賢者の杖
俺は鍛冶氏のアルスロット様に一戦を交えて俺は勝つことに成功した。
これでアルスロット様の防具を俺達は買うことが出来る。
さらにアルスロット様は俺達のパーティーに入れてくれと頼まれてしまった。
そこで俺は考えさせられる。もしアルスロット様が俺達の仲間になれば、防具や武器などお金がなくても手に入るかもしれないと俺とリサは相談した。
「ダイン。どうするのアルスロット様を私達のパーティーに入れるつもりなの?」
「これはこちらから頼みたい事だ。もしアルスロット様が俺達の仲間になれば武器や防具を俺達の為に作ってくれるかもしれないし、それにアルスロット様はなかなかの剣術の使い手だ。だからパーティーに入れても良いかもしれない」
「アルスロット様、とにかく俺達は大歓迎です」
そう言って尻餅をついているアルスロット様に手を差し伸べる。
「すまないダイン。私は君達の事をバカにしていたが、ケルベロスやミノタウロスを倒したのは本当の事の様だな」
「はい。アルスロット様、あなたにそう言われるとは思いませんでしたよ」
「そのアルスロット様と言うのはやめろ。今度からあたいの事をアルとでも呼んでくれ。その方が親しみがわく」
「じゃあ、アル、改めてよろしく」
そう言ってアルスロットの手を取り握手を交わす。
「二人とも、立ち話も何だ。とにかくリディアにお茶を入れさせるから中に入って待っていてくれ」
俺とアルスロットと闘った場所を後にして、俺達はアルの言うとおり、中へ入っていった。
その時リディアが俺達にお茶を入れてくれた。
一口飲むと、それは凄く甘い味のする、お茶であった。
「そのお茶はリディアが作ってくれた蜂蜜入りだ」
「蜂蜜って俺達にそんな高い物をご馳走されて良いんですか?」
「良いのか、だろ!?とにかくあたいはあんた達が気に入った。とにかくダインとリサとか言ったな、二人に相応しい武器をこれから作ってやる」
俺とリサは互いに見つめ合って良い仲間が出来たと思って、
「アル、改めてよろしく」
とリサは言った。
「リサとか言ったな賢者見習い。お前もダインの様にいい目をしている。お前に必要な武器を今から作ってやる」
そう言って、アルは部屋の奥へと入っていった。
そんな時である、リディアが、
「あなた達本当にお強いんですね。あんな嬉しそうなアルスロット様を見るのは久しぶりです」
「それよりもアルはどこへ行ったんだ?」
「きっと鍛冶場でしょう。リサ様の武器を作られている最中でしょう」
「リサの武器を作るって、リサは魔法使いなんだよ」
「きっとアルスロット様はリサ様にあう魔法の効果を高める武器を作っておられるのでしょう」
「それでいつ出来上がるの?」
「さあ、明日までには出来ると思いますよ。それまで家の寝室まで案内します」
寝室って、そう言えば俺達はケルベロスを倒して、アルと闘ってかなり疲労困憊なんだよな、それにだからここはお言葉に甘えて、今日の所はアルの所に泊めて貰うことになった。
アルの鍛冶場を見てみると、何やら木の様な杖を作っている感じがした。それにその木を掘っている。それにアルは俺達が見ているのにも気がついていないみたいだ。
そこでリディアが、
「あの人は何かに没頭すると、周りが見えなくなってしまわれるのですよ。本当にリサ様に相応しい武器を作られているのでしょう」
俺達は本当に良い人材が入ったと思って、リサと俺は互いにその事で喜び合った。
「とにかく金は払うよ。そちらも防具や武器を作ることに没頭する程の事なんだからな」
「アルスロット様は気に入った相手にしか武器や防具をお売りはしません。アルスロット様の武器や防具を欲しがる人はいますが、たとえお金があっても、すぐには売らせるような事はしません」
「じゃあ、何であの人は食っていっているんだ?」
「あの人も冒険者なのです。周りから一匹オオカミと言われていますが、まさかあなた達のパーティーに入れてくれなんて私、リディアも驚いています。これでもパルームのリディアは人を見る目はあるんですよ」
なるほど、だから俺達を自分の師匠のアルの所まで案内したのか。
それはそれで嬉しいが、この力は本来の俺の力なのか分からないが、努力して手にした力じゃないんだよな。
そう思うとアルに悪いことでもしているような何か罪悪感的な物が芽生え始めて来た。
まあ、でも俺達はアルと言う最高の鍛冶氏が仲間に入ったんだ。これは大きな利益とも呼べるかもしれない。
アルの剣術もなかなかの物だし、俺はアルと出会ってもっと強くなれそうな気がした。
空を見上げると、もう夕食時だった。
「リサ、リディア、腹が減らないか?」
「確かにお腹が空くね。とにかく今日は街に出て食事でもしない?」
そこでリディアが、
「二人ともお腹が空いているのですね。私リディアがアルスロット様とダイン様とリサ様に最高の料理をおもてなししましょう」
「そんな悪いよ。夕飯までご馳走になるなんて」
