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ヒゲと少女

副官祭りに投稿しようと思って書き始めたのですが、セララさんが勝手なことをし始めたのでまとまらなくなってしまいました。

 天秤祭も終わり、色付いた木々の葉も散り始め、アキバの街にも徐々に冬の足音が聞こえてきていた。

 祭以降地方から訪れる大地人の数もさらに増え街はさらに活気溢れていたけれど、目抜き通りから数本奥まったところにある記録の地平線のギルドハウスまではその喧騒も届かず、相変わらず穏やかな空気が流れていた。小春日和の日差しが窓から射し込みポカポカと心地好い。

 共有スペースでは愛用の揺り椅子に腰を掛け、どこからか手に入れてきた本を手にしたまま……


「にゃん太さんがお昼寝をしているんです!」


……にゃん太が居眠りをしていた。

「あの、いつも紳士的で落ち着いた物腰で隙がなくって何でも見透かしているようであたしが何を言っても『セララちは良い子ですにゃあ』とか子供扱いしてぜーんぜん相手をしてくれないにゃん太さんが!こんな無防備な姿を晒してお昼寝をしているんですよ!」

「セララちゃんセララちゃん、途中から何か出てきちゃってるよ」

 来月の旅に向けての買い出しから戻ってきた年少組とセララは部屋に入ってすぐににゃん太に気がついて、起こしては悪いと思い声を潜めた。

 トウヤとルンデルハウスは山と抱えた荷物を下ろしに自分達の部屋へ向かいミノリもそれを手伝うが、こんなチャンスに遭遇してしまったセララはそれに従うことはできない。自分の荷物をルンデルハウスに押し付けた五十鈴が面白そうについてくる。

「五十鈴さん……こういうとき、犯罪にならなくて、あとで訴えられもしない範囲で出来ることって何ですかね」

「あははー、ヒゲくらいにしときなー」

「ヒゲ……その手がありました……にゃん太さんのおヒゲがあれば……いつも一緒です……」

 セララが眠るにゃん太へと迫る。その手にはどこから取り出したのだろう、手動のバリカンが握られている。

「おひげーゾリゾリーおひげーゾリゾリー」

「セララちゃん、よだれよだれ」

 セララの眼には炎のエフェクトが浮かび上がる。口伝<恋する乙女は盲目なの(ヒートヘイズブライン)>である。恋する森呪師(おとめ)がその相手を見るとき、瞳には前髪を少し焦がす程度の火力の炎を宿し、背景に花とキラキラが舞う! それ以上の効果はない!

 小さな手がついにヒゲに触れようとしたとき、にゃん太が少し身動いだ。


「ムニャ……別に構わないけど……一本だけだぞ」


「ふええええええええええええええええええええええええ!」

「うわあああああああああああああああああああああああ!」

 ばね仕掛けのおもちゃのような勢いで飛び上がる2人。

 そのままの勢いで部屋を飛び出し逃げていく。

「どうしよう! どうしよう五十鈴さん!」「もうっ! 流石に! 流石に気づかれたよね!? 私は止めたよ!?」

「にゃん太さんの語尾が『にゃ』じゃなかったああああああ!」

「そこかあああああああああああ!」



 目を覚ましたにゃん太があたりを見回す。

 いつもと変わらぬギルドハウスのリビングルーム。しかし埃立った空気や閉まりきってない廊下への扉が、数瞬前までの喧騒の名残を残している。

 やや焦げたような臭いがするので、買い出しから帰ってきた年少組がランタンでも蹴倒したのだろうかと考える。

 思ったよりも深く眠っていたようだ。そろそろ夕食の支度を始めないと。

 そういえば確か今日はセララが来ると言っていたはずだ。新鮮な卵を買ってきて、マヨネーズでも作ってみようか。

 ひとつ伸びをして窓の外へ目をやる。秋の日はまだ高い。

ポロポロと出てきた話をうまくまとめられるといいなと思って自分を追い込むために連載という形にしてみました。


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