93.此処はめでたし、めでたしのスタート地点
お読み頂き有難う御座います。ご評価、ブクマ、誤字報告誠に有難う御座います
結婚式です。
アローディエンヌのテンションはいつも通りです。
ドンドン外が大音量……。……ああ、煩い。滅茶苦茶煩いわ。ご近所迷惑にも程が無いかしら……。
窓がビリビリ揺れる位爆音が響いているわ。
「……はわあ……凄いです」
「曇ってるから微妙ね」
そう、ブライトニアの言う通り、空は曇ってるの。しかも今は朝よ。
……花火は夜っていう固定概念が貼り付いているのかしら。
……いや、やっぱりおかしいんじゃね?おかしいわよね?
いや仮におかしく無くても、此処まで上げる必要無いわよね?
だってお祭りでも何でも無いんだから!!
どうしてこう、バンバン煩く花火が上がっているのかしら。
もうこんなもので良くないかしら!?
寧ろ煙く無いかしら、上げてる方……ああ、本当に滅茶苦茶すみません!!近隣の方々にも騒音で迷惑を掛けていないかしら!?掛けてるだろうなあああ!!すみません滅茶苦茶すみません!!
よく漫画とか小説でも結婚式のシーンで花火上がってるけど、アレかなり近隣住民に大迷惑よね!!主催者側でも煩いし!!あああ体感しましたホントすみません!!
しかも、花火ってお金掛かるわよね。
……たったふたりの為に……お金の無駄じゃない!?しかも、賠償とか言ってせしめてるお金でしょう!?滅茶苦茶無駄だとしか思えないのだけれど!
……あああ、もうあんなにバンバン上がってる……。止めようがない……。
「花火って煩いわね。朝だからそんなに綺麗でも無いし」
「オールちゃん……そんな、アレッキオさんのご希望だそうなんですよ!?」
そう、この花火、何と義兄さまのご希望!!
私?勿論要らねえわよ勿体無い!!でも最早上がってるわよね!
要らないってあれ程言ったのに!!
そして、此処は滅茶苦茶立派なお城の一角!
遠くの国から運ばれてきたらしい、薔薇色の石で造られていて、屋根は綺麗な赤!
乙女の憧れみたいな礼拝堂!そんな花火は夜空ならきっと綺麗!
そして、正直顔は似てるけど全く似てない美人姉妹に囲まれて、モブは消え去りそうよ!
窓を眺める姿もヒロインなフォーナは、薄い灰青のふわっとしたドレスに、銀に濃い紫色の石が填め込まれたイヤリングにネックレス。
で、足をブラブラさせてテーブルに頬杖を付いてるブライトニアは、臙脂とクリーム色を組み合わせたひらっひらなドレス。アクセサリーはネックレスとブレスレット。両方金に臙脂と茶色の石だけど、イヤリングは耳に何か付けるのが嫌なんですって。成程、ウサギ?だもんな。
可愛らしい二人の衣装は、マデル様とミーリヤ様プロデュースよ。
ラブリーキュートが目に洪水の如く押し寄せているわ。眼福眼福!ふたり共の可愛さが更に可愛くなっているわね!
………まあ、例によって例の如く、揉めたけれどね。主にブライトニアが布が多いの何だので。
何でそんなに脱ぎたがるの、野生なの?野生なのね……。
それを丸め込んだマデル様の手腕、凄すぎるわ……。
しかし、フォーナはレルミッド様の色だと分かるけど、何でブライトニアはリボンの時と言い、何故臙脂色に拘るのかしら……。オルガニックさんの髪はクリーム色だし、目の色って茶色よね?
クリームパンみたいなカラーリングだわって思ったから覚えてるんだけど、茶色は分かるわ。でもなあ……オルガニックさんに臙脂要素有ったっけ?全く分からんわね。
でもまあ、彼氏(ブライトニアは未だ違うけど)色纏ったふたり共可愛いが過ぎる。
流石ヒロインに悪役令嬢!
