第六章 ジャンクション
右は昼間に来た道で緩い下り坂になっている。左に行くと道幅がちょっと広いバス通りにぶつかる。バス通りを右に曲がるので向こう側(車道の右側)の歩道を行った方が良いと思い、自動車が来ないのを確認して向こう側の歩道に渡った。
車道の左側が付属病院で右側が大学だ。大学の敷地の入り口には守衛室の建物がある。今日は日曜なので人の気配は無いが平日は守衛さんが待機しているのだろう。
守衛室の建物の前を通りバス通りに出た。
「国道に出たら左折するので向こう側(車道の左側)の歩道を行った方が良いだろう」
と思い横断歩道を渡る。道幅が結構広い割に信号が無いので中央分離帯で一度止まって、再度、自動車が来ない事を確認してから渡った。
右に曲ると上り坂になっている。見た目より傾斜がきついので後ろ向きになって足も使って進んだ。
少し坂を上ると左側に月極駐車場の入り口の坂があり立派で頑丈そうなゲート(遮断機)が閉っている。医大病院の医師や医大生用の駐車場なんだろうか?
医大生はきっと『いいとこのボンボン』ばかりなので乗っている自動車も高級外車ばかりなのだろう。ポルシェとかフェラーリとかがズラッと並んでいそうだ。
少し進むと林道みたいな細い道と交差して、又、別の月極駐車場があり歩道が無くなっている。(それにしても『月極駐車場』が多い。駐車場代は県民が払っている税金から出ていたりして)
「これは困ったゾ……」
と思った。車道の端を行くという手もあるが
「暗くなって来たし、ジャンバーは黒だし、ドライバーから見えづらいかな?自動車に引かれたら大変だ」
と思い横断歩道まで戻り反対側の歩道に戻った。ムダな事をしてしまった様だ。
「しかし、こんな広い道路なのに歩道が片側にしか無いとは普通は思わないよな?」
気を取り直して車道の右側の歩道を進む。上り坂は変わらないが傾斜が緩い。何故だろう?
しばらく進み反対側を見ると柵が見える。
「何だ?歩道があるじゃないか?」
と、よく見たら歩道の柵じゃなくて月極駐車場の柵だった。やっぱり歩道は無かった。
この歩道は道幅も広く右側の山との境も花壇になっていて一言でいえば『とても立派』だ。この歩道を徒歩で通る人はほとんどいないだろうからここまで『立派』な歩道は必要無いと思う。ハッキリ言って『ムダ』以外のナニモノでも無いと思う。(お金はどうせおバカな県民が出すんだから……なんて事は無いと思うが)
「あっ、カエルだ」
カエルが右の土手から飛び出して来て私の前をピョンピョンと横切り車道に降りて行った。
「こんなに寒いのにまだ冬眠していないんだなぁ……夜とかはどうしているんだろう?」
と思った。(大きなお世話だ)
200メートルほど進むとバス停がありムダに広い歩道が急に細くなっている。丁度、路線バスが来たが乗る人も降りる人もいない(乗ってる人もいなかった)休日だからだろう。そのバス停には『医大前』と書いてあった。『いいとこのボンボン』は路線バスには乗らないと思うが平日は看護学校の生徒さんや大学で働いている職員の人が利用するのかも知れない。
国道に繋がっているので自動車はそこそこ通るが歩行者は私以外はいない。(車椅子でも『歩行者』というのだろうか?)ここを管理している人(部署)もそれを把握しているのかバス停の先には街灯が一つも無い。バス停のスグ先の右側に交差している上り坂があり、この坂を上った左側に看護学校がある。このバス停から200メートルほど平らな道を進むと大きく右にカーブしながら下り坂になっている。さすがに、ここから先は医大生も看護学校生も行かないらしく木の枝や枯れ葉が散乱していた。
11月ともなると暗くなるのも早い。街灯が一つも無いので真っ暗で怖い。時々通る自動車のヘッドライトで車道と歩道の境が分かるので、それをなんとなく覚えておいて歩道を進む。境が分からなくなると止まって次に自動車が通りヘッドライトで照らしてくれるまで待つ。この道をこの時間に車椅子で通る人は後にも先にも私だけだろう。
国道に繋がっている辺の地図を確認しようと思って車椅子の背もたれのポケットからセカンドバッグを出しファスナーを開けて懐中電灯を取り出す。懐中電灯のスイッチを入れ光を付けて口にくわえた。地図を見たがイマイチ良く分からない。
「この道がこっちの道で、そっちの道がその道で……」
地図は平面なのでどっからが下りでどこまでが上りでとか書いてないので結構分かりずらい。初めて通る山道はほとんど分からない。何がなんだか分からないので地図をすぐしまった。
この真っ暗な状態で『熊』や『野犬』がでたら間違いなく食い殺されるだろう。(看護学校が近いという事でこの辺も『変質者』が出るのだろうか?)
下り坂は、足でブレーキをかけスピードが出ない様してに進んだ。歩道の右側は土手みたいになっていて丈の低い草が植えてあり『F県立医科大学』という看板をライトで照らしていた。
「夜に大学の看板をライトで照らす必要があるのか?つうか、ここ通る人って大学の横の道って知ってるよな」
と思った。(医大病院なら必要だろうけど)
国道からこちらの道路に抜けるところに来た。高速道路の『ジャンクション』みたいな箇所だ。国道を通るのは大きなトラックばかりですごいスピードだ。
「どうやって渡るんだ?」
左(東京方面)に行きたいのだが横断歩道が無い。
「アレ?歩道もない」
歩道があるところまで車道の端を行くという手もあるがあの勢いのトラックに引かれたら確実に死ぬ。反対車線の方に歩道があるかも知れないのでちょっと下って(仙台方面に行って)横断歩道を渡ろうと思った。
「でも、こんな道路に信号付きの横断歩道なんてあるのかな?」
と思ったが、とりあえず仙台方面に向かった。
しばらく進むと、緑色のランプが光っているのが見えた。
「やった、アレは信号じゃないか?」
と喜んで行ったら駐車して仮眠をとってるデコトラのイルミネーションだった。『デコトラ』って……まだいたのね。(生きた化石か?)
