落ちこぼれ勇者ダインと落ちこぼれ賢者リサ
ここはどこだ?
俺は確か、スライム討伐に出かけたのにケルベロスと遭遇して殺されたのか?
なぜあのような平穏なスライムしか大量発生しないような場所にケルベロスが出現したのか?
俺みたいな落ちこぼれ勇者はギルドの依頼で安い報酬を得られないがスライムが大量発生して、畑や農作物に影響する様な所にしか行けないはずなのに俺はケルベロスに殺されてしまった。
しかしここはどこなのだろう?
死後の世界なのか。
「いいや、ここは死後の世界じゃ無い。お前は魔物に殺されて死んでしまったのを我が蘇らせたのだ」
どこからか幼い女性の様な声が聞こえて来た。
「俺を蘇らせる?そんな高等な魔法が使えるのは貴族の中にもいないはず、どうしてそんな高尚な魔法を使えるんだ?」
「お前はただ蘇ったのではない。吸血鬼として蘇ったのだ」
「吸血鬼?どうして俺が吸血鬼として蘇ったのだ?」
「それは前世との因縁にある」
「前世との因縁?」
「とりあえず、お前には私の力をくれてやろう」
すると何も見えない真っ暗な空間のような所から、意識を俺は取り戻したのか、視界が露わになってきた。
すると赤い目をして白いロングの髪に凄く整ったかわいらしい少女が人差し指にナイフを切りつけて、血を放出して俺の口に差し込んだ。
これは単なる血の味だが、俺の中から得たいのしれない力が沸き起こってきた。
★
俺が死んでしまったのはどれぐらいの時が経ったのだろう。
確かギルドで幼なじみの賢者見習いのリサと待ち合わせしていた所から遡る。
そう言えばリサは昨日、ギルドの一角で待ち合わせていると約束をしたんだっけ。
どこだと思ってリサを探していると、緑色の長い髪に青い修道士姿の女性を見つけた。
「おーいリサ!」
「あっ、ダイン」
「待ったかリサ」
「待っていないよ。私が早く来すぎただけよ」
「今日も勇者を目指して、スライム大量発生した農作物を荒らすスライムの討伐に出かけよう」
そんな風に俺が意気混んでいると。周りのギルドにいる奴らは。
『何が勇者だよ』『毎日スライム討伐をしているだけだろ』『それで勇者を目指すなんておこがましいにも程があるよな』
俺とリサのことを笑う連中がいる。するとリサが、
「また、あの人達私達の事をバカにしている」
リサが文句を言おうとしているのか、連中に何か言いに行こうとしたところ。
「待てよリサ。あんな奴らはほおっておけ、とにかく俺達は駆け出しでまだ戦闘も間もないんだ。だからスライム討伐が今の俺達には丁度良いんだよ」
そう俺達はギルド内でゴブリンもまともに倒せない落ちこぼれパーティーと言われている。
まあ、たまにスライム討伐の時にゴブリンが出現することもあるが、あの時は奇跡的にクニテカルヒットを撃って倒せたんだっけな、まあ俺が躓いてリサが倒れてゴブリンの眉間に剣が刺さった事でゴブリンを倒しておかげでレベルアップしたんだよな。
「さあ、リサ、周りにバカにされても良いよ。俺達はまだ駆け出しだし、まだスライムを倒して、金を稼いで、それを貯めてアイテムやら武器や防具を買わなければならないのだから」
「でもダイン。スライム討伐だけでは私達の生活が危ういよ、アイテムや武器や防具を買うなんてとてもじゃないけれど出来ないよ」
「じゃあ、スライムを倒しまくってレベルを上げて色々なスキルを覚えて行こうじゃないか、それに飯ならいつも農作物をあさっている農家の人達から農作物を貰っていることだし」
「まあ、使用がないか、私達が出来ることはスライムを討伐する事ぐらいだしね。でも私達はレベルも低いし、スライムばかり倒していたってレベルはなかなか上がらないよ」
「まあとにかく今は俺達は駆け出しだし、周りから揶揄られているが、とにかくリサ、そんな事を気にしていたら伝説の勇者には程遠いぞ。お前も伝説の賢者を目指して頑張っているんだろ。とにかく頑張ろうよ」