殿方なら「可愛過ぎるひしいっ!!」なシーンになる事間違いなしだわ。
……残念ながら、この姉妹の恋する相手は全くそういう感じには……してくんないかなあ。
おふたり共別の理由でしてくんないだろうなあ。見たいなあ。絵になるなあ。
私はモブのサポートキャラのアローディエンヌ!今美人姉妹に囲まれているの!
そして、今日の主役なんですってよ!!
結 婚 式 の な !!
あーーーー、テンション上がらないわああああ。
マジかよ、有り得ないわね……。
こんな立派な所の礼拝堂を貸し切りだなんて、聞いてねえんですけどおおおお!?
しかも参列者の殆どは美形の王侯貴族様方っ!!
美女もイケメンも選り取り見取り!
キラッキラから繊細からお色気から……あああああ!!参列者が麗し過ぎて大変大変!!
……参列者側に行きたいと今でも思っているのは秘密よ。
義兄さまがギャン泣きして怒るでしょうからね。妄想は自由だし。
そして窓の外を見ずに、目の前の鏡を見れば見る程、ふたりとの落差が月とスッポン。いや、星と路傍の石位にしとくか……大して変わらないか。
それにしても素敵なドレスねえ。パフスリーブと胸の下の切り替えと後ろのでっかいリボンのお陰で絶壁も気にならないし。多少いや結構がっつり背中が空いてるのが気になるけどな……。室内だからいいけど、スース―するわ。
アクセサリーはあのしゃらんしゃらん煩いのを足以外はやっと昨日の晩外して貰った……けれど、金にキランキランしたデカい赤い石……ルビーかしら?のネックレスに、イヤリングに冠?ティアラ。……最早物凄くお高そう過ぎて、お値段の想像は放棄したわ。
あー……目の前に素敵な鏡台が有るのはいいんだけど、私の姿が映ってるのがなあ。
目の前には素敵なアクセサリーと白くてめっちゃセンスがいい素敵なドレスに着られたモブが居ます。はい以上。そんな感じよね……。
……やばいなこのモブ顔。
あれだけ化粧して頂いても……溢れんばかりに隠しきれない驚きのモブさが!
おお、何て残酷なの。全く以って夜会の二の舞だわ。アレだな!特殊メイクで元から塗り潰さないと駄目だな!!コレで義兄さまの隣に!スゲエわ私って勇者!!
自棄にならないとやってらんないわね!!
「……アロンさん?ご気分が優れませんか!?」
「ええちょっと鏡の中のモブがモブでモブで……何でも無いわ」
「何だか分からないけど、結婚式が憂鬱なら、馬鹿兄貴を放置してバックレたらどうかしら」
「ええええ!?何てことを言うんですかオールちゃん!!」
何てこと言うのブライトニア……。
その手が有ったか。この気後れマックスな心がちょっと動いたじゃないか……。
いや、やらないけど……やれないけどね。一応好きな人との結婚式……うーむ。
……派手過ぎて逃げ出したい心が凄く強いわ。勝ちそうだわ。
「自信をお持ちくださいアロンさん!とっても綺麗で可愛らしくて素敵な花嫁さんですよ!」
「……有難う、フォーナ。恋を叶えられた貴方の方が綺麗だわ」
「ええ!?そ、そんな事有りません!!主役が何を仰るんですか!!」
おお、とっても綺麗で可愛らしくて素敵なヒロインに気を遣われてしまったわ……。
流石恋を叶えた主人公はいつも以上に神々しいわね。レルミッド様とハッピーエンド……はこの人生を掛けて見守るとして、お付き合い出来て本当に良かったわね……。
ああ、何だか感慨深いわ。スキルのせいで全く泣けないけど。
「……所で、ソーレミタイナの結婚式って何か決まり事とか有るのかしら」
ええ、普通はもっと事前に心構えとかしとくもんだと思うけどね。
……義兄さまが離れなくてね、この何日か……。
何だったかしら、ああそうそう。お庭で土いじりをされてるルディ様をお見掛けしてからと言うものの……着せ替えだの、今度はドゥッカーノでの式の話だの何だので時間をぶっ潰されたのよね。
2回もやらなくていいでしょって100回は言った気がするわ。でも覆らなかったわ!!くっそう!!
