42.与り知らなかった忠誠の行き先
明けましておめでとうございます。新年最初の更新となります。
お読み頂き有難うございます。ご評価、拍手、ブクマと大変有難うございます。ニヤニヤしております。
久々に神官商人にして伯爵様ルーロが出てきましたね。悪役令嬢義兄さま、アローディエンヌの3人での会話です。初めてだなこの組み合わせ。
それにしても……どうしたのかしらね、ルーロ君。
会えるのは眼福だし、彼は真面目でマトモだから癒されるしとても嬉しいのだけれど。
あ、今日はひとりだわ。ドートリッシュは一緒じゃないのね。
はっ、まさか…。ドートリッシュにもスキル剥がしの魔の手が!?
そ、それとも考えたくは無いけれど、ドートリッシュの故郷のコレッデモン王国の手が…悪い方に伸びているとか!?
マデル様はもう大丈夫、みたいな事を仰っていたけれど…、国の事情なんてコロコロ変わりそうなもんだし、どうしよう…。
「まさかドートリッシュに何か…!?大丈夫なの!?」
「いえ?ドリーは今朝も近所迷惑な位に煩…元気でした。
妻をお気遣い頂きありがとうございます、義妹姫様」
「だけど、ドートリッシュを盾にサジュ様は脅されていらしたのよね!?」
「ああ、アレですか?よくご存じで」
おお、サラッとしているわ、拍子抜けするくらい動じていないのね…。
……全然気にしてないっぽいわ…。本当に。結構なことだと思うのだけれど…。貴族ってやっぱそういうの普通なのかしら。
貴族の癖に情報惰弱でヘタレな私には分からんけどな。
もうちょっと何とかすべきよねえ。もっと貴族同士の交流とか…すべきなんだろうけど、義兄さまがしないだろうなあ…。
レルミッド様とサジュ様招き入れただけでも進歩か…ああ、喜びレベル本当に低いけど。
「マデル・リメイ様が自らネタバラシしたからね」
「え?舌切りあ…令嬢。…珍しいですね、あのあ…令嬢がネタバラシをしたんですね」
「目当てが見つかったみたいだから、点数稼ぎ」
「……あのあ…方に?へえ、絡まれた方はお気の毒な事ですね」
「絡まれたのはオーフェン・バルトロイズだよ」
「…………………」
義兄さまの答えを聞いて滅茶苦茶固まっているわ、ルーロ君。
他人のショックに不謹慎だけど、目を見開いていて可愛いわね…。
今まで冷静だった分、年相応に見えるわ。
…って萌えてる場合じゃないな、尋常じゃ無く顔青いわね…。
大丈夫かしら。ドートリッシュの件を聞いた時より動揺が酷いわね。
「だ、大丈夫かしら、ルーロ君。そんなに衝撃的だったのかしら…」
「ええ、まあ…失礼致しました。
あの悪魔のひとりと…え、縁戚……は、考えただけでも滅茶苦茶嫌悪感が」
あ、悪魔……。
さっきからチラチラあ、って言ってるのって、悪魔って言いたかったのか…。
しかし何でだ。お国の高位貴族なのよね?
いやそりゃまあ、高位貴族だからと言って無闇矢鱈に仲良くしてる訳じゃ無いでしょうけど。そんなに人間関係単純じゃ無いわよね。
しかし…嫌悪感が凄いわ、ルーロ君。
本当に嫌そうね、本当に合わないのか……。
二人共こんなにいい人なのに。
いやまあ私の与り知らない所で何か有ったんでしょうけどね。
「もしかしてルーロ君、マデル様と滅茶苦茶仲悪いのかしら?」
「畏れながら、義妹姫様。俺は『北の魔王と悪魔の四騎士』に忠誠は誓っていないので。俺の主は若様と、伴侶である義妹姫様です」
北の魔王と悪魔の四騎士ィ!?
悪魔の四騎士は知ってるけど、それもあんな美しい方々にマジでどうかしてると思ったけど、北の魔王!?
