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サポートキャラに悪役令嬢の魅了は効かない  作者: 宇和マチカ
本編2 スキル剥がし編

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132/212

番外編そのじゅう 何時か白い日に追いかけて

お読み頂き有難う御座います。ご評価、ブクマ、拍手誠に有難う御座います。

明日ホワイトデーなので、書きました。

ただ、お察しの方もお出でかとは思いますが、普通のホワイトデーでは御座いません。

本編が殺伐しすぎなので当社比甘いです。長くなりましたね……。

時系列的にはスキルを奪われる前のアローディエンヌなので、本編2の13話の後位になりますね。

義兄さまとアローディエンヌとドリーの話です。


最近出来たお友達の、ドートリッシュは可愛らしい。

よく動く表情も、テンションも高いし羨ましい。後、正直に言うと身長と胸囲も凄く羨ましいわ。

今日も三つ編みをポニーテールにした薄紫色の髪が楽し気に揺れて、健康的な頬が赤らんでいる。

煌めく瞳もひなたの若さ溢れる元気なエネルギーの塊って感じよねえ。

私の常に死んだ目に無表情とは対極だわ……。

しかもコレで人妻だもんなあ。更になんと旦那様は年下美少年よ?

何て萌えるのかしら。ルーロ君のスペックも凄いもんねえ……。ああ萌える。


でも、馴れ初めを聞くと盛大に何故か引き攣った後、盛大に照れてしまうのだけれど……。

きっと何らかのイイ感じのエピソードが有るのよね。何時か聞きたいものだわ。

ああ、リアルな恋バナに飢えているわ……。恋バナ聞きたい。聞き耳でもいいから立てたい。

何故私は恋バナから遠いの。乙女ゲームのサポートキャラなのにさ……ゲーム終わったから元だけどさあ。


まあ、悲しんでも仕方ない。

今日はイベントについて話をしているのよね。

私が引き籠りで世間知らずだから、色々教えて貰っているのよね。

……私の世間知らずレベルって、最早何歳児くらいなのかしら。

自分でも嫌になるわね……。


「ええと!コレッデモン王国では、恋人や既婚者が愛する人に……」


ほ、ホワイトデー来たんじゃ無いの、これ!!

よ、漸くマトモに伝わっているイベントが!?

現代日本から普通にちゃんと輸入されたイベントが有るというの!?

良かった!!良かったわああああ!!



と、思って期待する心って、大概裏切られるのよね。

ええ、分かっていたじゃない。分かっていたのに……。


「追い掛け回されて、捕まったら秘密をひとつ白日の下に晒すというお祭りが有りますのよ!!きゃーーー!!」


はくじつ。白日の下に晒す……。

白い日と書いて、白日……確か、太陽とか真っ昼間って意味では……。いや、字面は確かに白い日だけれど……意味が、全く違うけど!?

それ、別の意味できゃーーー!?だけど……!?


「え、ちょっと、待ってくれるかしら。ドートリッシュ。質問…したいのだけれど」

「はいなんなりと、義妹姫様!!」


豊かな胸をばんと叩く姿は頼もしい……のだけれど、うん。

ドートリッシュって力強いわよね。


「追いかけ回されて秘密を暴露するの!?何なのそれは!!」

「白い日と言うお祭りですわ」

「白日の下に晒すから白い日!?」


何でだよ!!誰がそんな曲げてアレンジしたの!?

酷いオチになる予感しかしないんだけど!!

と言うかもうオチ付いてるの!?嫌だ、諦めたくないわ!!


「そうなんですの……。で、ルーロさまに持ち掛けたら」


そそそそうよ、ちゃんと聞かないと。

ドートリッシュは既婚者で、愛する旦那様が居るんだから。

名前と内容が酷いだけで、もしかしたらラブラブイベントなのかもしれないし!!

ええ、きっと!!多分……!?

ラブラブなエピソードが生まれたかも知れないし!!