「適当に祭壇で適当な言葉で、結婚するけど文句ないわよね有ったらぐちゃぐちゃよ!って神に言うんでしょ」
「はあ!?嘘でしょう!?」
「ち、違いますよおおお!!ちゃんと病める時も健やかなる時もこの方と愛し合います、お認めくださいって言うんです!!」
……良かった、フォーナが居て!!流石神官ヒロインね。祭事に詳しいわ!!有難う神官で居てくれて!
しかし、其処は現代日本……いや、海外?的な感じなのね。
いや、多分前世で結婚してないでしょうから良く知らないけど。
でも、科白が短くて良かったわ。呪いの如く長々しい文句とかいう自信無いもの……。いやまあ、義兄さまが代わりに言いそうだけどね……。
いや、要らん科白も付け加えそうな気がするからしっかり聞かないと。油断できないわ。
そして、結局レッカ様と仰る前王のお嬢様には会えず仕舞い……なのよねえ。
お式には何と参加して下さるらしいんだけど、拐われた奴の結婚式に出てくださるなんて、マジで懐が広すぎやしないかしら。
義兄さまが煩すぎるからお手紙でのみのご挨拶になってしまったし……。文字を書くのが少し苦手なようだから、サジュ様が代筆して下さったのだけど……中々ワイルドな読み応えだったわ……。
いやまあ、18の男性……忘れがちだけど同い年だもんな。大体私だって褒められた字じゃ無いわ。
そして、レギ様……。
フォーナとブライトニアとオルガニックさんのお話からすると、何とご出席頂けるそうだわ。具合大丈夫でいらっしゃるのかしら。いや、具合の悪い所にトドメ刺した私が言う事じゃ無いけど。
あ、此方も会えてないのよ。そして、手紙すらも駄々を捏ねられたから許されてない……。
ああもう、何て面倒な義兄さま!!浮気しないっつってんでしょうが!!
て言うか浮気した事なんて無いだろ!!
カリメラは……ティム様の手の内みたいだし……心配だわ……。ああ、いい方法が全く思いつかない。
ああ、思考がどんどん暗く……いかん本格的なマリッジブルーと言う奴なの!?
「アロン、アロンったら」
「えっ何!?」
「目を開けて寝てたの?全く動かないから何かと思うじゃないの」
マジか。
……それは傍目には怖いわね。無表情の弊害だわ。
式のさなかにコレだと不気味過ぎるから、考えても仕方ない事は今は止めておきましょう。
義兄さまが確実に何かを察知して騒がれても困るしな。
「あのあの、もしかして花嫁さんの憂鬱という感じですか!?コレからの生活にご不安が!?」
「いや多分全く同じように流れていきそうな気もするけど……煩っ!」
「煩い時計ね!!」
え!?何!?
部屋にある柱時計が大音量で鳴ってる!!
音量もそうだけど、ガンガンゴンゴンしつこく鳴り過ぎじゃない!?
て言うかタイマー機能有んのか、凄いわね!?どう見てもそういう仕掛け一切無さそうなレトロで豪華な時計なのに!?
ん?
「ちょっと蹴るんじゃないのブライトニア!!」
目を離すとこれだからこの子は!!
蹴り癖が酷すぎる!!ウサギ?時はどうしようもなかったけど!!
