62.まだ話も出来てないんだけど……
お読み頂き有難う御座います。拍手、誤字報告誠に有難う御座います。
おおお……有難くも再びレビューを頂いてしまいました……。お、畏れ多い……。
感動と喜びを最大限に感じております!!語彙が無い!!嬉しいいいいい!!
ニヤニヤ浮かれて過ごせそうです!!有難う御座います!!
暴力的な表現が御座います。苦手な方はご注意を。
フォーナが見つかりましたが、蝙蝠ウサギのぬいぐるみの中の人のようでした。
「ふみみいい!!」
何度見ても、ぬいぐるみが動いて鳴いている……。
ええ、此処は現実よね。
ちょっとファンタジーが過ぎてホラーが混じってる気がしないでもない現実なのよ。
そういや、お腹を押したら鳴くぬいぐるみって、前世で有ったわよね……。
流石に前世の三十路以下略の歳だと持って無い筈。ええ、キャラグッズには無かった筈……多分。
……義兄さまのが出てたら買ってたかもしれないな。喋るタイプなら凄く怖い科白が内蔵されてそうよね。うっわ出てたら買ってそう……。
っていや、そんな有ったかどうかも分からない事、どうでもいいわ!!
問題はこの蝙蝠ウサギ(紺色リボン)のぬいぐるみよ。
そして、この子はリアル『中の人が入っている』……のよね。
若干色々思わなくもないが、私は腕の中のぬいぐるみを軽く抱き寄せた。躊躇してたらブライトニアが棄てるかも知れないしなあ。
流石に壊さないと信じたい……。ええ、信じたいわ。信じてるわよブライトニア!!
ええと、可愛い鳴き声なのね、本来の蝙蝠ウサギって。
……いえ、まあ、ぬいぐるみなのだけれど。
しかもバタバタ動く、若干ホラー……いやファンタジーテイスト……。
見た目が可愛いから良かったけど。
て言うか、ぬいぐるみなのに蝙蝠ウサギの鳴き声の出るメカニズム……。
そして、中身がフォーナ……。リアルに中の人が居るぬいぐるみに出会うとは……物凄い体験よね。
フォーナ……。……とうとうマスコットキャラ枠まで手を出してしまったのね、属性の多い『4代目主人公』は……。もしブライトニアが『4代目悪役令嬢』なら姉妹でマスコットキャラ枠か。
新しい……。
現実が色々有り過ぎて、そんな凄くどうでもいい事に発想が飛んでしまうわ。
「それにしても、このぬいぐるみ、誰の趣味なのかしらね」
「恐らくティミーかと……思います」
「ええ!?ティム王子!?」
「ふみみみみ、ふふふみ……」
「ティミーちゃんは器用ですからってそういう問題なの?」
「え、コレ王子の手作りなの……!?凄い量ね……」
この世界に機械で動く工場なんか無いでしょうし、既製品も誰かのお手製なのは当たり前なのよね。それは分かるわ。
でも……30個位もこんな凄いクオリティのを量産出来るティム王子って……ぬいぐるみ職人か何かなのかしら。
下世話な話だけど、凄くお高く売ってそうな出来よね。
高笑いしながら売ってても、余裕でお高く売れそうなクオリティだわ。
王子様なのに……滅茶苦茶女子力高いんだな……。私なんか公爵令嬢として育ってる割に、針仕事は全く自信ないわよ……。
いや、これまでにお会いした王族及び皇族が……あんまり私の予想とは大違い過ぎるわね。
私の想像と言うか妄想が貧相なだけよね。それに、イメージで物事を見るのは良くないわよね……。
いやまあ、ティム王子から危害を加えられている側だから悪いイメージを抱いた方が良いのかしら……この場合は。分からんわね。
「それで、これからどうしましょうか……」
そうだった、レギ様のお言葉で我に返った!!
ぬいぐるみに想いを馳せてボケッとしてる場合じゃないわよ!!
此処、敵地!よね!?た、多分敵地ど真ん中なのよね!!