またスッゴイまた厨二病なタイトルが来たな。古いRPGかよ。
あ、と言うか今回は日本昔話じゃないのね。
…いや、まあ日本で昔のRPGなら日本昔話のジャンルに入るのかしら…?いや分からないけど。
そして、忠誠は義兄さまと私に?
え?何で?嬉しいけれど、困惑が滅茶苦茶先に突っ走ったわよ。
義兄さまは兎も角モブの私にだと?何で?
…初めて聞いたけど、何て勿体無い上に申し訳無いのかしら。
止めといた方がいいと思うのだけれど。
「え?何で私……。そ、それに私、義兄さまの伴侶じゃ無いわよ?…義兄さまは兎も角、私なんて止めておいた方がいいと思うわ」
「とんでもない、御心優しい義妹姫様にお仕え出来て望外なる喜びです」
「わあ、アローディエンヌが照れてるう、可愛いー」
「ちょ、義兄さま煩いです!」
余計引っ付かないで義兄さま!!
だ、大体結婚してなかったし、伴侶じゃ無いんでしょ!!
くっそう、何なのよこのふわっとした雰囲気ぃ!!背中がゾワゾワするわ!!欠けたスキルのせい!?
ニマニマしないで義兄さまにルーロ君、見てて可愛いけど恥ずかしいわ!!
こんな透けたヴェールじゃ無くて、毛布でも被っときたいわ!!分厚いのね!!
ああもう……表情で感情を読み取られるのって、こんなんだっけ!?
こんな時に思い出すべき前世の記憶が無い!!役立たないわ!!
取り敢えず…本来の目的を聞こう。
お暇だからウチに寄って、お昼一緒に食べに来たのかしら。
そういう和やかな立ち寄りなら大歓迎だけれど。
「ごほん。バルトロイズ様とマデル様の件は滅茶苦茶気になるけれど…ルーロ君は今日は遊びにいらしたの?お食事をご一緒に如何?」
「いえ、これをお届けに参りました。それと、若様にご報告を」
コト、と机に置かれたのは…あれ、どっかで見た事有る腕輪だな。
って……私の腕に嵌まってるのとソックリ…。
え、コレってルーロ君が発注してくれてたの…?義兄さま何やらせてんのよ!
「はい、手を出してえアローディエンヌ」
「は?」
ボケっとしている間に義兄さまに左手を取られて、あれだけ脱衣所で格闘したと言うのに…パカッと簡単に外れた。
そして、呆気に取られている間に…またパカッと嵌められたのだった…。
あんまりしゃりんしゃりん言わない腕輪…新しいのが。
ちょ、えええ!?何でまた嵌められてんの!?
「ちょ、義兄さま!?」
「うん、壊れたのより新しい方がいいね」
「そうですね。意匠は一緒ですが」
意匠は一緒?え、デザインは…同じでも何が違うの!?何が!?何なの!?
…まさか何かまた変な機能が追加されてるの?でも、さっき嵌まってた腕輪の機能が分かってる訳じゃ無かったけれど!!
「前のと何が違うのですの!?」
「うーん、色々?」
「色々ですね」
こて、と首を傾げた義兄さまと微笑むルーロ君…。
……息がピッタリね。仲良しね。
そして義兄さまの手が全く外れないしイラッとするわ。
教える気全然無いでしょ!!ムカつくけど、ルーロ君の前だから言い出しにくいな!!
「うん、新しいの付けたきみも可愛いねえ、アローディエンヌ」
「いやだから何時まで掴んでますの義兄さま。手を離して下さい」
「グギギ」
人前なのに、何時までどさくさに繋いでんだよ…!!
ブンブン振ったけど、びくともしないし!!楽しそうにすんな!!
一緒に振らないで!!子供か!!
「それで、あっちの様子は?」
「思いの外にくだらない理由でした」
「へえ。どんなの?」
「何の事ですの?」
「あのねえ、喚き蝙蝠の姉の屑を捕まえたんだよね」
「……は?え?喚き蝙蝠の姉のクズ?」
え、誰だそりゃ……。この頃出会った人も多ければ、変な渾名も多すぎて混乱するんだけど。
ええと、喚き蝙蝠って…ええと、あのロージアボイスの三下感溢れる…フォーナのお姉さんの1人だっけ。
確か、フィルル皇女…だったっけ。黄緑の林檎みたいな髪の色の…。
あんなド派手な髪色なのに、ロージアの声での三下感溢れる喚き声がインパクト強すぎて見た目の印象が薄いな。
そのお姉さん…ええと、亡くなられて3人中1人しか居ない…第一皇女だっけ?
