紳士猫は若かりし日の夢を見る
副官祭りに間に合わなかった連載形式第2話です。
夢小説です。妄想と願望の産物です。
「こらー! 誰だこんなところでタバコ吸ってるのは!」
懐かしい声がして目を覚ました。
いや、目を覚ましたという表現はちょっと違う。これが夢なのだと、すぐに理解したからだ。
辺りを見回す。高校時代に巣くっていた1号棟の屋上だ。
自分の格好を確認する。案の定学生服だ。ほとんどの高校の制服がまだ詰襟だった時代、いち早く制服に採用された、ややくたびれた色のブレザーを着ている。こいつのおかげで街では目立つので落ち着いて素行を不良させることも出来ない。しかたなく自主的に授業をサボタージュするときなどは、こういうところへ身をやつすことになる。
夏が終わったばかりのまだ暖かな風が吹く屋上。給水塔が落とす影の下がお気に入りのお昼寝ポイントだった。
「こんなところでタバコをふかしているということは、不良さんですね? こわいですねー?」
「残念、今日はココアシガレットでした。砂糖菓子食べる自由は未成年にも保証されてまーす」
声の主に向かって言い返す。
「ぶっぶー! 校則でお菓子の持ち込みは禁止されています!」
柱のかげから少女が出てきた。まだ若い。長い髪をひとつにまとめ、化粧っ気のない顔。制服のセーラーをカタログのままに着こなし(スカート丈を変えたりスカーフを変えたりするのは不良のやることだったのだ)、そのかわり白い長いマフラーが自己主張している。絶世の美女というわけではないが清潔感があり、クラスの人気投票では2番目か3番目くらいになるタイプだ。
「それに今は授業中ですよ! 授業に出ないでこんなところでお菓子を食べている子は悪い子ですね!」
「サボってるのはあんたも一緒だろ」
「こちとら品行方正の深窓の令嬢、保健室の女王で通ってますからね! 教室を抜けるのなんてお手の物なのです! さあ、お菓子をよこしなさい!」
品行方正が聞いてあきれる。お菓子強盗ここに極まれりだ。
「いいけど……一本だけだぞ」
手にした菓子の箱を少女に差し出すと、少女は箱ごと奪い取り、さらに腕をすり抜け近づいて……
「これだけじゃなくてーっ……こっちもいただきます!」
僕がくわえていた分のココアシガレットまでくわえて行ってしまう。
「6限はサカセンだからねー! ちゃんと出席しないとひどいよー!」
「わかってるよ……どろぼうめ」
ぴょこぴょこ揺れる少女の髪とマフラーを見送る。微か石鹸の香りと、唇に残る感触が胸をざわつかせる。
そういえばこの頃から、こういう守ってやらなきゃって感じの娘に弱かったんだった。
まったく自分が恋に落ちる瞬間を追体験するほどいたたまれないこともなかなかない。
夢なんだから、早く覚めてくれにゃ。
まだまだ練れば練れる感じだけど、結構あれこれネリネリして出来上がった結果なのでまあ今できる精一杯だと思います。
もうすこしだけつづくんじゃ。
この先がなかなか決まらないで頓挫してるんですよね~