「ほ、他の扉を開けて中を見ましょうか?何か役立つものが手に入るかもしれませんわ」
沢山あった扉の一発目でフォーナを見つけたんだから、滅茶苦茶運が良かったのよね。
あ、でも逆に何も見つからないか、罠の可能性も有るってことだな。
落とし穴とかトゲだらけの床とかトラバサミとか……有るのかしら。
だったら怖いな。うーん、普通に死んじゃうわね……。流石に此処まで来て罠に引っ掛かって死ぬのは嫌だわ……。
いやでもモブだからなあ。こういう所でフェードアウトする可能性は大だな……。流れ弾でウッカリ死にそうなシーンに繋がりかねない。気を付けないといけないわね。
「ふみ!ふみみみ!!」
「はわあ危険ですよ!?ですって?此処自体が危険地帯でしょ!!下らないこと言うんじゃないわ、駄姉!」
「いや……フォーナも見つけたことだし、此処は少し慎重に調べた方がいいと思うのだけれど」
「そう?駄姉が見つかったんだし他の部屋を吹っ飛ばしたら良いじゃない」
「ふぅみいいいい!?」
「生き埋めになりますよフィオール姉さん!!」
「ふん、あたくしとアロンは無事に決まってるじゃない」
「いやいやいやいや!!!止めて頂戴!!皆無事で帰らなきゃいけないでしょ!!」
「あら、別に皆揃ってもあたくし達、無事に帰る家なんか無くてよ?」
「ええ!?」
何それ!?ど、どう言う事!?
あっ!!そっか!!レギ様はフィルル皇女を裏切ったから此処のお城には帰れないのか!!
ブライトニアもティム王子から逃げてる立場だし……。
それにフォーナも無事に元の神殿に戻れるとは限らない!!
もしかしたら抜けてても皇族関係者として狙われている可能性も有る!!
あああ私の馬鹿!!失言だった!!
「……浅慮でしたわ、申し訳御座いませんレギ様。フォーナ、御免なさい」
「ふ、ふみいい……」
「い、いえ……」
「何を凹んでいるのアロン。今は無くても奪い取るまでじゃないの」
「は?」
奪い取る?何を?
え、どういう事?
「手始めに、喚く駄姉を血祭りにあげて此処の天辺にでも逆さ吊りにしてから、ティムを絞め上げてそこの駄姉とあの身の程知らずを入れ替えて、アロンを元に戻すのよ」
「……そ、そう……。あ、有難う……?」
発想がやたら物騒だけど……と、取り敢えず最後まで聞くか。
どんな経路でも……あんまり穏やかになりそうにはないけれど……もしかしたらってことも有るし。
ああ、でも義兄さまが地上で何してるか分からないわよね……。
……望み薄か。
取り敢えず、義兄さまがやり過ぎて味方に誰も負傷者がいらっしゃらない事を祈ろう。
普通に被弾させそうで……ああもう!!
「それで王宮を一掃してやるのよ」
「……いや、フィオール姉さん、流石に父様が居ますから」
「あんなエロダメ親父はとっとと叩き出してやるわ」
皇帝陛下をエロダメ親父って……。
いや、まあ……何人お抱え何だか知らないけど、側室が多くていらっしゃるだろうからエロくは有るんだろうけど……。
そう言えば、コレだけ子供達がモメているのに皇帝陛下の存在が……全く無いな。
いや、まあ私の知らない所で何らかの手を打っているのかも知れないんだけど。
それとも、フィルル皇女の手に落ちているか、味方になっている?
「だから手っ取り早く暴れたらどれか出て来るでしょ」
「そ、そうかしら……?」
「ふふみみいい」
「フィルル姉さまは気が短いから、アリかも知れないですねって?駄姉にしちゃいい事言うじゃない。やっとあたくしの偉大な考えを理解し始めたのね。遅いわ」
「そんな、フォーナ姉さん迄……。まだそんなに過激派じゃないと思っていたのに」
「フォーナも暴れるのが賛成なの?」
「ふみ、ふみみみ!!ふみみふふふふみみいいい!!」
「此処は戦い時だと思います!!アロンさん!!ですってよ。ふん、まあ当然ね」
……案外フォーナもポヤポヤしてるからか、血の気が多い方向に流されやすいのよね……。今までを鑑みるに……。
平和主義なのかと思ってたけど、そういや最初に教えてくれた……えっと、何だっけ。正義の何とかの神様の宗教の教義も結構変な物騒さだったわよね。
「じゃあ全部吹っ飛ばして」
「全部は駄目ですよフィオール姉さん!!下手したら上階が落ちてきますから!!」
「レギ様の仰る通りよブライトニア!上階の床が抜けると思うから1部屋だけにしましょう!?」
1部屋でも破壊するのはどうかと思うけど!!
