薄っぺらい体の割に、この声帯……。考えても無駄っぽいけど。


「あの、すみません……」

「いやいやいやいや!ゴメンね!!滅茶苦茶渋くてカッコいいしギャップで魅力大爆発だよ!ビビりで御免ね!」

「個人的にはー落差がー有ってー面白いとー思うわー」


そ、そうだろうか。マデル様のフォローは有難いけど、一刻も早くこの姿と声から脱却したいわ。

いや、元々の声が大好きって訳では全く無いのだけど。もうちょっと落ち着きのある声がいいのよね。


「それでぇ、なぁになぁにぃ?ご相談ってぇ悪い事ぉ?」

「違うんですよ……寧ろ、御三方に助けて欲しいって言うか……いや、未成年のアロンたんにお願いする時点で図々しい事この上ないのは分かるんだけどね!?でもアロンたんのご協力も非常に必要なんだよおおお!!御免ねえええええ」


……えー。何なのかしら。

まあ、初めは苦手だったけれど、オルガニックさんも言動を除けば普通の感性を持った人だし、何より迷惑を掛け通しだものね……。義兄さまが。

火傷も物凄く負わせているし……!!

……うん、些細な事でも協力しなきゃ居たたまれないわ。


「思いつめてるーみたいだけどー、一体なーにー?」

「私で宜しければ。大したことは出来ませんけど」

「聞くだけぇ聞きましょぉかー?」


マデル様とミーリヤ様もオルガニックさんの尋常でない様子に、首を傾げている。


「うう、女神×3……神々しいにも程があるよおお」

「まあーお褒め頂きー光栄ねー」

「いや今私殿方なんですけど。しかもおふたりと同位置とか烏滸がましいですし」

「言われた事なぁい誉め言葉ねぇ」


オルガニックさんは私に幻想を抱きすぎじゃないのかしら。拝まないで頂きたいわ……。

お二方は確かに滅茶苦茶お綺麗だから、女神扱いもやむなしって感じだけど。

と、呑気に構えていたら……オルガニックさんがヒソヒソ声で爆弾発言を投げ込んできた。


「ボク、お見合いがしたいんです。出来れば同年代いいや、同世代から年上を!!

身分はどうでもいいです!!その人に合うよう努力を重ねます!!」



マデル様とミーリヤ様は、動きを止めて私は飲み物をひっくり返すところ……と言うか、溢した。

……白い葡萄のジュースで良かった。後、黒い服で良かった!!

……じゃなくてさ!!


え、今何て言った!?


お見合い……お見合いいいいい!?

あそこで滅茶苦茶オルガニックさんをじいーーーーーっとその大きい紫の瞳で見てる、裾が黒で薄茶色ツインテールの美少女が居るのに!?

あのフワフワな薄紫のドレスが可愛い、あの子がいるのに!?


「冗談ですわよね?」

「冗談だと思う!?」

「ウサちゃんはーどうするのー?」

「どうするも何も、ボクがフィオール・ブライトニアに手を出したら犯罪でしょ!?子供は恋愛対象外なんですよおおおお!!」


……た、確かにそうだけど。

私も地味に気になってはいたけど、目を逸らしていた問題ね……。


「一般市民ならーそうでしょうけどー、あの子ー皇族でー、今やー皇太子様だものねー。手を出したところでーなーんにも問題じゃないんじゃないかしらー?」

「まさに何の問題にもなって無いのが問題なんですよ!!大体手を出しませんったら!!」

「じゃあぁニックちゃんの方がぁ出されたらぁどうするのぉ?泣き寝入りぃ?」

「されそうだからお見合いして結婚するんですよおおおお!!」

「そもそもー、何で私達にー?」

「コレッデモン王国は結婚適齢期の男性が少ないって聞いたので!!ヒラ神官のボクなんかでも需要が有るんじゃないかと思ったんです!」


へー、そうだったのか。知らなかったわ。


「……正直ぃ、引く手数多というか、引く手がぁそれぞれぇ相打ちしそうなぁ位居るわねぇ」


え、それどんな環境なの……。

熾烈な婚活現場ってこと?


「ニックちゃんはー、ちょーっとお話し方が変わってるけどーマトモちゃんだしねー。神官だしー」

「神官に何のアドバンテージが発生するんでしょう……。いや、有利な点とか無いですよね」

「そぉでもないわぁ。職業ってぇちゃぁんと婚活の指針になるじゃなぁい」


それもそうか……。

前世で婚活ってした事したこと有ったかしら。覚えてないけど。


「お国では探されようと思われませんでしたの?」

「皇帝陛下が絡んでる時点でもうね……。あの陛下は……はうううん!!」


……顔を覆ってしまわれたわ……。一体何が。


「と、兎に角!ボクは転居も辞さない構えなんです!!それに、あんな才能ある若い子にこんな何の技能も持たないモブおじさんが絡んではいけないと思います!」

「オルガニックさんはおじさんではないと思いますが」

「大迷惑をかけたボクなんかに、君は何て地上に舞い降りた女神なのアロンたん。って、いや……冗談抜きでね!」

「まあー、ウサちゃんはーもうちょっとー我慢とか―マナーとかー学んだ方が良いんだけどねー」

「じゃぁあ一緒にご招待しちゃうぅ?」

「ええっとちょっと待っておふたり共!!何の話ですか!?ボクの一世一代の脱出計画のお話聞いてくれてました!?」

「勿論聞いてたわよぉ、ウサちゃんだけじゃあぁ視野が狭まるからぁ色んな子を見た上でぇ結婚したいんでしょぉ我儘さぁん」

「違いますうううううう!!!」



……どうしましょう、正直滅茶苦茶面白そうな展開になって来たと思ってしまったわ。






気軽にご招待されていますが、ニックはこれでも辞表郵送して出奔する覚悟でした。

何故ならもうお休み出来ない所まで休んでいるからです。勤め人ですので。

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矢鱈多くなって来たので、確認にどうぞ。とてもネタバレ気味です。
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