「こういう道路って普通は『駐車禁止』じゃないの?」
と思いながらそのデコトラの脇を通った。
少しすると立体交差の橋の様になっていて下を細い(古い)道路が通っている。道路と橋の結合部分に段差があったので結構苦労して渡った。
しばらく行くと急に明るくなり、また『ジャンクション』みたいになっていた。小さな正三角形の中州みたいになっていてこちらの歩道から横断歩道で繋がっている。
自動車が来ないのを確認して小さな正三角形の中州に渡ると芝生が敷き詰められてあり中央に小さな花壇があるが花壇の草は茶色く枯れていた。そして、その先は歩道が無くなっていた。
「マズイ!閉じ込められた」
戻る気にはなれなかったのでここにいる事にした。(あの暗い中であの坂道を上るのはとてもムリだと判断した)
「分かったゾ!この歩道はここに来る為の歩道なのかも?」
と思った。最初はジョギングの為かと思ったがどうやら違うみたいだ。『国道』なので国が管理しているのかな?
ジャンクションみたいになっているおかげでかなり明るい。たぶん旧国道に降りる箇所なのだろう。有り難い事にデジタルの温度表示がある。今は午後6時で温度が7℃だ。午前0時ころは0℃くらいまで下がるだろう。コレは寒くて死ぬかも?
道路の向こうに駐車場がありそこにジュースの自動販売機がある。
「後で温かい缶コーヒーでも買いに行こう……あそこまで安全に行ければだけど」
特にやる事が無いのでスマホに入っている洋楽(MP3)を聞いた。疲れていたので膝の上で腕組みしてそこに顔を埋める様にして居眠りした。この格好だと結構温かい。
目の前の道路を通ってる自動車のドライバーから見たら具合が悪くて丸まっている様に見えるだろうか。ヘタしたら死んでる様に見えるかも知れない。
「警察に通報でもされたらマズイ」
そう思っていたら
「どうしました?大丈夫ですか?」
と、肩を揺すられた。
顔を上げて声のした方を見ると若い女の人だった。下り方面から来たので仙台にでも遊びに行った帰りか?
「あ、眠っていたダケです。ビックリさせてしまってスイマセン」
「前を通ったんですけど具合でも悪いのかなと思ってしまいました」
「昨日夜更かししたんで眠くて……ちょっと居眠りしただけです」
私が元気だったのでその女の人は安心したのか帰っていった。
「違うでしょ!こんな時間に、こんな場所に、車椅子の人がいるのってスゴクヘンでしょ!」
と思ったが、相手は若い女性だ。
こんなオッサンとはかかわりたくないよなぁ……と納得した。
「昨日吾妻山に初雪が降ったからこの辺も急に寒くなるよ」
と、母が言ってたのを思い出した。
ちなみに、午後10時で温度が4℃だ。(もっと寒くなりそうだ)
風が出て来た様だ。急に寒くなって来た。歯がガチガチ言う。
「寒いと本当に歯がガチガチ言うんだなぁ」
と思った。体感で2℃くらい違うか?
ヒマだったのでちょっとウロウロしてみた。と言っても、ここのジャンクションみたいな箇所と向こうのジャンクションみたいな箇所の間(距離にして500メートル)しか行き来出来ないが。
街路樹に『駐車禁止』と書かれたカンバンが立てかけてある。
「さっきのデコトラは何なのだろう?」
と思い、デコトラが止まっていた場所へ行ってみたら今度は別のトラックが止まっていた。それも2台も。
ネットで調べてみたら駐車禁止の『標識』がある場所だと違反になるらしいが、この場合、駐車禁止の『カンバン』なので違反にならないらしい。
いくら違反じゃないからといって、せめて、ハザードランプを点けるとか三角の反射板を立てるとかしなくて大丈夫なのだろうか?見ているコッチがハラハラしてしまう。(大きなお世話だ)
この道路にも街灯は無いが自動車が途切れる事が無いので自動車のヘッドライトだけでも結構明るい。
同じ道を行ったり来たりしたが先がどうなっているか分かるのでスグに飽きてしまった。あの橋みたいなとこは相変わらず大変だったが温度計のある場所に戻る事にした。
しばらくは目の前の道路を勢い良く走る自動車を眺めていた。前の車道を大きなトラックが通ると地面が揺れる。最初は地震かと思ったがスグに分かった。
「トラック恐るべし……」
中央分離帯に等間隔で丈の低い木が植えられているのでヘッドライトがチカチカと点滅してる様に見える。目をつぶるとパトカーが来たかと錯覚してしまう。
と、その時、前の道路を本物のパトカーが通った。
「巡回かな?この寒い中ご苦労なこった……」
と思った。(大きなお世話だ)
どうでも良い事だがパトカーのベース車は『フェアレディZ』だった。
「駐車してたトラックは大丈夫だろうか?」
他人の事を心配している場合じゃ無かった。