そうよ、希望を持って!!



だけど、現実って無情ね。

ニコヤカに持ち掛けたドートリッシュに、ルーロ君は真っ直ぐに答えたそうだ。

NOの返事を、キッパリと……。

流石出来る伯爵様ルーロ君。奥様であるドートリッシュにも容赦が無いのね……。

いや、まあ…変に期待させないだけ、優しいわ……よね。ええ、きっと……でもこのガッカリ感は否めないわ。


「は?3月14日にドリーに追い回されろ?

ちゃんと体力の差を考えて俺にそれを言ってる?大体そんな祭りとやらにこじつけないで、聞きたいことが有るなら聞けばいいだろ」

「え!?聞きたいことを聞けば、余すところなく答えてくださるの!?」

「答えるとは言ってない」

「じゃじゃじゃあ……逆で!!」

「追い回して聞きたいことなんて特に無いし、聞きたいことが有るなら別の手段で言わせる」


と、仕事に戻って行ってしまったそうだ………。


「って帰りの時間を言い残して、けんもほろろに断られたんですのよおおおお!!」

「……そ、そう」


最後の科白が結構ドSに聞こえたのだけれど……。

ルーロ君、ちゃんと帰宅時間を告げるのは良い旦那さんね……。

机に突っ伏して嘆き悲しむドートリッシュの頭を、撫でる事しか出来なくて御免なさい……。


て言うか、アレだ。

バレンタインデーらしきイベントが無かったから、3月に恋人が絡むイベントが無いと聞いてみたら……思った以上の奇祭でさあ。

大体何だよ、恋人を追いかけ回すって……。


恋人……。今の所、私のそれに近いのって、義兄さまか。

義兄さまが全速力で追いかけて来るのか。

笑顔で……「待ってえアローディエンヌう」とか言いながら。



…………………。


…………。


……!?



怖あっ!!寒気した怖あっ!!

……駄目だ、義兄さまで想像したら無茶苦茶怖いな。

妄想するの止めとこう。


「それが転じて、最近では浮気性の恋人をとっ捕まえて吐かせる日になってると、国元の友人から聞いたことが有りますわ」


……更に怖い感じになってきたな。

いや、白日の下に晒すって時点で、罪とかそういう関係だから……いや、まあ、うん。

そういう方向性も有るのか……。


「へ、へえ……で、でも嘘を言ったりしたらどうなるの?」

「白い日限定で出店で売ってるお菓子を……」

「へえ!!そんなのが有るの?」


お菓子が出て来るって事は、何かこう、甘いイベントっぽいわね!!

浮気って時点で全くこう、甘さはすっかり消え失せてるけどまあいいわ!!

色々スルーすることも大事でしょ!多分!!


「軽い自白効果のあるクッキーとかマシュマロを与えられるそうですわよ!」

「出店で売ってる自白剤!?」

「1日で効果が切れるそうですけど、軽いとはいえ薬物に頼るのは怖いですわよね」


全く甘くなかったよ!!

そんな怖い物を限定とはいえ、出店で売ってる方が怖いんだけど其処を突っ込んで良いものなの!?

こう、この国では違法だけど、国が違えば合法みたいな?

ああ、……常識が分からない……。

思った以上に自白剤に恐怖とか、躊躇いとか、引っかかりが無くてビックリだわ、ドートリッシュ……。

コレッデモン王国の国民性なのかしら……。

物騒なのか、お国柄で流していいのか……。


「ルーロ君に浮気の心配は無いから、そっちはドートリッシュには関係無いわよね……」

「勿論ですわ!!でもでも!!私は一般的な方の、待ってえ、あはは捕まえてご覧~って追いかけっこやりたかったんですのよお……」

「え!?そっち!?そっちは一般的なの!?」


てっきり……浮気関係無くてもこう、血走った目で……闇夜に潜む相手を駆けずり回って追いかける、ガチの逃走劇を繰り広げる的なお祭りだとばかり……。そういうアンダーグラウンド的なのしか思い浮かばなかった……。


