リサの想い
俺は蘇った。それに自分でも分からぬうちに、凄いパワーを感じる。
何だ?この力は?得たいのしれないパワーを感じる。
気がつけば俺は街の門の前に倒れていた。
起き上がると何か違和感を感じたが、そんな事よりもリサは無事なのだろうか?
俺とリサは同棲している。
もしかしてリサは俺が死んだことに悲しみに打ちひしがれているかもしれない。
とりあえず街の中に入り、もう三日月が舞う夜になっていた。
俺がケルベロスに殺されて蘇ってからどれくらいの時が経っていたのか?分からないがとにかく俺とリサが同棲している家に帰る。
家に戻ると、俺は早速リサの部屋に行く。
でもリサはいなかった。
テーブルに何かあった、何やら仕事の依頼のチラシの様な物を見つけた。
それを見て俺は驚愕した。
それは淫売婦の広告だった。
「何を考えているんだリサ!」
人知れず部屋の中で叫び、その広告書を持って、淫売婦募集の紙を持って、早くリサを取り戻しに行かなきゃいけないと思ってその広告書の地図を見ながら走った。
本当にリサはどうしてこんな淫売婦の様な仕事に就くような真似をしているのか?
それにリサと俺は同棲しているが、リサと俺はまだ一線も越えた仲ではなかった。
とにかく急がないとリサの貞操が変態親父共の餌食になってしまう。
★
そして街の繁華街に到着して、店案内の親父に、
「ねえ、あんた、いい女いるよ。あんたもこの店で女の子と良いことしない」
そんな案内人を無視して俺は広告書のチラシの地図を見ながら、俺は淫売婦募集の所まで行くことにする。
そして俺はチラシを見て、淫売婦の店に到着して、中に入ると、店員が、
「おっ、あんたこの店に興味があって来たの?」
「いや違う。ここに緑色のロングの髪をしてとんがり帽子に、青い羽衣を着た女性は現れなかったか」
と聞くと、
「さあな、ここにはそんな女はいないよ。それよりも、この店は良い女の子がいるよ。早速入って気持ちよくしてくれるよ」
ここにはいないのかと思って、リサはどこに行ったのか?俺は色々な淫売婦の店や女性とお話が出来るようないわばキャバレーなどの店を見てリサを探したが、どこにもいなかった。
リサはどこに行ったのか分からないが、それにリサはいったい何を考えてこのようなチラシを持っていたのか気になった。
そして淫売婦の店や、女の子とお喋りしながら、窘めるキャバレーの店を俺は転々として歩いてみると、リサはこのいかがわしい、店が建ち並ぶ中央の噴水広場の石段に座って、悲しそうな顔をしてうずくまっていた。
「おい、リサ!」
と俺が彼女に言うと、リサは俺を驚くような顔をして俺の事を見つめていた。
「ダイン、ダインなの?」
何か俺の事を心配そうに見つめていた。
「そうだ。俺はダインだ。それよりも何でお前は・・・」
話を続けようとしたところ、リサは俺の胸に飛び込んできた。
「ダイン、生きていたのね。良かった」
リサは俺に抱きついて子供でも滅多に見せないような鳴き声で俺の胸を涙で濡らしていた。
そしてリサの涙が落ち着いた頃、俺もいかがわしい店が並ぶ、噴水がある中央広場の石段に二人で座ってなぜリサがこんないかがわしい所にいるのか事情を聞くことにした。
「おい、リサ、何でお前はこんな所にいるんだよ」
「それは・・・」
何か恥ずかしくて言えない事なのか分からないが俺は「はっきり言え!」と一喝してやった。
「私はダインを蘇らせるようにフェニックスの尾を購入するためにこの繁華街で働いて見ようと思ったの。私はダインが蘇ってくれたら良いと思っている」
フェニックスの尾と言ったら、凄い高等なアイテムだ。それを買うために体を売って高額の資金を集めようとしたのか。
俺は感激もしたし、それに激怒もした。
でも俺は前者の方が勝り、俺はそんなリサを抱きしめた。
「リサ、俺のためにそんな事を・・・」
「私にはダインしかいないの。私達孤児じゃない。いつか孤児院でダインは勇者になり私は最高の賢者になってダインのサポートになる約束をしたじゃない」
「リサの気持ちは分かった。とりあえずこのいかがわしい繁華街から抜けよう」
そんな時だった。三人組のいつものギルドで俺達よりも報酬を得ている人に出くわした。
「お前、落ちこぼれ勇者のダインじゃ無いか、お前もしかして、自分の連れを淫売婦に売りつけてそれで金でも、得るつもりなのか!?」
嫌味ったらしい顔をしながら俺の事を見つめていた。
俺はリサの手を握り、そんな奴らの話を聞いたって仕方が無いと思って、その場を後にしようとしたところ。
「何、シカトしてんだよ。この落ちこぼれ勇者ダイン様よ」
と笑いながら俺の事を笑い始めた。
「おい、その汚い手をどけろ!」
俺はそんな連中にナイフの様な瞳で相手を目で殺した。
でも殺したのは目だけであって、奴らではない。
そして奴らは激怒して俺に三人がかりで俺に襲いかかってきた。
俺も格好をつけ過ぎたのか?