名前何だっけなあ。私が言うなって言われるかもしれないんだけど、名前長かった気がするわ。
あの皇族、全員の名前知らないけれど、兄弟中にファだかフィだか付いててややこしいんだよなあ。
名付け親が厨二病なのかしらね…。
フォーナは養子だろうけど、偶然なんだろうか。それとも他に名前が有ったりするのかしら?
あー、4作目やっときたかったなあ。…今までの経験からして役に立ったかどうかは不明だけど。少なくとも人間関係は分かるだろうし……。
いやでもこの3作目に当たるこの国でも人間関係が全く違ったしなあ。
…いやそれでもやっときたかった。
特に普通であろうオルガニックさんを拝みたかった。
いや、未だ現実に会って無いから見た目も知らないけど。
「皇女ファーレン・カリメラ・ソーレミタイナです」
「あ、え、フォーナのお姉さまのよね。見つかったの?」
「うん、とっ捕まえたんだあ」
「え……義兄さまが?」
え?皇女を?
何で義兄さまが捕まえてんの?何時よ。
聞いてねえんですけど。
「うん?そおだよお」
「何時ですの!?そんな暇有ったんですの!?」
と言うか昨日は私にへばりつかれてて、一昨日もへばりつかれてたわよね!?
……ホント何時の間に!?
え!?と言うか全くそんな話出て無かったけど!?
昨日も一昨日も一緒に居たと言うのに、全然その話出て無かったんですけど!?
「えへへえ、褒められちゃったあ」
「いや褒めてませんし、何にもお話聞いてませんけど!?」
「今聞いたじゃない。それに、きみは傷ついてたんだから時間置かないとねえ。
アローディエンヌを傷つけた屑の姉の話なんか聞いたら、衝撃受けて倒れるでしょ?」
「いえ全然。倒れる訳無いでしょう。サッサとお話して頂きたかったですわ」
勝手に繊細設定にしないで欲しい。今まで話聞いたくらいで倒れて無いだろうが。
寧ろ気になってしょうがないんだけど!!
と言うか何か動いてるなら報告してよ!!
腹立たしいけど未だ引き籠りモブなんだから、未だに世間にも疎すぎるし、察しも悪いから言われないと気付かないのよ!!
「ええー。折角ふたりっきりだったのにい。アローディエンヌったらあ」
「若様は義妹姫様の御心をお考えになられて、ご報告を遅れさせられたんです、義妹姫様」
「…義兄さまは義兄さまの心の儘に動いてるだけだから、庇わなくていいのよルーロ君」
…その理由もそりゃ有るでしょうけど僅かでしょうしね。
どうせ話すの嫌だったんでしょう…私の意識が皇女に向くのがイラッとするから。
……嫌だわ、こんな自意識過剰野郎みたいな考え方…。
義兄さまは私の事しか考えて無いのーみたいなお花畑思考…。
凄くウザいけど…多分間違って無いわ…。
しかしルーロ君、こんな茶番にお付き合い頂いて申し訳なさ過ぎるし、心が広すぎる。
いっそのこと寧ろふざけんなバカップルかよと罵ってくれていいと思うわ。
義兄さまだけだけどな!バカップルの仕様の脳内は!!
私は違うのよ!!常識的…は無理かもしれないけど、理性的に生きたいの!!