「え?そっちとはどう言う事ですの?」

「……こう、相手から全速力で路地裏とかを……必死に逃げ回る的な感じかと……」


と言うか、そういう雰囲気だと思ったからルーロ君も断ったんじゃないのかしら……。

違っても、ガチの逃走劇をしたくなかったんでしょうね。

そりゃあ、幾ら愛する人がどうとかいうイベントでも、秘密を暴露しない為に逃げ回るのなんて私も嫌だわ。


「そんな!!敵でもないのにそんな事しませんわ!!」

「敵だったらするのね……」

「愛しい方に無体を働く訳ないじゃないですか!!

……あああ!!言っちゃった!!恥ずかしいですわ!!」

「そ、そう……」


何だろうな。ルーロ君を想って顔を赤らめるドートリッシュは可愛らしいのだけれど。

恋バナを聞いている筈なのに、自白剤の単語が出てから全くこう、楽しい心持ちになれないというか。

何と言う……恋バナしたい心を折ってくるパワーワードなのかしら、自白剤って。


「……あの、ドートリッシュ。貴女がやりたいのはこう、砂浜とかでルーロ君と軽やかに追いかけっこがしたいだけなのよね?」


兎に角、ドートリッシュの希望は単なる追いかけっこなのよね。ラブラブな。

使う気は無いようだし、自白剤の存在は忘れよう。


「砂浜ですか?

コレッデモン王国の北の方に海は有るそうですけど、海も荒いし岩が多いらしいですわ。砂浜は無いと思いますわ」

「そうなの。じゃあ他の場所で?」


流石に……岩礁を駆けずり回るのは危険よね。普通に死にそうだわ。

良かった。そんなデッド・オア・アライブなお祭りじゃなくて。


「白い日の追いかけっこは、其処らの坂道が定石なんですわ!」

「……………」


砂浜でも結構重労働そうだと思ったのに、坂道だと!?

坂道をキャッキャウフフと追いかけっこ……。体力が根こそぎ持って行かれそうだな……。

岩礁でなくて良かったけど、坂道を走るって、普通にしんどくて笑顔とか無理でしょ?

それに、上りでも下りでもキャッキャウフフとかしてられないわ、危ないと思うし……。コレッデモン王国の人達って体力が有り過ぎないかしら。

うん……カルチャーショックが酷すぎるわね。

……ルーロ君が断ったのがとてもよく分かったわ。


「あ!もしよろしければ来年にでも、我が国に若様と体験しにいらっしゃいません!?」

「丁重にお断りさせて頂くわ……」


坂道を駆けずり回るイベントなんて、義兄さまみたいなチート相手に引き籠りの私がこなせるとはとても思えないし。

何より妄想だけでも怖いし。


「ええええ!?どうしてですの!?

若様と義妹姫様これ以上なく仲良しですから、愛を深める必要御無いとかですか!?」

「えええ……。別にこれ以上無く仲良しかどうかは……分からないけど、物理的に坂道を走って逃走するのはちょっと……」


義兄さまは兎も角、私では無様に坂道を転げ落ちる未来しか見えないんだよな。子供の時から全速力で走った経験も大して無いし、足腰に自信はない。

と言うかそんな……暴露できるような大した秘密も無い面白味の無い人生送ってるし……。


「逃走ではなく追いかけっこですわよ!!若様と!」

「ええ……義兄さまに追いかけられるってのがちょっと……」


只でさえあの人足音しないしな。

後ろから声掛けられるとヒイってなる時あんのよね。コレってやっぱり恐怖なのかしらね。

午前様してバッドエンド見まくったゲームのせいかしら……。


「義妹姫様は若様を追いかけたいんですのね!」

「いえ、別に義兄さまに限らず誰も追いかけたく無いわ」


人を追いかけ回す趣味無いし。

大体、本気で逃げる義兄さまを追いかけて捕獲できるとは……思えないしな。と言うか何の為に追いかけるのか、コレッデモン王国の国民でない私には意味もロマンも分からない。