「何を言っているんですか?私リディアはアルスロット様のあのような嬉しそうな姿を見るのは本当に久しぶりなのです。だから私が料理を作りましょう」
そう言って、リディアは台所に行ってしまった。
「ダイン、まさかアルスロット様が私達のパーティーに加わるなんて、これは凄い事なんじゃない」
「確かに凄いな。剣術もなかなかの物だし、それに高価な武器や防具をただで購入する事が出来るなんて」
「それよりもダイン。この多大なお金、また孤児院に寄付する」
「そうだな。ケルベロスを倒した事によって、俺達は多大なお金を手に入れた。だから半分俺達が育った孤児院に寄付するか」
俺達はケルベロスを倒した報酬で大金貨二十枚を手にしている。
大金貨一枚で半年分暮らして行ける。
色々と話しているうちに、リディアが食事を持ってきた。
「お待たせしました。さあ、召し上がれ」
そう言ってもてなしてくれたのが、何が入っているのか分からないが、シチューにそれにパンだった。
それにシチューは何か凄く良い匂いがする。
スプーンで一口食べてみると、凄くおいしいシチューだった。
「リディア、このシチューおいしいよ」
「そうですか。お気にめされて光栄でございます」
「ところでこのシチューは何で出来ているの?」
「アルスロット様がキーレンド山で狩ってきたドラゴンの肉を使ったシチューでございます」
僕とリサは酷く驚いた。アルはドラゴンを倒せるほどの強さを持っていることに。
「アルはドラゴンを倒せる程の強さを持っているの!?」
「ええ、キーレンド山にはアダマンタイトを摂取する事が出来て、ドラゴンなんかを倒してローブにしたりしています。アルスロット様はキーレンド山にて武器や防具の材料なんかを摂取しています」
キーレンド山って聞いたことがある。
あそこはレベルの高いモンスターが出ることで有名な山だ。
そんな俺はアルをいとも簡単に倒してしまうほどの力を得てしまったようだ。
アルがドラゴンを倒せるなら俺も倒せると思っている。
俺は本当に吸血鬼として蘇り、最高の力を得ることが出来るようになったみたいだ。
「ダインさんにリサさん。今日はうちに泊まって行かれるのはどうでしょう?」
「そうして貰えると助かる。とにかく今日はケルベロスを倒すこととアルと闘って疲れているし、今日のところはアルのところで泊まらせて貰うよ」
「そうして下さい」
「それよりアルはまだリサの武器を作っているのかい?」
「ええ、きっと明日までには作れると思います。だからダインさんリサさん。今日のところはここで休んで行って下さい」
「分かった。ありがとう」
そう言って寝室に案内されて、寝室も広いが、布団は寝袋で雑魚寝をしているみたいだ。
俺は雑魚寝でも何でも良いから眠ることにした。
本当に今日は疲れた。ケルベロスと戦い、さらにアルと一戦交えて凄く体が応えている。
アルの家で雑魚寝をしていると、窓から月が見える。
月は満月になろうとしている。
フレアは言っていた。満月の夜になると理性を失い、血液を求めて、人を食い殺してしまうことを。
そう思うと俺は凄く怖い思いをした。
★
「出来た!!」
その希望に満ちた大きな声で俺とリサは目覚めた。
何が出来たのか、アルのいる鍛冶場に行くと、木で彫られた杖をリサに渡すのだった。
リサは寝ぼけ眼で、アルの作った杖を受け取り、アルは、
「リサ、これは魔法の威力を強くするための賢者の杖だ」
賢者の杖って聞いたことがある。リサははしくれだが賢者だ。その賢者の杖を手にした物は凄い強力な魔法を強化してくれる杖だと聞いたことがある。
リサが賢者の杖を手にするとリサは、
「凄い、何か力がわいてくるような気がしてきた」
「そうだろ、そうだろ、私はアルスロット、鍛冶師として最高の武器を作ることが出来るのだ」
そこで僕が、
「お金はいくらぐらい払えば良いですか?」
と聞いてみると、
「お金など必要ない。あたいはあんた達を気に入っているのだ。何せあたい達はパーティーなのだから、助け合うのが当然だろ」
賢者の杖を持ったリサから、得たいのしれない、何かが放出されているような感じがした。
「でも私は賢者の杖を持つような強力な魔法を使えるようにはなってないよ。私はあくまで賢者の見習いでまだ半人前以下なんだから」
「まあまあ、そんな事を言わずに、その賢者の杖で広場で魔法を唱えて見ると良いよ」
そうアルに促されてリサは広場に向かって、火炎魔法を唱え始めた。
するとその炎は強大な物であった。
建物が火事になるぐらいの威力だった。
アルは凄く興奮していたけれど、このままではこの辺り一帯、炎に包まれてしまうので、即座にリサは水性魔法を使って、鎮火に務めた。
「どうだい、リサっち、あたいの作った賢者の杖は気に入って貰えたかな」
「気に入ったけれども、私にはまだそんな強力な魔法を使える様な知識は得ていないよ」
「まあ、これから魔法の勉強をしていけば良いさ」