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序章 F県F市H町

 ここは何かの『事故』で世界的に超有名になった『F県』のF市のH町だ。放射能うんぬんの話は『放射脳ほうしゃのう』の人にまかせる事にして、私は別の話をしたいと思う。


 幸か不幸か、私は結婚していないし、もちろん子供もいないので思い残す事は何も無いし、この世に未練も無い。やり残した事も、あると言えばあるが無いと言えば無い。別に死にたいとは思わないが、死にたく無いとも思わない。死ぬ時は死ぬし、死なない時は死なない。死んだ時はその時が『寿命じゅみょう』だったという事だ。


 二十八年前に父親を『食道癌』で亡くし、今は母親と二人で父親が建てた家に住んでいる……この場合も『母子家庭』と言うのだろうか?私も死ぬ時はたぶん『癌』だと思う。(若い時にタバコを吸っていたので『肺癌』あたりか?)


 私は三人兄弟の末っ子で、上に兄と姉がいる(『一姫、二太郎、三なすび』の『なすび』だ……ちょっと違う……いや、ぜんぜん違う)。兄は奥さんと子供三人(男の子二人、女の子一人)の五人家族で、県内に住んでいる。姉は旦那さんと二人(子供はいない)で、隣の県に住んでいる。

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