第五章 日曜日の(白い?)巨塔
中に入ると、コンクリートの建物のせいかちょっとヒンヤリした。照明は付いているのだが外にくらべて薄暗い。いかにも大きな建物の中というカンジだ。
ガードマン室の前を通った先に簡易のカウンターがあり受付のお姉さんがいる。
「こんなに天気が良いのにこのお姉さんは休日出勤かな……」
と、どうでも良い事を考えた。(よけいなお世話だ)
それにしても流石は病院だ。車椅子でも何の違和感も無いし、床も平なので車椅子で移動し易い。
受付の横の廊下を進むと変則的な十字路になっている。丁度、逆向きのT字路をズラしてくっ付けた様になっていて、手前が右に曲がる通路になっている。その角を曲がった左側に『休憩室』と書かれた部屋があり、その通路の反対側が救急外来の待合室になっている。
救急外来の待合室を過ぎると、今度は左に曲がる通路があり、左に曲がるとリハビリ室で(手術後にリハビリ室に通ったな……とちょっと懐かしくなる)、その先は行った事が無いのでどうなっているか分からない。通路の向こう側の角に売店がある。
売店の先はちょっと広くなっていて、窓があるせいか陽当たりが良くソファーや自動販売機等が置いてありちょっとした休憩所といったカンジだ。その手前を左に曲がると入院病棟用のエレベーターホールで、その先に食道がある。(私が入院していた頃は『喫茶室』があったが、今は無い様だ)
売店の向かいに美容室、理髪店、トイレ(車椅子用、女子用、男子用)がある。車椅子用のトイレだけ2メートルほど奥まっている。
車椅子用のトイレの扉の横の緑色の『開く』のボタンを押して(『開く』のボタンを押すと自動的に内の照明が点く)自動ドアを開けて中に入り、赤色の『閉る』のボタンを押して自動ドアを閉める。『車椅子用のトイレ』といったが、中には赤ちゃんのオムツを代える小さなベッドもあって『ユニバーサルトイレ』というらしい。
この病院は廊下やトイレに手摺が付いてあるのだが基本的にお年寄り用だ。平均的なお年寄りの身長に合わせて付けられているので私にはちょっと低く中腰みたいな中途半端な姿勢になってしまい、かえって、腰を痛めてしまう時がある。『バリアフリー』というけれど基準は『お年寄り』なんじゃないだろうか?
車椅子用のトイレを出て廊下を少し戻って左に曲がり『休憩室』の前の廊下のソファーに車椅子から移って座った。車椅子は背中やお尻が結構ムレるし、膝も曲げた状態で固まってしまう。『休憩室』にはテーブルと椅子が置いてあり洗面台がある。売店で買ったお弁当などを食べる為の部屋なのだろうか。
ジャンバーのポケットからスマホとイヤホンを出して、スマホに入っている洋楽(MP3)を聞いた。そして、車椅子の背もたれのポケットから電子ブックリーダーを出してその電子ブックリーダーに入っている小説(PDF)を読んだ。
聞いている曲も読んでいる小説も自分の部屋にいる時と同じなのでリラックスできる。違うところは床の上に胡座をかいているかソファーに腰掛けているかだけだ。
廊下の左側の突き当たりに救急外来の待合室が見える。赤ちゃんを抱いた若いお母さんが多い。赤ちゃんには、土曜、日曜は関係無いという事だろう。
小説を読むのにも飽きたのでここから離れる事にした。スマホと電子ブックリーダーをしまって車椅子に乗り救急外来と反対の方向へ移動した。
20メートルほど進み右に曲がると急に広くなった。正面玄関側のロビーに出た。
平日の午前中はかなり込んでいるが今日は診察は休みだ。
入り口の自動ドアを外から病院の建物内に入ると左側が無人の受付(予約積みの外来患者用)で右側に有人の窓口(新患用と保険証確認等)が7つくらいある。
左側(無人の受付)の奥には『スターバックス』がテナントで入っていている。遠足等で食べ物を外で食べると実際より美味しく感じるが病院内では実際より不味く感じてしまう様だ。病院内でコーヒーを飲みたいとは私は思わないが必要な人には必要なのだろう。
その奥にATMと公衆電話のコーナーがあり、通路を挟んでその奥には銀行があり、銀行の裏側がガードマン室だ。
丁度、スターバックスの向かいに2階へと上る幅の広い階段があり、階段の下のスペースが院外処方の為のFAXコーナーになっている。階段の裏側に外来用のエレベーターがあり、その横にちょっと広い廊下がある。
その幅の広い階段の奥にロビー(30坪くらいある)がある。半分が広場の様な空間になっており半分にはソファーが並んでいる。(このソファーは来る度に変わっている……そのお金はどこから持って来るのだろうか?)右には缶ジュースや缶コーヒーの自動販売機があり、奥には会計を済ませる窓口が並んでいる。
ロビーにはフィリップス社製のAEDが装備されている。ちょっと前に『フィリップス社製のAEDは欠陥があってなんちゃら』とニュースでやっていたがちゃんとしたのと交換したのだろうか?ところで『AED』って病院に必要なの?(癒着の香りがプンプンするのは気のせいだろうか?)