それに、特に今義兄さまに聞きたいことも無いしね……。その内出て来るかもしれないけど。


「ええー、何でえ?僕を追いかけてくれないのお?」

「……義兄さま……」


……ほらね、足音しないしさあ!!神出鬼没過ぎるのよ。

背後にと言うか、肩に燃えるように真っ赤な髪が頭をこすりつけて来る。

くすぐったいを通り越して強いし痛いんですけど!!


「ちょっと痛いんですけど義兄さま!!」

「まあ、若様ご機嫌麗しゅう!!」

「ああ、いいよ。楽にして」


立ち上がって深すぎる礼をしようとしたドートリッシュを鷹揚に止める所は高位貴族っぽいわよね。まあ、本当に筆頭公爵なんだけどさ。

でもね、いや、何故かしらね。

何時の間に私の横に椅子が用意されてるの?そして当たり前のように座ってるのよ。

私とドートリッシュ、ふたり分の席しか無かったのに……。

ウチの使用人って忍者なの?気配無かったわよね!?

ホントどうなってるの!?どうやってセッティングしたのよ!!


「まあ、本当に若様と義妹姫様は仲良しさんですわね!!」

「義兄さま、ドートリッシュとお話中なんですけど」

「えー、僕邪魔?」

「ええ、結構」

「そっかあ、じゃあ控えめにい、大人しくしてるねえ?」


おい!!出ていくという選択肢は無いのか義兄さま!!

て言うか一人掛けの椅子にあるまじき距離なんだけど!!近いし!!

何でこんな近くに椅子を用意したの使用人!!ホント気付かれずにどうやって!?私ってそんなにボケっとしてる!?私の感覚ってそんなに鈍いの!?


「若様は追いかけられたい派なんですのね!」

「アローディエンヌなら追いかけても追いかけられても素敵だと思うね」

「そうですわよね!!愛する方なら追いかけても追いかけられても素敵ですわよね!!」


そうか、坂道を駆けずり回って人を追い回すなんて……全く素敵だと思えない光景だけど、このふたりの感性は合致しているらしいわ。

……趣味が合わないし、体力がついて行かないわね。


「疲れそうだから嫌ですわ」

「じゃあ、立ち止まってえ、腕を広げてアローディエンヌが抱き着いてくれるの待ってるう」

「それ、追いかけっこですら無いですわよね。後、抱き着くなんて一言も言ってないんですけど」


何を言ってるんだ義兄さまは。

追いかけっこの趣旨位守る気は無いのか。


「あ、背後からがいーい?ちょっとドキドキするねえ」

「まあ!何だかちょっと背徳的ですわね」

「……」


義兄さまとドートリッシュが盛り上がっている……。

おいてけぼりだけど、全く同意できないわ。

大体背後から捕まえられるのが良いなんて変わってるわ……。普通に怖いだろ。

いやまあ、ルーロ君とドートリッシュがやるなら滅茶苦茶アリか。

寧ろ滅茶苦茶見てられるわね、目の前で2時間位繰り広げてくれないかしら。


「あのねえ?僕はずうっとアローディエンヌを追いかけてるからあ、ちょっとは追いかけて欲しいなあ」

「……はあ?」

「勿論、アローディエンヌを追いかけるのは大好きだけどお、偶にはね?」


下から……態々私の顔を覗き込む必要ある?小首を傾げて言わないで欲しい。萌えるから。

まあ、私とて、この頃ちょっと……塩対応過ぎるかなと思わなくも無いんだけど……。

ああでも義兄さまを甘やかすと図に乗るしさあ!!



うう……キラキラした目が、辛い。



「……具体的に何をどう追いかけたらいいんですの?

