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掌編小説

私がソファーで眠る理由

作者: 斎藤康介

 深夜三時。

 私はソファーの上で目を覚ました。最近、部屋の灯りをつけたままソファーで寝ることがすっかり習慣になっている。無理な体勢で寝るため痛めた腰を擦りながら、リモコンに手を伸ばし通販番組が流れていたテレビの電源を切った。それから起き上がり水を一杯飲むと、灯りを消して隣室のベッドに横になった。

 起床の時刻まであと三時間半ある。目覚ましがセットされていることを確認し布団を口元まで深くかぶった。


 父のことを思い出す。父もよくリビングで寝ていた。

 そんな父の傍らにはビールの缶が並び、テレビと灯りは付きっぱなしだった。寝室までわずか3メートルも離れていない。よく母はリビングで眠る父を見て、「電気の無駄使い」と文句を言っていた。自分もその通りだと思っていた。眠る父を見るたびに仕方なくテレビの電源を切り灯りを消した。

 その時の私は、父を憐れに思っていた。


 しかし今なら父の気持ちが少し分かる気がする。私は、そしておそらく父もそうだったのだろう、無性に朝を迎えることが怖いのだ。ベッドに入った瞬間に今日という一日が終わり、目が覚めたら明日(・・)というまったく別の日になっていることが恐ろしいのだ。ホップもステップもないままにジャンプで飛ぶように準備がなく明日を迎えることがとても恐ろしいのだ。

 だからテレビも部屋の明かりも付けたまま眠り、今日から明日へ向かう時の合間に無理やり目を覚まさせ緩衝を設けているのだ。


 闇夜、ふと目が覚めると鏡に映った自分と目が合った。

 その顔は父によく似ていた。

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