こいつらはギルドで俺よりもレベルの高い報酬を得ているような所に派遣されている。
俺がこいつらに勝てる見込みなどないと思っていると、幻聴なのか何なのか分からないがどこからか不思議な声が聞こえてきた。
『あなたは最強の力を手にしている』
そして男達は俺に暴力を振るおうとしていた。
俺は男が暴力を振るう手が、スローモーションの様にすぐに見切ることが出来た。
そして一人の男に顔面にパンチを加えると男は吹っ飛んで、淫売婦の店まで吹っ飛んでしまった。
残りの二人はそれを見て驚愕していた。
「何だ?このこいつの力は?」
「こんなスライムしか相手の出来ない奴に俺達が倒される訳がないだろう」
そう言って今度は二人がかりで俺の事を襲いかかって来たが、奴らの攻撃をかわして、一人の男に肋の骨を折ってやり、もう一人の男に脛蹴りを加えて、足の骨を折ってやった。
自分でも信じられないと思っていた。俺にこんな力があるなんて知らなかった。
そして男達は立ち上がり、今度は武器を取り出して俺にかかってきた。
でも俺は奴らの攻撃を見切ることが出来た。
二人の男がナイフを振りかざして俺に攻撃を加えたが、俺は難なく攻撃をかわして、素手で軽く二人の男を殴って吹っ飛ばした。
そして最後に残った一人の男はショートソードを構えて俺に震えて、俺はそんな相手に目で威嚇した。
すると男は二人の仲間を見捨てて逃げてしまった。
俺は自分の手の平を見つめて自分でも驚いていた。
驚いていたのは連中もそうだったし、リサも驚いていた。
「ダイン、その力、どうして?」
「分からない。俺はいつの間にか強くなっている」
「あの人達、オークを討伐出来るほどの力を持っていたはずよ。それに私達はスライム討伐にしか出来ない落ちこぼれだったじゃない」
自分でもこの力は凄いと思ったけれど、いったい俺に何が起こったのか分からなかった。
仲間を置き去りにされた男二人も俺の強さに恐れをなして逃げて行った。
「ダイン、あなたいったい?」
「とにかくリサ。帰ろう。明日からまた、ギルドに行こう」
「・・・分かったわ」
そう言って俺達はいかがわしい淫売婦の店が並ぶ、繁華街を後にして俺達は自分の家に帰ることにした。
家に到着してリサは言う。
「ダイン。本当に生きていてくれたのね」
「ああ、そうだ。それにリサ、いくら何でも俺が死んだからと行って、淫売婦になる必要などないだろ」
「私みたいな落ちこぼれの見習い賢者には体を売っている方が似合っているわ。それに蘇らせられるフェニックスの尾が必要だったんだもん。それでダインが蘇れば良かったと思って」
淫売婦はかなりのお金を稼ぐことが出来る。でもフェニックスの尾はどれだけリサが体を売っても買える代物では無いことを俺は知っている。
「とにかくリサ、お前はもっと自分の事を大切にしろよ。淫売婦になって、それでもフェニックスの尾を買うなんて無謀にも程があるよ」
「それしか考えられなかったのよ!」
そう言いながらリサは泣きながら叫んだ。
リサはそれほど俺の事が大切なんだと言う事が改めて分かった。
「とにかくリサ、明日もギルドに行こう」
「私達はもう冒険者はやめた方が良いんじゃないかな?」
「どうして?」
「スライム討伐の時に私達はケルベロスに襲われてダインは殺されかけたのよ。それに私はケルベロスに何も出来なかった。それに私みたいな落ちこぼれの賢者には淫売婦として働くのが性に合っているわよ」
「お前は何を考えているんだよ。二度とそんな事を言うなよ。とにかく俺達は冒険者だ俺とリサは二人だけのパーティーだ」
「また、明日もスライム討伐に出かけるの?」
「分からないけれど、俺は先ほどオークも倒すほどの男達を素手で倒した。だから俺はもっとレベルの高い報酬を得られるような依頼を受けようと思っている」
「じゃあ、私もダインについて行く。私はダインのパーティーだから私も参加させて貰うよ」
「そうしてくれるとありがたい」
「それで今度はどんな依頼をギルドに紹介して貰うの?」
「分からないけれど、俺達はオークを倒すような連中を倒したんだ。だから、スライム討伐以外のもっとレベルの高い依頼を受けようと思う」
「でもダインは強くなったかもしれないけれど、私はダインの役に立てるのかしら」
「立てるよ。俺にはお前が必要だ。お前は最高の賢者を目指してギルドの図書室で魔法の勉強をしていたんだろ。お前は立派な賢者だよ」
「私は立派な賢者じゃ無いわ。もし立派な賢者じゃなかったら。私はあの時ダインと私がケルベロスに襲われたとき、ダインを助ける事が出来たのに」
落ち込むリサ。
「そう落ち込むなよ」
「落ち込んで何て無いよ。またスライム討伐の時にケルベロスが現れたら、どうするの?」
そうだ。俺達はスライム討伐の時にケルベロスと対峙してしまった。その事がリサにも俺にもトラウマになってしまっている。
「とにかく俺は諦めないからな。いつか英雄になって俺とお前は最高のパーティーになろう」
リサは瞳を俯かせて、泣きそうな顔をしていたが、とにかくこいつは俺が守るしか無いと実感した。
「ダイン。明日もギルドに行くのでしょ。だからそろそろ寝ましょう」
「そうだな」
と言って俺達は居間のロウソクを消してそれぞれの部屋に戻り就寝した。