「酷おいアローディエンヌう!何時如何なる時もきみの事しか真面目に考えて無いのにい!」
「いや普通に何時如何なる時も他の事も真面目に考えてください、義兄さま。
もういいですわルーロ君にお話を聞きます」
「えー、まあいいけどお」
……やけにアッサリ引き下がるな……。
因みに未だ手は離されていない。撫でられたままよ…。離れねえし。
…もう疲れたからいいけどさ、手撫でさせておけば今の所大人しいし。
若干後で何か…嫌な予感がするけど、取り敢えずルーロ君のお話が最優先ね。
「それで、何時なの?義兄さまがその、ファーレン皇女を捕まえたのは」
「一昨日の深夜ですね」
「……え?一昨日の深夜?まさかおひとりで?」
「いえ、居たのは騎士団数名と、サジュ殿とレルミッド様ですね」
「……え!?夜会の後に飲み会してたんじゃないんですの?」
てっきり…義兄さまが皆様と親交を深めてくれたら良かったけど、仲が深まらなかった飲み会してたんじゃないの!?
さっきの話で、その…私と離れた憂さ晴らしに巻き込んだんだとばかり解釈してたけど!!
いや、それもある意味間違い無いだろうけど!!
「それは捕らえた後ですね」
「はあ!?何で早く言わないんですの義兄さま!?街中で私と彷徨いてる場合じゃないでしょ!?」
「ええー、デートでそんな話題やだよお。折角のアローディエンヌとのキラキラなデートがくすんじゃうじゃない」
「楽しいとか楽しくないとかじゃないでしょ!」
「それにい、どうせ明後日出発なのは決まってるから早めに捕まえただけだよ。
でも変態蝋燭野郎は見つからないね。どうせならあっちを捕まえたかったんだけどなあ」
「ファブギギギギ!!」
「え?どうしたのフロプシー」
今まで大人しかったのに、滅茶苦茶前足をバタバタ動かしているわ…。
ど、どうしたのかしら…。この子のキレるポイントがサッパリ判らないわ…。
…いや、人のキレるポイントも別に分からないけどさ。
動物系チートでも有りゃあいいんでしょうけど、無いしなあ。
この世界にも本屋さんとかに有るかしら、ペットの気持ちを汲むみたいな本…。有ったら読みたいけど、この子も結構規格外だからなあ。
……ホント、周りに規格外であろう人しか居ないわよね。…特殊よね、私の周りって。
モブなのは私だけだし。
「心配しなくても手荒なことはしないよ、今の所は。大体忌々しい事に見つかって無いしね…」
「え?あ、まあ…捕らえたとはいえ、証拠も無いのに手荒な事をしないのは当り前ですわね…」
今の所はってとこが引っ掛かるけどね。
…突っ込んでも無駄なようだけど。
「まあ、普通に捕まえたら普通だけどねえ」
「今は重しの牢獄に収監されていますね。
見てきましたけど普通に動揺していました」
そ、そうだろうな。
牢獄に入れられて普通動揺するよなあ。
しかも皇女様だし…そんな経験が有るとは思えないし…。
その方が一体…あのスキル剥がしにどれだけ関わっているかは分からないけれど、いきなり牢獄に放り込まれるもんなんだなあ。
一旦牢獄の前に、拘置所とか…無いのかしら。
でもまあ、貴人だろうし変な所に放り込む訳にはいかないわよね。
それにしても、仕事が早いと言うかなんと言うか…。
異世界怖いな。いや、義兄さまが怖いのか。そう思うと何時も通りね…。
「重しの牢獄…それはどんな牢獄なのかしら」
「見た目は普通の湿気た館ですね」
「…湿気てるの?」
「ええ、地盤の水捌けが悪いんでしょうね。まあ牢獄が心地よくてもおかしいですし」
機能を聞きたかったんだけど、住環境か…。まあでも大事よね、環境。
湿気てるのか……。地味に体に悪そうね。
湿気た環境って気が滅入るものねえ。
「他にはどんな?」
「そうですね。目と瞼と頭が滅茶苦茶重くなって、手紙書けなくなったり本が読めなくなる部屋の存在は聞いたことが有ります」
……地味に不便レベルだけど嫌な機能だな。
インドア主義で活字好きには死ねる部屋ね。テレビ好きとかスマホ中毒にも辛そうだわ。
まあ、後者は此処には無いだろうけどね…。似たような物は…多分無いと思うけど。
「頭に重石が載せられたみたいに、色々考える気力が失せるらしいよお」
「へえ。環境のせいもあるのかしら」
「他も色々有るけど、まあ並みの奴なら壊せる範囲かな」
「脱獄しやすいってことですか?」
それちょっと危険じゃないかしら。
いや、皇女ファーレンが危険かどうかは判らないけれど。
「まあ、徴を捺してきたので、例え脱獄しても害は成せません。ご安心ください」
「しるし?って何ですの?」
「うーん、首枷みたいなものかなあ」
は?首枷!?首枷って、ええ!?
