ケルベロスにリベンジ
夜になり、月は半円を描いている。
何かその半円の月を見ていると血を吸いたくなってくる。
やばい俺は本当に吸血鬼、アンデットとして蘇ってしまったみたいだ。
リサの部屋に行くとリサは魔道書を広げて机に突っ伏して眠っていた。
何だろう。リサの部屋の窓から半円の月を見ていると、リサの血を吸いたくなってきた。
本当にやばい事になってきた。
俺は我慢してリサの血を吸わないようにその場から去ってリサが風邪をひかないように、毛布を掛けてあげた。
リサは俺の最高のパートナーだ。そのパートナーの血を吸って殺してしまうなんて言語道断だ。
そんな夜中に、扉からノックの音がした。
こんな夜中に何のようだと思って、ドアを開けると、赤い赤い瞳に白い長い髪に、背は小さいが胸はデカくそれに赤いワンピースを着た少女が現れた。
その姿を見てすぐに分かった。
「お前は俺をアンデットである吸血鬼にした者だな!?」
「そうじゃ、お主にこうして出会うのは初めてじゃ」
「何をしに来たんだ」
「お主に話が合って来た」
「話って何だ」
「今後我の力についての使い方を伝授しに来た」
「そうか、立ち話も何だから、中に入れ」
そう言って赤い赤い目をした赤いワンピースを着た少女を中に入れた。
俺とリサの家の居間に招き入れた。
「そう言えば、名前を聞いていたかったな!?」
「われはフレアと言う吸血鬼だ。お主はすべての魔法を使いこなせる。だが、スキルはメテオストライクしか使えない。今後お主よりも強い者が敵として現れたら、メモリーブラッドを使うのじゃ」
「メテオストライク!?そんな高等なスキルを俺は持っているのか?それにそのメモリーブラドとは何だ!?」
「相手の血を吸うことで相手のスキルや脳内の中を知ることが出来るスキルじゃ。そうすれば相手の弱点を知ることが出来、さらに相手の技を使いこなすことが出来る技だ」
「それよりもどうして俺のような落ちこぼれの勇者にこんな力を与えたんだ」
「お主は前世で我と巡り会い、契りを結ぶ仲になっている」
「どういう事だ。俺にはリサと言う女性がいる」
「じゃが、リサと言うのはただの人間だ。お主は二千年生きる事が出来る。そうなればリサは数十年と言う中で死んでしまうじゃろう。それではお主の伴侶は務まらぬ、じゃから我は見つけたのだ。お主は前世で我と出会い、我と共に生きてきた吸血鬼」
「俺は人間だ。親の顔は知らないが施設に送られて、施設で育った人間だ」
「そうじゃ、お主は前世では吸血鬼であった。それに最高の吸血鬼だった。しかも我の力をもしのぐ吸血鬼あった。じゃから我はやっと見つけたのだ。お主を。そしてそのお主の伴侶は我にある」
「俺にはリサと言う同じ孤児院で過ごしたリサがいる。だからお前とは伴侶になる事は出来ない」
するとフレアは立ち上がり、
「ではそのお主の契りを結ぼうとしているリサを殺すしかないかもしれないな!!?」
「何を言っている!!!そんな事をして見ろ、そうしたらお前を絶対に許さない!!!」
「ならば見届けてやろう。お主とそのリサと言う女がお主と契りを結んでも。お主の強さにはついて行けないし、それにリサと言う女はただの人間だ。後十数年すれば死んでしまう儚い人間の様な者だ!」
「お主は後二千年生きられる。それに我も二千年生きられる。じゃがそのリサが死んでからはお主と我が結ばれれば良いと思っている!!」
「誰がお前なんかと結ばれるか!?」
「そうか、どうやら我はお主に嫌われてしまったようじゃのう」
「だったら俺を今すぐに普通の人間として戻してくれよ。もうこんな力はいらないから」
この吸血鬼として膨大な力を得たのは良いが、リサと結ばれなかったらそんなのは絶対に嫌だと思っている。それだったら俺とリサはいつものように畑を荒らすスライム討伐でお金を稼いで貧相に暮らしていければ良いと思っている。
「それは出来ぬな、もうお主は吸血鬼だ。そのリサという者の契りを結んだ事を見届けてやろう」
「だから見届けるって俺は人間に戻りたい」
「それは何度も言うようだが出来ぬ相談じゃ。じゃがお主のそのリサと言う女を伴侶としてどこまでついて行けるか。見届けてやろう。それに我はお主の味方だ。お主のやりたいことをすれば良い。そして真円を描く月の日は気を付けるのじゃ」
「真円を描く月に気を付けろって何だ?」
「真円を描く月の日は吸血鬼として理性を失ってしまう。そして近くにいる人間の血を吸い尽くしてしまう。もしかしたら、もうお主はこの話を聞いて気がついておるのではないか?」
そう言えば今日は半円を描く月を見てリサの血を無性に吸いたくなってしまった。
フレアの言う通りその真円を描く月の日になったら俺は理性を失ってリサの血を吸い尽くして殺してしまうかもしれないと激しく恐れた。
「不安に思っている様じゃが、安心せい。我はお主の味方だ。お主が我の伴侶とならないならそれはそれで良いとする。じゃがお主とその人間のリサという人間をどこまで伴侶としてもてなせるか、試させて貰うぞ」
「真円を描く月になったら、どうすれば良い」
「その時は我と共に来い。真円を描く時になったら、また我はお主の所に来よう」
「その時はどうすれば良いのだ」
「じゃから、その時は我と共に行くのじゃ、我ら吸血鬼は血を吸うことで生きながらえる存在じゃ、じゃからその時はまた我はお主の元へと現れよう」
そう言ってフレアは立ち上がり、
「そろそろお暇する事にしよう」
「ちょっと待ってくれ俺は血を吸わなきゃ行けない吸血鬼になってしまったのか?」
「そうじゃ、真円を描く月の日にまた合おう」
真円を描く月の日に俺は理性を失ってリサの血を吸い尽くして、リサを殺してしまうことに俺は酷く恐れた。
その日俺は怖くて眠れない夜になってしまった。
そして必然的に朝はやってくる。
★
朝になり俺はリサを起こそうとしてリサが自分の部屋でこもっている所へと行った。
「リサ、朝ご飯が出来たぞ、今日は野菜じゃなくベーコンが食べられるぞ」
するとリサは部屋から出てきて魔道書を見つめながら食事を食べている。
飯を食いながら魔法の勉強をしているのか?
