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 1943年9月21日に編成された日本人義勇部隊「パツィーフィク(太平洋)」は、2個分隊合計4名のヤマブシで構成される小隊10個の40名からなる。そのドイツ語通訳は日本陸軍の尉官であり、1個小隊に1名ずつ配属されていた。親衛隊に取調べられたヤマブシ全員の親衛隊階級が、急遽(きゅうきょ)佐官へと格上げされたことで、尉官である通訳との力関係が逆転することになる。


 陸海軍の軍属としてのヤマブシは、最低の地位にある肉体労働の傭人として扱われていた。明治5年に発せられた「修験禁止令」で強制的に還俗させられたヤマブシは、本来存在してはいけない存在だったからだ。戸籍のないヤマブシや戸籍を捨てたヤマブシに召集令状を送る手間を省いて傭人として雇用し、大東亜共栄圏の最前線へと送り込んでいた。


 ドイツ国防軍と武装親衛隊は、8月31日にUボートで持ち込まれた日本陸海軍でのヤマブシの運用法や戦訓の分析に入っていた。日本の陸上と航空機から行われる航空爆弾の誘導の間には、ヤマブシの損耗率にあまりにも大きな差がある。陸上からの迫撃砲弾の誘導でも、日本軍が兵站に大きな問題を抱えていることが伺える。ヤマブシの損耗をいかに抑えるのかという点で、ドイツは日本とは違う試みをすることになる。そのテストケースとして、10月上旬までに、イタリアでの作戦行動に1個小隊を派遣することになった。



福島弁少佐「どごさ行っても、お山は良いものだ」

山形弁少佐「そうだな。欧州には、ふんずさんより高えお山があるどいっても、潜水艦がら降りでがらずっと平地だったもんな」

南部弁少佐「お山見えでぎだのぁ、オーストラリアだったっけ?」

盛岡弁少佐「バカ。それ言うんだら、オーストリアだ。オーストラリアは、ポートモスレビーの向ごう側だ」

福島弁少佐「ポートモレスビーだべ」

山形弁少佐「んだげんと、ドイツさ併合されだんだがら、オーストリアでいう国はなぐなったんだよな?」

南部弁少佐「朝鮮併合みだいなもんだべが?」

盛岡弁少佐「たしか、ヒトラー総統のお国はオーストリアだったはずだ」

南部弁少佐「オーストリアのお人、ドイツのヒトラー総統になって、オーストリア併合したどいうごどが? 話がややごしくなってぎだ……」


 10月1日。イタリア戦線へと派遣された日本人義勇部隊「パツィーフィク(太平洋)」第3小隊は、ドイツ国営鉄道のアルプス山脈を横断する山岳鉄道ブレンナー線の車窓を楽しんでいた。チロル=フォアアールベルク帝国大管区の大管区都インスブルックのインスブルック中央駅から、イタリア社会共和国との国境線である標高1,371mのブレンナー峠まで登り、ヴェネト州ヴェローナのヴェローナ・ポルタ・ヌオーヴァ駅へと降る途中にあった。



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