平日は行列が出来るくらい混んでいるのだがさすがは日曜という事で無人の窓口の中で残業をしている事務の人が一人いた……外はお天気なのにご苦労なこった。(よけいなお世話だ)
外来用のエレベーター(三階までしか行かない)の横のちょっと広い廊下を進む。左側が一面、明かり取りの窓になっていて結構明るく暖かい。さらに進むとT字路になっていて、真直ぐ進むとCTやレントゲンの検査室があり、その奥にMRIの検査室がある。今日は検査も休みの為か天井の照明が消えているのでとても暗い。非常口に誘導するフットライトは点いているので真っ暗ではないがそれでも暗い。
T字路を左に曲がると廊下の幅も明るさもそのままで何人かが(入院患者だろうか?)ソファーに座って日向ぼっこをしている。陽当たりが良く暖かい。まるで『縁側』みたいだ。
その明るい廊下を進むと先ほどの『ちょっとした休憩所といったカンジの場所』に出る。その角を左に曲がると、グルっと回って売店の前に来た。さすがに売店の前だし奥に入院病棟に通じるエレベーターがあるので人通りが多い。
売店には『クリスマスケーキの予約承ります』というノボリが下がっていた。巷ではもうクリスマスなんだなと思った。毎年、クリスマスには鶏のもも肉を食べる。(この歳になるとケーキはあまり食べない)
ヒマだったので売店の前で通る人を見ていたのだが、結構『アカ抜けない』人が多い。何が違うんだろうか?
いかにもな『田舎のあんちゃん』風の二人組が前を通った。
「おっ、ローソンがある!」
「ここ、24時間営業なんだってよ」
「さすがは医大病院だな!」
……何が『さすが』なんだ?
私は自分の事を『チャキチャキの田舎者』だと思っていたが、どうもそうでは無いらしい。
よく、小説や映画なんかで、都会に住む中学生や高校生の男の子が夏休みに父親や母親の実家(田舎)に遊びに行って隣の家の可愛い少女に出会ってなんちゃらという話があるが、アレはウソだと思う。人は環境が育てるのであって、田舎で育った子は『田舎の子』で、決して『都会の子』みたいには育たない。
あと、小説で多いのが、転校生は美人で体が弱い……しかも、お金持ちで、何故か主人公の初恋の相手だったりする。
私も小学四年の時に転校して来たが、イケメンでも無いしお金持ちでも無い。『事実は小説よりも奇なり』という言葉があるが、これが『事実』だ。
夕方の5時近くなるので暗くなる前に医大病院を出る事にした。ガードマン室の前を通ると出口の自動ドアが二重になっている。来たときは昼間で開けっぱなしになっていたので気が付かなかった。
外には救急車が止まっていた。サイレンは止めていたが回転灯は回っていたので他の病院から患者を運んで来た様だ。それとも救急外来に来たのだろうか?
ところで、院内感染とかは大丈夫だろうか?




