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 1943年10月4日。南イタリアを担当する南方総軍司令官のルベルト・ケッセルリンク元帥は、「パツィーフィク(太平洋)」第3小隊から着任の挨拶を受ける。そして、その場に居合わせたのは、南方総軍第10軍司令官のハインリヒ・フォン・フィーティングホフ上級大将だけではなかった。北イタリアを担当するB軍集団司令官エルヴィン・ロンメル元帥は、「上陸作戦時の輸送船や上陸用舟艇を叩くのが効果的だというが、実際はどうやっていたんだ? 上陸前の爆撃や艦砲射撃は生半可なものじゃなかっただろう?」と質問攻めにした。ケッセルリンクに咎められたロンメルは、「もし、彼らが北アフリカにいたなら、あそこで勝っていたのは私だ」と副官にぼやいた。


 「パツィーフィク」の運用する誘導兵器への期待は大きく、国防軍最高司令部(OKW)や、ドイツ国防軍、陸軍、海軍、空軍のそれぞれの間で、どう運用するのかといった綱引きが激化していた。ヒトラー総統も、「”バルバロッサ”作戦の時に彼らがいれば、その年にモスクワは落ちていた!」「彼らがいるのに、どうして日本は戦争に勝てないんだ!?」「100人のヤマブシがいれば、我がドイツなら戦争に勝っている!!」といった具合だ。ある種の熱狂がドイツの統帥部を覆いつつあった。


 それには、イタリア降伏の翌日8月13日に、ドイツ空軍の対艦滑空誘導爆弾フリッツXが、連合軍に投降しようとしたイタリアの戦艦ローマを撃沈した事も関係していた。さらに、その翌日14日には、同型艦イタリアも自沈した。そして、”ねじ込み式誘導部品”を組み込んだ航空爆弾は、フリッツXの上位互換であり、普通の航空爆弾と生産効率は変わらない。海軍からは、「固体燃料の対艦誘導ロケットを搭載した群狼戦術なら、輸送船団とその護衛艦隊も攻撃できる!」「対空誘導ロケットなら、対潜哨戒機も撃墜できる!!」「もう一度、イギリスを締め上げるべきだ!!!」といった声まで上がっていた。



 8月7日にイタリア半島南部へ上陸した連合軍の北上を、可能な限り押し留めて遅くすることが、北イタリアのB軍集団と南イタリアの南方総軍に求められている役割である。イタリア半島の西側にあるローマと南のナポリとの間にあるガエータ湾から、東のアドリア海まで、山や川といった地形を利用した四重の防衛線を築いて抵抗することを計画していた。その時間稼ぎの為の川を利用したヴォルトゥルノ・ライン、バーバラ・ラインが突破されたが、不思議なことに、その後の連合軍は動きを止めていた。本命のグスタフ・ラインと、その防御線上にあるモンテ・カッシーノを守るように張り出したベルンハルト・ラインを守る枢軸軍の兵士たちは、息を潜めてその瞬間を待っている。


 南方総軍の指揮下にある間、「パツィーフィク」第3小隊の警護は、ブレスト以来の国家保安本部のSD(第Ⅲ局)、秘密警察(第Ⅳ局)、刑事警察(第Ⅴ局)といった各局の手を離れる。そして、陸軍総司令部(OKH)直轄の野戦憲兵隊、ドイツ国防軍の秘密野戦警察(GFP)、ドイツ空軍の降下猟兵による警備へと変更された。それからの「パツィーフィク」第3小隊は、グスタフ・ラインとその前方に突出したベルンハルト・ラインとの間を転々としていた。


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