何でそんなモン嵌めさせてんの!?
「何でルーロ君がそんなもんを皇女ファーレンに嵌めるんですの……!?」
「僕が頼んだから」
「はあ!?ルーロ君に何させてますのよ義兄さま!!」
「黒焼きにしてソーレミタイナに放り込む予定だったんだけどねえ」
「いや意味が分かりませんわ」
容疑が晴れたのかどうかは知らないけど、他国の皇女を殺して連れていく前提で話を進めんな、義兄さま。
…反対されたであろう方のご苦労がお労しいわ。多分、滅茶苦茶お疲れでしょうね……。
「海にでも浸けといたら誰か分かんないじゃない。あそこ群島国家だし」
「いや駄目ですわよ!!」
「もおー、アローディエンヌは優しいよねえ」
いや、優しかろうが優しく無かろうが、黒焦げ死体を海に放り込むことに賛成する非情さは持ってないんですけど。
「まあ、後で所在の有無を突っ込まれても面倒なので、今回は自分で歩いて戻って頂くことにしたんです、義妹姫様」
「…それで首枷?」
ルーロ君もまあまあ怖い事言ってるけど、義兄さまの後だからすごく人道的な案に聞こえるな。
皇女を歩かせていいのかどうか知らないけど、生きてるならいいか、みたいな…。
「ちょっと200年位前なら一部切り取って送り返してたらしいよ。
首枷足枷付けて捕虜を引き回してた位、良くなあい?」
「捕虜………」
……え、何だかサラッと怖い歴史を聞いてしまったわ。
と言うか何処にでも有るのね、そういうの。
「皇女ファーレンと、王子と花咲かあ…ダンタルシュターヴ伯爵令嬢とを交換せよとの意向だそうです」
ひ、人質交換するのか。
そしてまた悪魔って呼びそうになってるわね、ルーロ君。
でも、確かに現実的よね。人質交換だと、どっちも少なくとも死ぬことは…ああ、でも向こうでおふたりが傷ついておられないといいんだけれど。
「上手く行くといいですわね」
「え?行く訳無いよ?」
「はあ!?」
「大体、人拐いが誘拐を素直に認めて応じると思う?」
「お、応じないんですか?証拠が……」
「確たる証拠は無いので無理ですね」
そ、そうなのか。
いや、そりゃ確かにそうか。拐われた瞬間の目撃者も居ないし、監視カメラが有る訳じゃないし。
「まあ、そんなの陽動にしか使えないけど」
「は?陽動?囮ってことですか?何で!?」
「やだなあそんなの、アローディエンヌのスキルを奪い返す一択しかないよ?奪い返したら速攻帰るよ」
「僭越ながら、それしかないかと」
「はあ!?」
二人ともマジな顔で何言ってんの!?
速攻帰るう!?
「帰ったらダメでしょ!!私のスキルなんかより、おふたりのご無事の方が最優先でしょうが!!後、奪われた人のスキル!!」
「義妹姫様はどうぞ御心安らかにソーレミタイナの旅をお楽しみください」
「うんうん、安全第一だからねえ」
………何てことよ。
人の命が懸かっている時に…マジでガチで私の事しか考えて無いだと!?
な、何ちゅう自分勝手なのよ、義兄さま!!
……いかん。これではいけないわ。
モブでも出来る人命救助を…この2日間で読み漁らないと!!
と、取り敢えずサジュ様とマデル様辺りにご相談を…!!
これでも義兄さまはアローディエンヌに報告連絡相談をきちんとしているつもりです。
相談の方法が人とは違うだけで…。独断専行とも言いますね。悪役令嬢なので。
次はソーレミタイナに突撃いけたらいいな。人が増えますねえ…。




