真の美しさとは
むかしむかし、あるところに一際美しい女王様がいました。
女王様にとって自身の美しさは世界一だという絶対の自信がありました。
そんな女王様はいつも、真実を告げる鏡に誰が世界一美しいか?と質問して自らが世界一の美しさを持つという自信を得ていました。
──そんな女王様も結婚し、子どもを授かります。
子どもの名は白雪姫。たまのように白い肌を持つ儚い美しさを兼ね備えた自らの子どもに女王様は嫉妬心を抱くようになります。白雪姫が成長すると鏡もいつしか、世界一美しいのは白雪姫だというようになります。
──ある日、とうとう、あまりの嫉妬心から老いた猟師に白雪姫を殺すように命じてしまいます。
そんな女王様の言葉に年老いた猟師は静かに、しかし、その真意を射抜くように告げます。
「ああ。女王様。どうか、わたくしの言葉をお聞き下さい。
東洋には落葉帰根という言葉がございます。どんなに色付く瑞々しい葉もいつかは枯れ、土に還り、やがて新たな命を芽吹くという言葉でございます。
どんなにいまは美しくとも白雪姫もいずれは老いて醜くくなってしまうでしょう。老いとはそういうものでございます。
貴女様がその理に気付かず、目先だけの美に囚われている以上、白雪姫の持つ本当の美に勝る事は出来ないでしょう」
その猟師の言葉が気に入らず、女王様は年老いた猟師を処刑してしまいます。
──ですが、猟師のその言葉が徐々に頭から離れなくなってしまいます。
女王様はいつものように鏡に向かって世界一美しいのは誰か?と尋ねました。
すると鏡は白雪姫でも女王様でもなく、彼女に真意を射抜くように言葉にしたあの年老いた猟師だと答えます。
そこで女王様ははじめて鏡の言っている本当の意味を知るのでした。鏡は所詮、鏡です。
深層心理を映す都合の良いもう1人の自分が鏡を通して答えているだけであり、自身の心からが認めたものこそが世界一美しく見えるのだと・・・。
女王様はそうして、深く反省し、処刑した年老いた猟師を改めて丁寧に埋葬するように命令しました。
それからというもの、女王様は白雪姫への接し方が変わり、単純にその姿の美しさではなく、その清い心の美しさも認め、自らが追求していた見せ掛けだけの偽りの美への執着を捨て去り、本当の美を追求する為に神様に祈りを捧げ、あの年老いた猟師の言葉を胸に白雪姫の成長を見届けるのでした。
どんなに瑞々しい葉もいつかは枯れて土に還り、また新たな命を繋げていくという精神こそが何よりの美であるのだと。
そんな教えは女王様から白雪姫に──そして、人々へと知られるようになり、その美しさの本質について物語や教えへとして語り継ぐようになるのでした。
【おしまい】