私、あまり追いかけっことかしたことありませんわよ」


結論。……負けた。

ええ、結局義兄さまに強請られるとね……もうさあ、何て言うか!!

しょうがないじゃない!!普通にあざといし!!腹立つわ!!

後、適当な所で手を打っておかないと、後で更にベタベタされそうだし!!


「……」

「義兄さま?」


急に下を向いてしまった……。何だよ。やっぱ止めといた方がいいの?

そりゃそうよね。似合わないしね。

余分な体力を使わないで良かったけど、何だか更に腹立つわね。


「ホントに?」

「はあ?」

「ホントに……してくれるの!?」

「……近いんですが」


急に寄せて来た顔は……薄い青の目が更にキラキラしていて、頬がほんのり薔薇色だった。

ええ、非常に耽美だしカッコいいんだけど、この表情で寄ってくる義兄さまに……碌でもない思い出しか無いわ。

……ああ、今回も何だか、嫌な予感がする。


「まああああ!!やりましたわね若様!!」

「やったよドートリッシュ夫人!!」

「は?何が?」


いや、だからどういう事?

何処かそんなキャッキャキャッキャと盛り上がる所が有った?

ドートリッシュが、拳を突き上げてテンション上げるようなことなの?

義兄さまとドートリッシュが仲良さそうなの、可愛いけどさ。


「じゃあねえじゃあねえ!!やって欲しい事が辞書5冊分くらいに纏めたんだけど、今持ってくるから取り敢えず読んでくれるう!?」

「はあ!?」


何の話よ!?大体辞書5冊分って何よ!?


「多っ!!どういう事です!?」

「子供の頃から溜め込んで色々考えてたら多くなっちゃったんだあ。ふふふう」


いや、照れて笑っても非常識な発言は聞き逃せないからね!?

子供の頃から溜め込んで色々!?

どういう事だよ!!只の追いかけっこの話よね!?

何を勝手にスケールアップさせてんのよ!?

誰が義兄さまのリクエストを聞きまくるなんて話になってんの!?


「ちょっと待ってください!!追いかけるって言っただけで、義兄さまの要望を全て飲むとは言ってない!!」

「えー?似たようなもんじゃなあいい。やってよおアローディエンヌう」

「似てないしふざけないで貰えます?!」

「ええーちょっとだけえ、欲張っただけじゃなあい。いずれやって貰おうと思ってるだけだよお」

「知りませんわよそんなことは!!」

「…ね?だからあ、読むだけ読んでよお!」


手を握ってニッコリ顔を寄せてきたし!!

ドートリッシュの前でキスでもされかねないんだけど!!


「何だか嫌な予感がしますから嫌ですわ!!」

「えええええええ!?」

「ええええ!?義妹姫様、何故急にご機嫌が悪くなったんですの!?」

「……義妹姫様と若様に、何のおかしなことを吹き込んだんだ、ドリー」


ごりっ、と音がした。と思ったら、聞き覚えのある声が……。

……男性にしては高めの声なのに、重く響くわね………。


「る、るーろ、さま……お、お帰りなさい?」

「此処は若様の館で、俺達の家じゃ無いから『お帰り』は不適切。やり直し」

「痛い痛い痛いわあああ!!」


……ルーロ君、相変わらず神出鬼没ね。

ドートリッシュの背後に現れた彼は、気配が全く無かった……。義兄さまと言い、ルーロ君と言い……どうしてこう気配が無いの?

