プロローグ
初めてなので幾つかおかしいところがあると思います。
無個性。多分、ボクを表す言葉はそれくらいしかないだろう。
何をやっても平均より下。皆からはそのことで弄られ、自信がなくなりきつつある。
友人はそんなボクの事情を知っていても、二次元を愛する同士として仲良くしてくれる。それは、心地良く本音を話せる。
ボクは恵まれている。親も二次元好きで、話題には困らない。
将来のことは気にしなくて良いと言ってくれる。今はインターネットがあり、インターネットを活用することにより、稼げるのだから。
ぶっちゃけニートになっても良いと言ってる。
だけど、やっぱり――
*
「うーん、どうも最近は三次元に熱中するプレイヤーが多いですね。二次元に熱中するプレイヤーもいますが、周りに流されそうですよねー」
「おーい、見付かったか? それじゃ、見付かってねえか。仕方無いよな」
「何も見ずに言わないで下さい」
「あ、このプレイヤーとかは? 親、友人も二次元を愛してる。で、良いだろ。はい、召喚」
「勝手に決めて何やってるんですかー!」
*
真っ白い景色で、ボクは目覚めた。不思議なことに、寝ていた部屋ではなく、神秘的な場所で起きた。
「……あれ? パジャマから制服になってる。着替えた覚えはないんだけど」
なんだかファンタジーみたいだ。こういう非科学的な展開は、最近流行り物の異世界転生や神様転生を思い出す。
起きたら、異世界に居た。死んだと思ったら、神様からの特典でアニメ世界に行けたり、アニメキャラと同じ様な力を手にすることができたりする。
今の状況から考えると、神様転生の方かもしれない。異世界転生よくあるパターンは、起きたら見慣れない景色と現代に合わない周りの服装だったりする。さらに、突然話しかけられたりする。この場合、たまたまダンジョンで、しかも無傷で寝ていたことだったりする。しかし、いつの間にか不思議な力が備わっていたりする。不思議な力は自分の思いに関係するとか。
それに対して神様転生は、上記でも説明した神様からの特典だ。
「お前分かってるな! ということで転生しようぜ!」
「良いよ!」
え?
「あー、そっか。まあ、そりゃそうだよな。自分がそうなるから、驚いてんだろ? あ、さっきの分かってるという意味は、異世界転生、神様転生のことな。説明してくれたお陰で、説明する手間が省けた」
正直ついていけない。勢いで了承した自分もそうだけど、やっぱりあれなのかな。テンション上がってる最中に何か頼まれるとあまり考えずに了承してしまうパターン。うん、それだ。
「詳しく説明するから、そこで座ってくれ」
いつの間にかテーブルと二つの椅子があった。座ると、男性はコホン、と咳払いをして、説明する。
「今お前がいる世界は、神様転生の、特典が貰える世界であり、オレ達が暮らす世界。オレ達は、神なんだが、タメ口で構わない。丁寧な言い方とは苦手だし、面倒くさい。これ、神全員共通な。フレンドリーだから」
偉い人が言ってる神様とは随分違うな。
「で、後は転生だよな。お前どういう転生が良いんだ? とりあえず言うだけ言ってみろ」
「ボクが憧れているのは、秩序を乱す、物語の引っ掻き回し役。異なる二面性を持っている、神話の道化。ボクが思っているのは、紺色の髪に黄色の眼。黒のシルクハットにスーツ。強さは規格外。その世界の最強であっても、絶対に死ぬことは出来ない。そして、そんな神話の道化の話し相手が二人程。以上です」
(……神話の道化か。面白いな)
「良いじゃん。それ。普通そういうのよりも、主人公とか大物だぜ? だから、色々オマケやるよ」
男性は自分のことのように嬉しそうだ。確かに最近見る転生ものは、英雄や魔王と言った格上の存在。ボクの場合は例外なのかな。
「まあ、オマケはその世界に入ってからだ。自ら介入するのも良し、あえて陪観者でいるもの良し。全部お前の好きにすれば良い。……だけど、死んだらそこで終わりだ。例外を除き生き返らねえ」
死んだら終わり。最近のゲームでは昔のゲームみたく特定の場所で生き返るのではなく、ゲームオーバー扱いとなる。例外はリトライ機能を持つゲーム。……ゲームに例えてみたら整理しやすい。
「……ん~、じゃあ早速行って来い! 落ちても無事だということを、神が祈りながらなぁ!」
え?
いつの間にかボクは落下していた。とてつもないスピードで。
不思議と怖さは感じなかった。今なら平気だと、そう思い、眼を瞑る。
次に眼を開けた時はどんなのだろうと、心待ちながら――。