「この姿で足上げて蹴るなと何度言ったら聞くの!?後物を大事にするってオルガニックさんとの約束は!?」
「内緒にしてねアロン。言ったら空に放つわよ駄姉!」
「はわああ!!」
「ブライトニア!」
「だって煩いんだもの。煩いのは罪よ」
「こ、これはお時間を知らせる鐘なんですよお!!落ち着いてえオールちゃん、アロンさんのヴェールを持ってください!」
「ヴェールなんてあたくしが常に浮かせときゃいいでしょ。駄姉と一緒なのが気にいらないわ!」
素敵な教会のバージンロード……でいいのかしら。あの何だか赤いのが多そうな絨毯を……結構長いヴェールを……常に浮かせたままで歩いてくるモブ花嫁……。
……それも結構奇抜と言うか、うん、駄目だ。
どう考えてもお城の怪談話だわ。
ホラーな惨劇か、百歩譲ってウケないネタにしか見えなさそう……。
兎に角行くか……。あ、超歩きにくそうな見た目の割に歩きやすい絹製の細かい花が付いた白絹の靴……。なんだけど、ヒールが高いから途端に背が高くなった錯覚だとは解るけど、いい気分ね。いや、それでもフォーナには届かないチビさだけどな……。いいじゃないのよ、一時的にでもチビじゃない錯覚に浸ったって。
あ、……私には父親が居るんだか居ないんだか分かんないから、バージンロードを歩く付き添い役?介添えっていうのかしら?は無しみたい。いや、そもそもこの世界の常識にそれが有るのかどうかも不明ね。
よし、控室から無事コケずに出れたわ。第一関門クリアね。願わくば式の終わりまでコケない事を祈るわ……。
そして……いないな。流石に義兄さまは乱入してこなくて安心した。
……死ぬ程目の前で着たからな。まあ、今更見なくても同じだからでしょうね。
そして、扉が開く。
……手動よね。余所の王宮の使用人をコキ使っていいのかしら。
ヒラヒラしたブーケが無ければ自分で開けているわ、申し訳なさ過ぎるわね。
大きな天窓から降り注ぐ柔らかな光……は曇ってるから差し込んでない。
正面のステンドグラスは何処かに灯りが組み込んであるのかしら。何だか知らないけどよく分からない感じの物語が描かれているみたい……。……ああ、こういう時に地味に気になる……。
逸話位聞いとけって感じよね。金装飾の壁飾りも何だか高価で綺麗……こっちもサッパリ意味が分からないけど。
曇りの朝なのに、薄暗くない細やかな心配りが……脅して飾って頂いたんだし、絶対手を抜かれていると思っていたわ。
上を向いても下を向いてもどこもかしこも立派な礼拝堂ねえ……。こんな大変なものを賠償とはいえ無償で使わせて頂くなんて……うっ、胃が痛い。
おおう、参列者の方々……後ろ姿だけでも何というオーラの塊の集団なの……。
後ろ姿だけでなく美男美女美少女美少年なのよねえ。ああ、正面からガッツリガン見したいわー。
「アローディエンヌ」
「はい?」
あ。何時の間に上って来たのかしら。祭壇の前だわ。
何時の間に横に義兄さまが。そしてめっちゃ手をがっちり握られているんだけど。
え、結婚式って手を繋ぐもんなの?
何かこう、神妙そうな顔で下向いて横に居るだけじゃないの?
……うわ、未だ嘗てないめっちゃキラッキラした目で、私の事見てるわ義兄さま。
「わあ白いのもとっても似合うねえ。飾りも似合うし背中がいいなあ。捲りたいなあ。あー今日も可愛くて綺麗だよ愛してるよ、だあいすきアローディエンヌう」
「不穏な事言わないでください、義兄さま」
大体フル装備で先日見たでしょうが。抵抗したから捲られては無いけどウズウズしてたのってこういうことなの!?おかしいだろ!
それに、過去も現在も未来も義兄さまの方が綺麗なのは間違いないでしょ……。相変わらずの耽美な美形で腹が立つわ。やっぱり隣に立つとこんなド派手なドレスなのに霞んで消えそうね。
ふーん、義兄さまの礼服は黒なのね。御揃いに拘るかと思ってたのに意外だわ。白も似合うと思ったけれど、白じゃないのね。
いやー、黒だと……ほれぼれするほど滅茶苦茶綺麗な……悪役ね。相変わらず光のオーラが欠片もない。耽美なイケメンさが際立っているわ。
あれ、でも……何だか地味にドレスの刺繍と似たベストとコートね……。
って、刺繍、マジで同じじゃない!?まさかのお揃い……っぽい礼服!?
……ええええー。そう言うのアリなの?いや、めっちゃ似合うけど!!
「……うっうっうっぐすんぐすん……」
え?何なの目の前から泣き声がするわ……。って、あ!?