「そんなしみったれてる規模で………」
「全然しみったれて無いわ!!天井崩落よりいいわよ!!安全に行きましょうブライトニア!!」
「まあアロンがそこまで言うならいいわ、そこの棺桶の影にでも居なさい、アロン」
「わ、分かったわ……。レギ様も此方に」
「は、はい」
ぬいぐるみのフォーナが吹っ飛ばされないように抱え込み、レギ様と棺桶の影に隠れた。
そして眉間に皺を寄せても可愛いブライトニアは、予備動作無しで壁を……蹴った。
また大股で上段蹴り……!!
壁の向こうに誰か居たら見えるっての!!
そうして間もなくドゴオオオオオオンって音が2回響いて……もうもうと埃が舞ったかと思ったら即空気がクリアになった。
早!!
……これもブライトニアの力?
いや、待てよ。
2回響いたわよね。同じような音が。
そして……漫画みたいな大穴が連続で空いていて……2つ向うの部屋が見えた。
2つ……。
おい!!
1つでいいって言ったのに!!
「ふん、脆い壁ね!!」
だから、ドヤ顔で威張るんじゃない!!
「ふ、ふみ……」
「いや、何で2つ部屋を壊したの!?」
「加減が出来なかったのよ!!」
この子、ドヤ顔がデフォルトなのかって位反省の色が無いな!!
「……ブライトニア。間違えたら反省しましょう?」
「む……」
「ね、間違うのは誰にでもあるでしょう?でも反省しないといけないわ。後場合によっては謝らないと」
「あたくし謝ることくらい出来るわ!!2つ壊してごめんなさいアロン!!」
「ええと私に謝るの……?」
「そうよ、謝ってやってもいいのはアロンしか居ないわ!!」
「……いや、そういう感じのノリを求めていたんじゃないのだけれど……」
「ふ、ふみみう……」
「でもフィオール姉さんが謝るの初めて見ました……。凄いですね、アローディエンヌさん……」
「撫でなさいアロン!!」
……レギ様の感想もおかしいし……。
フォーナはアワアワしてる雰囲気だし、ブライトニアはまたぐりぐり頭押し付けて来るし……。
何だ、この空間は……。特に私の状況。
はた目にはぬいぐるみ抱いて、美少女撫でて、美少年にうるうる見つめられてって……何してんの美形侍らして犯罪なの?変態のモブなの?って言われてもおかしくない状況だな。どうしよう。
私が美少女か美女だったら「なーんだ」って力押しで納得できるような状況だけれど……私自身も納得できるのに。
ああ、この頃……スキルの影響なのか、顔がよく引き攣るわねえ……。
顔面の筋肉が退化か死んでんのかって位、前は動かなかったからこれ迄の人生分動かしてるわ。
……何だか向こうの方からどたどた聞こえるわね。
誰か来たのかしら。
この迷いのない感じ……敵っぽいわね。
義兄さまと合流して……って訳には行かないか。
それに今合流したら激怒しそうね、今の状況……。レギ様が危ない。
もう怒ってないし疚しくも無いんだけど、独占欲の塊だしなあ。まあ、義兄さまは子供みたいな理由でも怒るけど……。
「誰だ!!誰がこのボクの城を壊したのだ!!不届き者めが!!成敗してくれる!!」
「フィルル皇女!!先行なさってはなりません!!」
「煩い煩い!!ボクに指図するなこの愚か者が!!」
向うの方から大声と言うか、金切り声が聞こえるわ。
凄く聞き覚えのある声だわ……。ロージアの声だ……。只でさえ苛々ッとするのにこの喚き方………。更に苛つき度がパワーアップするわね。混ぜたら危険ってやつだわ。
多分御付きの人っぽい声が教えてくれる通り、フィルル皇女が来たのね……。
……話通じ無さそうだなあ。いや、話をする必要が有るのかも分からないけど。
レギ様も眉を顰めているし。
「ふふふふふ、態々粉々になりに来たのね、喚き駄姉……」
その笑い方……滅茶苦茶悪役っぽいわ、ブライトニア。
脚を振り回さないで欲しいのだけれど。見えるってば!!
