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約束と契約2  作者: オボロ
12/30

#12 文化祭に抱く期待と恐怖



コンッ!コンッ!コンッ!コンッ!

ダンッ!ダンッ!

バタバタバタバタッ!


「そっち持って!」

「こっち押さえて!」


放課後の校内では、明日に迫る文化祭に向けて、準備の追い込みに励んでいる生徒達がたくさん居た。

マリアのクラスでも、勿論、多くの生徒が居残って、教室内と外を甘味処らしい雰囲気に作り上げていた。


「おりがみ、まだまだたくさん必要になるから、どんどん作ってください。」


クラス委員の津谷つたに美羽みわが、折り紙班の女子達に言った。

折り紙班は8人居て、津谷を合わせた8人の女子達が、和をイメージする様々なモノを、折ったり切ったりしながら折り紙で作っている。


「あら、月城さん、上手じゃない。」

「本当、もう鶴は完璧ね。」


マリアが折った鶴を見て、同じ班の女子達が褒めた。

マリアに鶴の折り方を教えたのは津谷で、津谷は他に、紙風船の折り方もマリアに教えていた。


「じゃあ、次は、これ、作ってみる?」


津谷は、今しがた作り終えた和傘を、マリアに見せた。


「うん。教えてほしい。」


折り紙が得意という訳ではなく、折り紙を覚えたいという理由で、この班に入ったマリアは、喜んで和傘を教えてもらうことにした。


マリアのクラスの飾りつけは、主に折り紙で締められていた。

すだれやよしずに、折り紙で作った和風のモノを貼り付けていく。

それだけでも十分に、和の雰囲気は出ていた。

明日は全員、自分の浴衣を持って来て着ることになっている。

おそろいの白い襷を掛け、女子はエプロン、男子は前掛けをする予定だ。

大きな鍋もコンロも、用意出来た。

器も箸もスプーンもある。

メニューの材料は、全て揃っていて、明日、文化祭が始まるまでに、下準備を済ませておけば、OK。

学校の行事で、こんなにもワクワクするのは、初めてかもしれなかった。



「明日が楽しみ。」


マリアは、つい、言葉にしていた。

初めての文化祭が、こんなにもワクワクするのが嬉しい。

初めて通う日本の学校で、クラスの人達と一緒にやる、初めての行事が、こんなにもワクワクするもので嬉しかった。


「わたし達も楽しみ。」

「そうそう、楽しみ。」

「絶対、みんな、楽しみにしていると思う。」


折り紙班の女子達が、意味ありげにマリアを見た。


「お客さん、きっといっぱい来るよ。」

「月城さん目当てに、絶対たくさん来るよ。」

「なんたって、月城さんの浴衣姿だもん。来るよねぇ。」

「ねぇ。」


「?」


彼女たちは、とても楽し気に言っているが、言っていることの意味が分からなくて、マリアは首を傾げた。

フフフっと、彼女達は笑うだけ。

だが、津谷が、あっさりと種を明かした。


「月城さんが浴衣を着るってこと、かなりもう噂になっているの。月城さんは知らないかもしれないけど、あなた、結構、人気あるのよ。」

「え⁈」


何が?

何の?


あまりに突然の発言に、マリアは混乱した。

頭の整理が出来ていないマリアを、そのままにして、津谷は、とどめを刺した。


「明日は、このクラスの売り上げに、しっかりと貢献してもらいますからね。」

「⁈」


一体、どういうことだろう……?


にやりと笑った津谷に恐怖を抱き、マリアの思考は停止した。













「文化祭は明日だったね。」


夕食を食べている時、琴音は唐突に言った。


「……っ‼……うん。」


一瞬、ぎくりとしたマリアは、琴音の目を見ることが出来なかった。

昨日までの反応と、明らかに違っていることに、マリア自身、気付いていなかった。


昨日までのマリアは、初めての文化祭が楽しみで仕方ない、という感じだった。

文化祭のことは、何を聞かれても、マリアは浮かれていた。

しかし、今日のマリアは、初めての文化祭が怖くて仕方ない、という感じだ。

文化祭のことは、今は何も考えたくないように見えた。


「明日は、準備で早く行かなきゃならないから、もう寝るね。」


誰とも目を合わさず、逃げるように部屋へ戻るのも、不自然だった。



「………。」

「………。」

「………。」


琴音と凪とB・Bは、不審げに、マリアが出て行った戸を見詰めている。



「………。」

「………。」

「………。」

「………。」

「………。」


使い魔達は、互いに目配せして、頷いていた。











パンっ!パパンッ!


花火が上がり、都ヶ丘高校の文化祭が始まった。

開催と同時に一般公開も始まり、都ヶ丘高校の生徒ではない人達が、続々と校内に入って来た。


「3年3組、お化け屋敷やってまーす!」


「巨大迷路ありまーす!参加してみてくださーい!」


「11時から体育館でバンドやりまーす!」


呼び込み役の生徒達が、チラシを配りながら大声を上げていた。



「マリアのクラスって、1年3組だよな。」


『都ヶ丘高校文化祭』と書かれているパンフレットを手にしたバトが呟いた。


「なぁ、あっちからいい匂いがする。」

「だめだよ、クロ!マリアのクラスが先!」


ふらふらっと、歩き出そうとするクロをヴィゼは捕まえて、目的地に向かった。

ノラもドドも一緒だ。

5人は、マリアの様子が気になって、こっそり都ヶ丘高校に来たのだった。







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