ビロードの風
更新しないかも。
――ビロードはね、とても、淋しがり屋さんなの
――淋しくて、昔は、ずっと泣いていたの
――でも、泣きすぎて、涙が枯れてしまったのよ……
これは、この村に生まれた子供なら、だれもが知っているお話。
『なんで、そんなにさみしいの?』
――ビロードは、お友達がほしいの
――だから、もしビロードの声が聴こえたら、お友達になってあげてね
『なるよ!
ぜったいに、ビロードとお友だちになってあげるよ!』
――えぇ。そうしてあげなさい。
――涙の枯れたビロードは、今度は哀しくなってきてね
――風を吹かせるようになったの
――たまに嵐になるときは、みんなが困ってしまうからね。
――ビロードに喜んでもらってくれることを、待ってるよ
お母さんが、いつもその話を聞かせてくれた。
私はその話が、大好きだった。
弟はそうではないようだけれど。
『――~……~~…………』
強い風が吹いた。
――これは、「お母さんの……」声?
弟のほうを見ると、目があった。
「そんなはず……」
また、聴こえた。
――ビロードの声が聴こえたら、きっと困ってるの。
――傍に行って、助けてあげて。
『ビロードは、どこにいるの?』
――風上……。風の吹いてくるほうよ
これはきっと、「ビロードだ!」
弟の手を引く。
「ビロードだよ、助けに行こう!」
弟を引いて、声の聞こえた、風上のほうへと向かった。