そして、あのタブレット端末のような便利石板……すっかりドートリッシュを小突くアイテムになっているわね。

義兄さまが驚いて無いってことは、来ることが解ってたみたい。


「ルーロ君、そろそろ止めてあげて……」

「若様、義妹姫様只今参りました。妻を引き取って戻ります」

「ああ、そう?」

「ええええ!?ちょっとルーロさま!!私特に何もしてないわよ!?国のお祭りについてお話してただけ!!」

「あの魔窟の祭りの話ってだけで碌でも無いんだよ」


ルーロ君は余程コレッデモン王国が嫌いなのね………。魔窟って……。


「ルーロ、ドートリッシュ夫人からは有意義な話を聞いたよ。君も捕まえられてあげたら?」

「俺には臣下として要らん事を吹き込む者は小突く責務が有ります。妻でも同様です」

「酷いわルーロさま!!小突かなくたっていいじゃない!!」

「そうよルーロ君、ドートリッシュは悪く無いわ!!義兄さまが調子に乗らなければいいだけで」


私の制止に、ルーロ君が澄んだ黄色の目を私と義兄さまに向けた。

小突く手を止めてあげて欲しいんだけど。


「……若様が、調子に乗られたんですか?」

「まあ、ちょっとだけ?」

「堂々と嘘つかないでほしいんですけど!!物凄く沢山調子に乗ってるでしょうが!!」

「そうですか。お強請りも過ぎると義妹姫様の御勘気を買いますので……恙無き日をお過ごしください」

「ちょっとルーロさま!?い、義妹姫様ご、御機嫌ようーーーー!!!」


そして、ルーロ君は……見惚れるような最敬礼をして、ドートリッシュを連れ去ってしまった。

あのワープっぽい魔法、何度見ても凄いわね……。

私にも使えない……だろうな。桶の水をグルグルする程度では使える気配すらない。

あ、…しまった。


「ドートリッシュに返事をし損ねましたわ」

「そうだねえ」

「……義兄さま!!」

「なあに?」


何で抱き上げる必要あるのよ!?急に足元がおぼつかないのビックリするし、しんどいんだけど!!

人の抗議も聞かず、義兄さまは私を長椅子の方へ運んで、膝の上に乗せた。

そしてグリグリ肩に頭を寄せて来るし!!ちょ、苦しいんだけど!!


「捕まえたあ、アローディエンヌう」

「はあ!?」

「僕を捕まえに来るのはあ、君がその気になったらでいいからねえ?僕はずうっと待ってるからあ」

「ええ……?」


捕まえるも何も、今現在進行形で膝に乗せられてるんだけど。


「可愛いアローディエンヌう、僕はずうっと君から離れないからあ、君もずうっと一緒だよお」

「取り敢えず追いかけっこはしません流れでいいんですのね」

「えー?ちえー。何が嫌なのお?」

「街中でバカップルみたいなことをするのが嫌です」

「その時期のコレッデモン王国はそんなのばっかだから目立たないらしいよ?」

「何気に何で詳しいんですの!?」

「来年あたり行ってみようかなあと思ってえ。下見がてら」

「はあ!?何の下見ですのよ!?」

「君を色んな所へ連れて行って、何処に落ち着くか相談しようねえ」

「……別に此処でいいんですけど」

「どうして?ひろおい素敵な景色を僕と見たくない?」


……広い世界だろうが素敵だろうがどうだろうが、義兄さまが一緒に居るんなら大して変わらん気がするなあ。

まあ、居ないとかなり困るけどさ……。


「……まあ、考えときますわ」

「そうしてねえ!!じゃあ今日はあ、何をおやつに食べようか?」

「と言うかいい歳しておやつって……」

「ええー、アローディエンヌと過ごせる時は、三食とおやつを一緒に過ごさないとやだあ。ベタベタするんだもん!」


……義兄さまは何とかならないのかしら。

流される私が悪いのかしら。今日も目が死ぬ気がするわね。


コレッデモン王国はドゥッカーノ王国の北の方に位置し、坂道が多いです。

足の速い恋人に追いかけ回されるのはさぞ恐怖かと思いますが、浮気をしたら更に怖い目に遭うイベントです。

ので、浮気の心配の無いカップルの話でした(違)

次は本編の予定です。ニック視点から変わる予定ですね。どうしようかな。

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登場人物紹介
矢鱈多くなって来たので、確認にどうぞ。とてもネタバレ気味です。
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