とりあえず俺達はギルドの案内人のレバナと言う青い髪にエルフの種族のところに行って、依頼を取ってくる。
「レバナさん」
俺が言うとレバナは目を細めて俺の目を見る。
「何すかレバナさん?」
「またスライム討伐の依頼を受けに来たのね。あなた達それで飯を食うだけのお金にしかならないじゃない。それにそろそろスライム討伐はやめて、村人を襲うゴブリンの退治に出かけたらどうなの?そうしないとあなた達は生活どころか、まともに飯も食べられなくなるわよ」
「大丈夫ですよ。段々スライムの倒し方にもなれて来たし、これからは俺のことをスライム倒しの勇者ダインと呼んでくれたって良いんだぜ、それに飯はいつも農家の人から農作物を貰っているし」
すると、レバナさんは呆れたような顔をして俺のことを見つめてきた。
「何すかレバナさん。その顔は?」
「スライム討伐ね、承りました。とにかく・・・」
「とにかく・・・何?」
「とにかくたまにスライム討伐に出てくるゴブリンには気をつけてね」
と言って俺とリサは、スライム討伐の紙に登録した。
「よし、リサ、今日もスライム達を狩りに狩りまくってレベルを上げて、いつかゴブリン退治に出かけられるようなレベルや武器や防具を稼ぎに行こうぜ」
リサもレバナさんと同じような顔をしている。
「何だよ。リサ、とにかくスライム討伐も仕事の一貫だぞ」
「はいはい。分かっていますよ。落ちこぼれ勇者に落ちこぼれ賢者」
「お前自分まで否定してどうするんだよ」
「否定したくなるよ。私の魔法だって、ギルド内に設置されている図書室の魔道書を見て魔法の勉強しているけれど、ギルド内の図書館にはあまり強い魔道書がないんだから。それにもっと高等な魔道書を買えるぐらいのお金が欲しいわよ」
「まあとにかく焦りなさんな、もっともっとレベルを上げて、高等な魔道書を買えるぐらいのお金を稼げるように頑張ろうぜ」
「ダインのダガーも刃こぼれしているじゃない。そんなのじゃ、いつかはスライム退治も出来なくなるよ」
「大丈夫だって。今日もスライムを大量に討伐してレベルアップしてギルドからの依頼で金を稼ごうぜよ」
ため息をつくリサ、本当にリサには苦労をかけてばかりで申し訳ないが、俺だって村人を襲うゴブリン退治に出かけたいが、俺も臆病なのか?その一歩前進が出来ないんだよな。
そうして俺達は街を出て畑荒らしのスライム達を相手に出かけるのであった。
早速、ジャガイモ畑にスライムが荒らしている。
「よしきた、リサ、準備は良いか?」
「ええ、任せて」
俺は勇者ダイン。俺の綻びたダガーのサビにしてやろう。
ジャガイモ畑にはスライムが出現して、俺達は立ち向かう。
相手はスライムが三体。余裕で俺達は勝つことが出来る。
スライムは襲って来るが、俺の敵じゃない。早速一匹ダガーのサビにしてやった。
リサはスライムの弱点であるサラマンダーを召喚して火属性の魔法を唱える。
するとスライムは一体俺が倒してリサが二体スライムをやっつけた。
「やったなリサ、この調子でスライムをドンドンやっつけて行こうぜ」
村を襲うスライム達を俺達が狩り、そしてギルドで報酬を得る。それに俺達はスライムを倒しまくって、レベルをガンガンあげたいと思っているが、それも限界なのかもしれない。
でも俺達は仕事をしている。村人の作物を荒らすスライム達を倒して、俺達はどんどんレベルが上がっているはずだ。
また他の畑に行くとスライム達は農作物に危害を加えようとしている。それにその当主はクワでスライム達を攻撃しているが、なかなか倒せそうにない。
ここで俺達の出番だ。
「おっさん。スライム達は俺達に任せろ」
「頼むよ、兄ちゃんに嬢ちゃん」
今度のスライム達は五体いる。
俺は二体のスライムをやっつけて、さらにリサがスライムの弱点である火属性の精霊サラマンダーを召喚して、炎を浴びせ、三体のスライムをやっつける事に成功した。
この調子でスライム達を倒して、そろそろ腹が減ってきた。
「リサ、そろそろ飯にしようぜ」