「リサ、食事の時ぐらいは、勉強はやめて、食事に専念したらどうだ?」
するとリサは俺の目を見てきてにらみつける。
「何だよリサ?」
「私はダインの力になりたい。もっと高等な魔法が使えるようにしたいと思っている」
そうだ。リサに大切な話があるんだった。
「リサ、俺は吸血鬼でアンデットとして蘇ったみたいだ。そして真円を描く月の日になると俺は理性を失ってお前の血を吸い尽くしてしまうかもしれないのだ」
「どうして真円を描く月の日に血を吸いたくなるの?」
とにかくフレアが昨日ここに訪れた事は黙っていた方が良いと思って、俺は話す。フレアの事を話すと話がややこしくなるのであまりフレアの事は黙っておいた方が良いと思って言わなかった。
「俺は吸血鬼として蘇り、真円を描く月の日に理性を失って血を吸う様になったみたいだ」
「誰にそんな事を言われたの?」
やばいフレアの事を言うと、リサはきっとフレアの事で嫉妬してしまうかもしれない。
それにとりあえず、俺が二千年の時を生きることを話すのはやめにした方が良いかもしれない。
「とにかくだ。真円を描く月の日は俺に近づくな」
「ダイン!?」
リサは今一納得の出来ない顔をして俺のことを見つめていた。
「とにかく今日もギルドに行って、お金を稼ぎに行こう」
「分かっている。私も魔法の勉強をしたから、まだ見習いだけれども賢者としてのはしくれとしての力は持っているはずよ」
そして俺とリサは朝ご飯を済まして、リサはお昼のお弁当を作っていざギルドに向かうことにした。
ギルドに到着すると、ギルド内は騒然としていた。
「レバナさん。今日はギルドは騒然としていますが何かあったのですか?」
「それがスライム討伐行った人がケルベロスに遭遇して、怪我をした者や、帰らぬ人となってしまった人が続出しているみたいなのよ」
そう言えば俺とリサはスライムを討伐に出かけたときにケルベロスと遭遇して俺は死にフレアという吸血鬼に吸血鬼として蘇らせられたんだっけ。
ケルベロスと言うとミノタウロスよりも強力なモンスターだ。
それでギルド内は騒然としていたのか、
するとリサは、
「ダイン、これは私達の出番じゃない!?」
「出番てお前、俺達はスライム討伐の時に、ケルベロスと出会い殺されかけたのだぞ」
「だから、ダイン私達でケルベロスをやっつけに行こうよ」
「やっつけに行くって、お前、以前俺達はケルベロスに殺されかけたんだぞ」
「だから、今はダインの力と私の力を合わせれば、ケルベロスをやっつける事なんて造作もないことだと思うよ」
確かにそうだ。今の俺とリサならケルベロスに勝てるかもしれない。
だが、俺はケルベロスに殺されかけた。その時俺はトラウマになってしまっている。
「ダイン、ケルベロス討伐に行こうよ。私はダインを魔法で援護するから」
その自信はどこから来る物なのか俺は不思議に思った。
じゃあ、リサの言うとおり、ケルベロス討伐の為に俺はレバナさんの所に行った。
「レバナさん。俺達、ケルベロス討伐の為に行きますよ」
「ダイン君、ケルベロスはミノタウロスよりも強敵なのよ。でもあなたは以前ミノタウロスを一撃で倒した見たいね。だったら任せられるかもしれない」
「だったら俺に任せてくださいよ。ケルベロスは俺がやっつけます」
「じゃあ、頼んだわダイン君。とにかくケルベロスはミノタウロスよりも強敵よ。その事を頭に入れて闘うのよ」
そう言う事で俺とリサは畑を荒らすスライム討伐の時に出会ったケルベロスを倒しに出かけたのだった。
話によると農作物を扱っている農家の人にも被害が拡大していると聞いている。だからその人達の為にもケルベロスを倒しに行かなければならないと思った。
言わば、俺はケルベロスに殺されそうになった。そのリベンジと言ったところだ。