「え、何故オルガニックさんが神官っぽい服を……」
「いや、ソイツ神官だろーが」
……そうだったわ。忘れていて御免なさいオルガニックさん。推しの趣味がおかしい重度のオタクお兄さんだという印象が強烈過ぎて!!そう、神官なのよこの方!!うう、レルミッド様にツッコまれてしまったわ……。
「オルガニック悲しいの!?あたくしが慰めがふっ!!」
「はーいウサちゃんご苦労様ー。次はーこっちでーお座りねー」
「むぶーー!!」
「フォーナちゃんもぉいい子いい子ぉ。レルミッドちゃんのぉお膝の上にでもぉ乗せちゃうぅ?」
「はあううう!?」
「ハァ!?ミーリヤねーちゃん何言ってんだ!!」
「いや先輩の声もデケエし!!取り敢えず黙ろうぜ座ろうぜ!?」
ああ、すみませんサジュ様。ああ重ね重ね本当にご迷惑をお掛けして申し訳無さが過ぎるわ……!
しかし義兄さまは眼福だけれど……ちょっとあっちに混ざりたいな。礼服の皆様ガン見したいなー。
と思ったら、振り向けない!?何故!?
……ヴェールが邪魔で上手く振り向けないと思ったら、いつの間にか義兄さまががっちり肩抱いてると言うより掴んでるし!!
「ちょ、義兄さま!!何なんですの離して!!」
「これ指輪ね。わあ似合うね!僕にも嵌めてえアローディエンヌう」
いやいやいやいや!!オルガニックさんという進行役を無視していいの!?
強引に左手の指輪を嵌められて、嵌めさせられたけどいいの!?
あ、こっちも結婚指輪の習慣が有って、左手の薬指なのか!!
今知ったんだけど!!
あっでも指輪に見覚えがある!……義兄さまが言ってたけど聞き逃した!?だってあまりにも高価な装飾品が多いから脳が麻痺してスルーしたのよ!!
薄い青の一粒が埋め込まれたシンプルな金の指輪で……これも高そうだな!!義兄さまのは濃い青だわ。
「ご、御免なさい……。今ボクの涙腺と心臓がちょっと、常軌を逸してて暴発しそうな悲しみでえ……」
「分かります……貴方の心は今僕が滅茶苦茶分かりますよ、ニック師匠……うう、アローディエンヌさん……滅茶苦茶綺麗です。僕が横に立ちたい……!指輪を貴女の手に嵌めたい………!!」
「はっ、負け犬共がざまあみろ。早くしろよ蝋燭野郎」
……何てこと言いますのよ!!って言いたいけど、この場で何か言ったら余計拗れるかしら!?
あああ、拗れそうだわああああ。流石に今、オルガニックさんとレギ様に対して建設的な言葉は浮かんでこない!!気まずい!!
「えっあの赤毛の人、怖い上に性格悪いよ……です!?」
「あはは、怖いなあアレッキオ。酷い有様ですねえ」
「今からでも陛下に直訴して婚姻取り消しをした方がいいんじゃないのか、アローディエンヌ」
「煩い死ねショーン!!」
「義兄さま暴言は止めてください!」
聞き慣れない女性の声がレッカ様かしら……。ああお姿が全く解らない!!義兄さまのせいで動けない!!
……そして王子様がたも仰ることが……いや、本当の事だけど!!
当たってますからって言いかけたわ。やべえわ。
ヒールのせいで近くなった義兄さまが良く見えるけど、……義兄さまがさっきまでイラッとしてた顔が、私が目線を合わせた途端に、にまっと崩れて……勝ち誇った笑みになった。悪そうと言うか悪者と言うか悪役だなあ。………何とかならないのかしら。
「ええとええとお、病める時も健やかなる時も……お互いをうぐっ、労わりがふっ愛し合う事をうわあああん!!愛し合って下さいいいいい!!」
「頑張ってオルガニック!!」
「おい、何だこのノリ……結婚式ってこーゆーのが普通なのか?理解出来ねーのは俺が田舎モンだからか?」
「安心してーレルミッドちゃんー。田舎でもー都会でもー全く普通じゃ無いわー」
……うーむ、神父様か牧師様役なのか分かんないけど、こんなに号泣するもんかしら。
こんなに号泣した人の前で誓いの言葉を述べるとか新しいし申し訳ないな……。
義兄さまの目線が痛いな。いい加減ガン見止めないかしら。
「お前に言われずとも誓うに決まってる。ねー!アローディエンヌう!」
「……あ、はい。誓います」
文言はコレで最後なのかしら……。もっと長々しい気もするのだけれど、省略してくださったのね、きっと。
……凄く泣かれているけど、まあ、オルガニックさんの心のご事情は私にはどうしようもないしな。殿方の矜持とかも分かんないし。
……サッサと言ってしまおう。拗れない内に。
しかし、コレで終わりなのかしら、お式。意外と短いけど、披露宴的な感じのお食事会が有ると聞いたわ。
それはいいんだけど、其処でドレス着替えなきゃならないんでしょう?それやだなあああああ。色違いモブに成るだけなのにー
。
「ねえねえ僕のお嫁さん花嫁さん!」
「……」
「アローディエンヌったらあああ!!」
煩っ!!耳に貼り付く勢いで喋らないで欲しいわ!!