「そうね」
そう言ってリサはバックから、タッパーを取り出して、俺に一つ渡して、自分用のタッパーを取り出した。
中身を見てみると、ニンジンにジャガイモにほうれん草だった。
「おう、うまそうじゃねえかよ」
「本当にそう思っているの?私達が食べれるのはいつも農家を荒らすスライム討伐で貰った野菜しか無いのに・・・」
「お前が調理してくれた野菜はおいしいぞ、それに、飯は農家からのもらい物で、ギルドではスライム討伐で得た金で俺達は食っていけるんだからな」
「私は野菜だけじゃ無くて肉が食べたい」
「何贅沢な事を言っているんだよ!」
「ゴブリンをやっつける事が出来るようになったら、私達肉が食べられるのよ。それなのにダインはいつもスライム討伐で、農家から分けて貰った食べ物しか食べられないのよ。それにスライム討伐の依頼では到底武器や防具を買うお金なんて無いよ」
「まあ、とにかく俺達はまだ駆け出しの冒険者だ。お前の気持ちは充分に分かるよ。とにかく俺達は何度も言うようだが、駆け出しなんだ。そんな俺達にまだゴブリン退治は到底出来ないよ」
「確かにそうね。もっと良い防具があれば良いんだけれどもね」
いつものリサの文句だった。俺ももっと強くなって良い武器が買えるようになったら、リサにたっぷり良い思いをさせることが出来るのにな。
そして飯も食って俺達はまたスライム討伐に出かける。
「とにかく、リサ、お前には苦労をばかりかけさせているけれど、いつか俺もお前も強くなっていつか貴族の連中を驚かせる様な強さになって、行こうじゃないか」
「また、夢みたいな事を言っている。でも私達貧民にはスライム討伐が似合うのかもしれないわね」
スライム討伐が似合うか・・・。
まあ、とにかく今はゴブリンを倒せるぐらいの力を得て、リサに肉を食わせてやりたいとも思っている。それに高等な防具や武器、さらに高尚な魔道書を購入出来るような金を手にしたいと思っている。
そんな事を思いながら、次の畑に行こうとすると、何やら雲行きが怪しくなってきた。
「ダイン、雲行きが怪しくなってきたね」
「ああ」
そんな時である。俺達の目の前にケルベロスが現れた。
「何だ!こいつはケルベロスだよな。何でスライム討伐のこんな平穏な所にこんな怪物が現れたんだ?」
「わっわっ分からないわよ。とにかく私達が敵う相手ではないわ」
するとケルベロスは雄叫びを上げて俺とリサは足がすくみ、とにかくここは逃げるしか無いと思っている。
「リサ!逃げるぞ!」
「うん!」
そう言って俺とリサはケルベロスに敵う相手だと思っておらず、逃げるしか無いと思っている。
そして俺はケルベロスの足に抑え付けられてしまった。
「ダイン!!」
捕まった俺に対してリサは心配する。
「リサ!逃げろ!俺の事に構うな!」
リサは俺のことが心配なのか逃げるのをためらっている。
「良いからにげろーーーーーー!!!」
するとリサは俺の言うとおりにしてくれて、逃げてくれた。
「俺はこんな所で死ぬわけにはいかない。俺は勇者ダインだ」
そう言いながら、敵わぬ相手とは知っていても、俺は片手に握っていたオンボロのダガーをケルベロスの足に切りつけたが、ダガーはいとも簡単に折れて、俺は死を覚悟するしか無かった。
どうしてこんな平穏な所にケルベロスのような魔物が現れたのか不明だが、俺は死にたくなかった。でも俺にも、俺を心配しながらも逃げて行ったリサにもどうすることも出来ない相手だと言うことは分かっている。
★
そう俺は死んだんだ。ケルベロスの鋭い牙に八つ裂きにされて。
そして俺は蘇った。謎の赤い赤い目をして白いロングの髪をした女の子に助けられたのだ。
どうして俺は助けられたのかは不明だが、とにかく蘇った俺は凄くパワーが漲ってくる。
女の子の血を吸って凄まじいパワーを俺は手にした。
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