「ふ、ふみみ……」
「粉々は止めましょう、ブライトニア……」
「そ、そうですよフィオール姉さん。フィルル・ナコには利用価値が有りますし」
「煩いわね愚弟!!さっさとアロンを守って避難なさい!!」
「ブライトニア……無闇な殺生は止めましょうね」
「分かってるわよ!!全くアロンは甘いわね!!」
甘い……かしら。と言うか殺意に満ちすぎだと思うのよね。
そして私とぬいぐるみのフォーナとレギ様は……また轟音と爆音を棺桶の後ろで聞くことになった。
……この棺桶、丈夫よね。
風で私のヴェールの端とフォーナのぬいぐるみの垂れ耳が靡いているわ……。
凡庸な感想しか湧いて来ないけど、本当に凄い風よね……。
また埃が高速で収まったから、恐る恐る覗くと……死屍累々って言うか…5人位人が倒れているわ。
外傷は無いようね……。
流石にリアル凄惨な現場はちょっと……取り乱さない自信が無いな。スキル欠けてるし。
あ、このド派手な黄緑の林檎みたいな色合いの髪は……フィルル皇女、よね。
……意外と髪色以外は普通の人に見えるな。
本当に特徴がそんなに無い……モブ面の私に言われたく無いでしょうけど。
しかし、見事に気絶してるな……。何にも聞けてないし……。いや、マトモに話が出来るタイプには見えないけどさ。と言う事はコレで良かったの?うーん……。
「死んでないわよね?」
「頭を音波で思いっきり揺さぶったら、勝手にぶっ倒れただけよ」
それ、脳震盪ってやつじゃない……?凄いことするな……。
そりゃ頭シェイクされたらぶっ倒れるわよね。
倒れた際に……打ちどころとか大丈夫なのかしら。
いいのか?死なないの?
「アロン、コレ憎らしいでしょ。踏んだらいいわよ」
「いや……人を踏む趣味は無いのだけれど」
「ふみいいい」
そりゃ…フィルル皇女は、確かに本当に滅茶苦茶腹立つけど、身動き取れない人を痛めつける趣味は無いわよ!!
悪役令嬢の義妹だけど、単なるモブだからバイオレンスは未経験なのよ。経験したい分野じゃないわよ!!
コレからも一応する気は無いし!!あっ、でもロージアはビンタしたいけど!!
「一気に片付けるなら喉だし、長く痛め付けたいなら関節か掌と足の甲よ」
「いや、だから踏まないわよ!!」
怖えわ!!何を教えてくるんだこの子は!!
躊躇無く膝を踏むんじゃない!!
………うわ、バキッて変な音がしたし……!!……拷問も躊躇わないタイプが此処にもいた!!
いや、意識無いから拷問……拷問で虐待よね……。
よ、容赦無い……。
ああああ他の人の体からも同じ音が!!
「ほふみいいい……」
「ちょっとブライトニア……」
「縛るものが無いなら手っ取り早くてよ」
「………フィオール姉さんだけは敵に回してはいけないですね」
レギ様のコメントが……何て言うか、重いわ。
さっきからのガスガス蹴られてたのだって、アレでも手加減してたのね、ブライトニア……。
嫌な事実を知ってしまった……。
「ふん、まだちょっとやり足りないけど……」
「ティム王子を探しに行きましょう!?」
怖えな!!これ以上何をする気なのよ!!
出て来て直ぐに、嫌味な会話も攻撃もせずにぶっ倒れる親切な敵の親玉系皇女フィルルです。
悪役の割に影が薄いですが、悪役令嬢のせいですね。




