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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

18時、17分、28秒

作者: 春野 椿

甘々(?)なお話です。

楽しんでいただければ幸いです。


2025/09/06 一部加筆修正しました。

放課後、薄暮、約束……時刻は既に18時を回っていた。


「ハァハァ……」


わたしは息を切らしながら、

彼女の待つ3組の教室を目指した。


「ハァハァ、ごめん、遅くなって……」


窓際の一番後ろの席で、

文庫を読んでいた少女は、面倒くさそうに眼鏡を外すと、

わたしを睨み付けた。


彼女と付き合うようになったのは1年の終わり、

わたしの執拗なアタックに折れる形で、二人、恋人関係になった。


「ただし」そういって

彼女は一つの条件を提示した。


「誰にもばれないように、いいこと?」


今時、女の子同士で付き合ったり、

スキンシップしたりは珍しいことじゃないけれど、

彼女はいいとこのお嬢様だったので、

お家柄、そういうことには慎重だった。


相手が女子となれば、なおさら。


彼女の提案で、わたしたちはクラスメイトの下校時間を待って、

一緒に下校することになっていた。


短い時間、でも、彼女の横顔を独り占めできる時間は

わたしにとって幸せだった。


だけど……


「18時、17分、28秒」


甘い回想は、彼女の声で中断された。


スマホを眺めながら、淡々とした口調。


いつしか、わたしは彼女との待ち合わせ時間に

遅れるようになっていた。


「ご、ごめんね、部活が終わるのが遅くなって」


「また、言い訳?」


「次は気をつけるから……」


呆れ顔の彼女は、しかし、一転して微笑むと、

椅子を少しずらし、自分の膝を叩いた。


この物語は、告白。

わたしには誰にも言えない、癖があった……


私は彼女の柔らかい太ももに身体を預ける。


花のような、あるいは、香木のような、

素朴ながらも華やかな香り。


これから行われる行為に、

わたしはドキドキしていた。


彼女はストッキング越しに

私の太ももの内側をツーッと撫でる。


くすぐったくて、声がでそうになるも、

必死に我慢。


それから、彼女がストッキングをゆっくりと、器用に、脱がしてしまうと

スースーした外気が肌に触れ、

恥ずかしいのと頼りない気分でごちゃまぜになった。


彼女は下着からはみ出た臀部の贅肉を撫でたり、

つまんでみたりして弄んでいたが、

やがて、下着に手をかけた。


わたしは慌てて、スカートを押さえつけて抵抗を試みるも、

この格好ではどうしようもない。


わたしはすぐに彼女に制圧されて、

半分ほど()()()()()わたしのお尻を。


パチンッ。


わたしはひん、と情けない声を上げて、

彼女の膝の上で跳ねた。


「いいこと? わたしだって、本当はこんなことしたくないのよ」


彼女は2回、3回と殴打を重ねた。


「いけない子、わたしにこんなことさせて」


「ごめん、なさい……っ」


息苦しさのためか、痛みのためか、

はたまた別の、わたしの救いようもない悪癖のためか……

熱で浮かされたように、目の前がグワングワンと揺れる。


そんなわたしの浅ましい気持ちを見透かしたかのように、

彼女は緩急をつけてわたしの身体を痛めつけた。


パチンッ、パチンッという肉の弾ける音が、

すっかり暗くなった教室に響く。


わたしたちは吐息荒く、甘美な遊びに夢中になった。


しかし、すぐに、ツカツカという廊下を叩く音が

わたしたちの時間を邪魔した。


「だ、誰か来ちゃう……」


「先生でしょう。早く、直しなさい」


「そんなこと言われても」


「ほら、しゃんと————」


がっかりした気持ちと、

助かったという気持ちが半分。


「いつまで残っているの、早くお帰り」


パチッと灯り。


教室を覗いた学年主任の教員が、こめかみにしわを寄せていた。


「は、はーい」


寸でのところで、なんとか体勢を立て直したわたしは

制服を整えながら、気の抜けた返事をした。


教員は嫌そうな顔をすると、

見回りに戻った。


「ふふ、危なかったわね」


赤面した。


危なかった、いろんな意味で。


* * *


この物語は、告白。

わたしの彼女に対する悪癖。


周りのクラスメイトや大人からの期待。

お嬢様という固定観念、抑圧、

だけど、わたしはそんなできた人間ではない。


活字を追いながら、脳裏に情景を思い浮かべる。


悲劇の中心には、いつだって、わたしの恋人。


彼女の苦しそうな、悔しそうな顔を想像する度、

身体に翼が生えて、天まで昇っていくような感じがした。


もっとも、その翼は漆黒なのでしょうが……


気づくと、約束の18時、

わたしの悪癖がお腹の奥底でウズウズし始める。


彼女には申しわけない気持ちはあるけれど、

実際のところ、わたしは知っているのだ。


彼女もわたしと同じ業を背負っているのだ、と。


ゆえに、共犯者。


バタバタ、バタバタ、廊下を走る音、彼女だ。


わたしはウキウキしていたが、

それを表に出すわけにはいかない。


彼女をウンと叱ってやらねばならないのだ。


「ハァハァ、ごめん、遅くなって……」


顔を上気させた可憐な少女が

教室のドアから顔を覗かせる。


ああ、だめよ、にやけてはいけないわ、

さりげなく、さりげなく……


スマホの壁紙を確認、彼女の笑顔。


「18時、17分、28秒」


そう呟いた。

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