「は!?近っ!!何ですか義兄さま」
「僕の奥さん」
「はあ?」
「僕の伴侶、僕の妻、僕だけの奥方さま、アローディエンヌう!!」
え。何なの?急にテンション高いな。
誓った途端、何を当たり前の事を言いだすのこの人は。
えーこれどう呼ぶのが正解なの?滅茶苦茶ワクワクした目で見られてるんだけど。
ご主人さま……は違うな。花婿さん?夫さまも違うな。旦那さま?……ええー!?
もう!!
「……何ですか、アレッキオさま」
「ふふふふう!!アローディエンヌが僕のこと名前で呼んでるう!」
顔が近寄ってきた。睫毛が当たりそうなんだけど!
ああ、もしかして誓いのキス的なやつが残ってた!?
うわー、視線を集めてる自覚が有るわー。ひしひしと感じるわ。
……この皆様の目の前で、誓いのキスか……。
背中にヒッシヒシ感じるわ。
今私、滅茶苦茶見世物になってる!!
あーうう、恥ずかしいわ!!
軽ーく終わらせてくんないかなあ。
薄い青い目が近すぎて目が離せなくて、眉間にシワがよって寄り目になりそう。余計に綺麗じゃ無くなるわ!
義兄さまは微笑んでる……んだけど、何だか悪いこと考えてそうに見えるわ。
「愛してるよおアローディエンヌ。君と僕の命が一緒に尽きるまでずうっとだよお」
義兄さまの赤い睫毛が伏せられて、おでこに赤い髪がぱさりと当たって……あー顔がいい。
いや、兎に角今更だけどグダグタなお式に集中を……軽いキス……軽く……。
軽く……軽くない!!
言いたかないけど今、朝なのよ!
重い!!
全く軽くない!!しかも死ぬ程長かったのだけれど!!
酸欠でバンバン義兄さまの背中を叩いていたのに、全く動じなかったんだけど!!
ああでもしょうがないの!?
だって、結婚式なんだから……って苦しいわ!!
こうして、私と義兄さまは、ユール公爵夫妻………いいえ、ただ一組の夫婦のアレッキオとアローディエンヌになったのでした……。
……陛下の許可証が出た時点で、もうとっくにそうだったらしいのだけれどね。
しかし……結婚か。
義兄さまと公的に結婚して夫婦なのか、いや、義兄さまは義姉さまでも有るから伴侶とかそういうのが正しいのか……。
って、人が浸ろうとしてるのに…………ドンドンバンバン煩いなああ!!
「ねえねえアローディエンヌう!やっぱり夜だと綺麗だねえ!」
そして花火は夜も上がっていたのよ……。朝より豪華にね!!何でや!!
いや、そりゃ勿論綺麗だったけどさあ……!!
大迷惑でしょうが!!
「アレッキオさまはやることがしつこいんですのよ!!」
「ひどおいアローディエンヌう!」
どんだけ上がってんの!?火事かと思うくらいに派手すぎるのよ!!
結婚式(1回目)で御座いました。
これにて本編2、終わりとさせて頂きます。長々しい話にお付き合い頂き有難う御座いました。
次は番外編ですね。2回目も後程。




