第七話 お前の名
自分はしょっちゅう改正をしているので、過去話も是非ご覧ください
「さてと…」
服をつくり、外へ出る準備ができた俺たちは、洞窟の外へと歩いていた。
「あー、お主、来るぞ」
「ん、分かってる」
互いに敵を捕捉し、構える。
「キシャアッ」
単調な動きを避ける、まではよい。
「水槍×5」
強力な魔術が使えない俺は、手数で勝負するしかないのだ。
(フブキはあれを使わないと結構弱いものねー)
結構ぶっちゃけますね、ニル様。
「お主って呼びにくくない?」
「むう、確かにの」
「お主の名は?」
「高瀬フブキ、フブキだ」
「フブキ…よし、フブキ、よろしく頼むぞ」
「OK」
「おっと、またきたのぉ、こんどは多いぞ」
(フブキ、覇龍には見せてもいいんじゃない?)
そうかもですね、ニル様がそういうならやってみますか。
「もう一回任せてくれない?」
「ん?まあ、よいぞ」
「ん、ありがとう」
「まあ、見てて」
自然の中から力を貸してもらうこの技は環境によって効果が変わる。
湿気や周りの水分を集め、小さな水球を作っていく。
「小水球」
やがて小水球も融合していき、それぞれが形作る。
「水剣×50」
「こんなものか」
さっき倒した魔物の仲間が大群を引き連れてきたが、この数なら問題はないだろう。
それぞれの水剣が弧を描いて、魔物の一体一体に命中する。
「よし、先に行こう」
覇龍が固まっているが、気にしないでおこう。
「ど、どうやったんじゃ?」
「俺が編み出した魔術」
引き攣った笑みを浮かべて覇龍が言う、
「なんたる無茶苦茶な…」
それ以上言うこともないだろう。
(ちょっとフブキ、私のおかげてしょー!)
そうですね、ニル様の助言のおかげで助かりました。
(ふふん)
俺は魔力量が極端に少ないですからね
(病気とか以外でこんな少ないの見たことないわよ)
ニル様でも?
(私でもよ)
そりゃ驚かれるわけだ。
「お主、さては化け物の類か?」
「それはお前だろ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あれから、覇龍が加減を間違えて地盤を崩落させたり、転移魔法陣にかかり洞窟の奥深くまで飛ばされたりと、色々あったが、洞窟の出口に近づいてきた。
「全く散々な目に遭ったのぅ」
「そのほとんどが覇龍さんの所為ですけどね」
「細かいことはいいんじゃ」
「それより、覇龍さんとはお主こそ呼びづらくないか?」
「まあ、そうと言えばそうかな?」
「覇龍さん、名前は?」
「ない」
「は?えっ名前がないって」
「親は居るには居るのだがな」
何か言えない事情があるのだろうか。
(フブキ、その子の名は…)
ん?ニル様、何か言いましたか?
(いや、なんでもないわ)
「まあ、好きに呼べば良い」
好きに呼べば良い、か…
「"つゆ"」
覇龍が振り向く。
「なんじゃそれは?」
じーっと怪しむ目でこちらを見つめる。
「覇龍さんの名前」
「つゆとは?」
「俺の居た世界の色の一つに露草色があって、髪の色が似てるから、じゃあ、つゆが良いんじゃないかな、と」
「つゆ、つゆ…よし、妾の名はこれから、つゆじゃ、よろしく頼むぞ、フブキ!」
「あぁ」
歩いているうちに出口も近づいてきた。
上機嫌なつゆと歩く洞窟は、なんだか感慨深かった。
つゆくさ色は実際にあり、とても可愛い色なので検索してみてください!
《大切なお願い》
・面白かった!
・続きはよ来い!
と思ったら、ブックマークボタンを押していただけると、作者のモチベーションが上がりますので、是非押してください!