新しい合い言葉
私には親友と呼び合う、美々ちゃんという女の子がいる。
でも、最近その子の様子がおかしくて、私は少しずつ距離を置こうとしている。
「壱ちゃん、小学校終わったら公園ね!」
私の名前を呼ぶ美々ちゃんは、毎日毎日、私に付きまとって、正直鬱陶しい。
「美々ちゃん、私も他の子と遊びたいから、また今度ね」
「なんで? 美々たち親友でしょ? そんなのおかしいよ」
いつも延々と話しかけてくるけど、今日は流石に他の友達が黙っていなかった。
「ちょっと、壱が迷惑してるでしょ!」
「美々たちは親友なの! 壱ちゃんは私のものなの!」
合い言葉のように『親友』と喚き散らす美々ちゃんに、私は言い放った。
「キモい、ウザい、もう付きまとわないでよ」
美々ちゃんは俯き、ぶつぶつと何かを呟き始めた。
「何こいつ、もう行こう」
友達の言葉で、私は美々ちゃんから離れた。
あの日から美々ちゃんとは関わっていない。
いつの日か、学校にも来なくなった。
「南美々さんが、事故で亡くなりました」
先生の言葉に驚いたものの、私は心のどこかで安堵していた。
もうあの子はいない、解放されたんだ。
私は三人の友達と過ごすことが多くなった。
学校の裏山に秘密基地を作って、そこで遊ぶ毎日。
「そうだ、合い言葉を決めようよ」
「いいじゃん!」
「何にする?」
口々に話し出す友達。
そこに私は、一つの案を出した。
「私たちは、友達、でどう?」
彼女らは拍手しながら賛成してくれた。
合い言葉の使い方は簡単。
秘密基地に辿り着いたら、まずノックをする。
返事が来なかったら一番乗りということだから、そのまま秘密基地に入って待機。
外からノックが聞こえたら返事をして、『私たちは』?と聞く。
相手が『友達』と答えたら入れて良し。
私が一番乗りの日、ノックを楽しみに待っていた。
コンコンと木の扉を叩く音が聞こえ、私が応える。
「はーい。私たちは?」
「親友」
間髪入れず聞こえた返事は、決めていた合い言葉とは違った。
「もう違うよ、合い言葉は……」
「合ってる。美々たちは親友だから」
背筋が凍った。そんなはずない、きっと誰かのいたずらだ。
私は思い切り扉を開けた。
「誰も、いない?」
「やっと、美々を受け入れてくれた」
声は私の後ろから聞こえた。
肩に誰かの手が、力強く触れている。
怖くて振り向くことが出来ない。
「私……そんなつもりじゃ……!」
「これでずっと一緒だね」
その瞬間、目の前は真っ暗になった。
作者の畝澄ヒナです。
短編ばかり書いている、自称小説書きです。
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