第六話 至福の時間
テレビで汗だくになりながらも居合の練習を重ねる女性を見て、努力と技術で成り上がる主人公を書こうと思いました。
「で、今のお主はどんな状態なんじゃ?」
「ん、種族は半人半鬼。性別は女、ステータスは…下がってるな。」
半人半鬼は、半分が人間で、半分が吸血鬼のことか。
「性別に関しては…まあ、そういうこともたまにはあるしの、それより下がったじゃと?」
問題ない、だからあそこにいたのだ。
「うん、レッサーバットのときよりね」
「ちなみに、どんぐらい…」
「平均のステータスは、8。」
ある理由でここまで低くなってしまったのだが、それは承知だ。
「は?」
雪女も真っ青になるほど冷たい声が洞窟を木霊する。
「すまん、妾の聞き違いかもしれない。もう一回いってくれはしないか?」
覇龍ほどの耳の良さならわかっているだろうに。
「だから、平均の身体的ステータスは、8。」
顎が外れてるのではないか、というほどに口をあんぐりと開けて呆ける覇龍。正直笑うのを我慢している。
「こ、この世界の人間の子供の平均ステータスが、24…」
「うわっ俺弱っ」
いや、人間の子供が特別強いという可能性も…
「ちなみに、覇龍さんのステータスは…」
「平均身体的ステータスは、千を超えておるな」
「ぶっ壊れてんだろ」(俺の千万倍以上か」
はっ、本音と建前が逆になってしまった?いや、合ってるか…
おそらく、息を強く吹きかけられるだけで吹っ飛んでしまうのではないだろうか。
「ただ、身体的と言ったでしょ?技術に関しては、ちょっととんでもないことになってて、覇龍さんの魔術熟練度は?」
「80あたりじゃの」
流石に覇龍だけあって高い。
「あぁ、ちなみに俺の熟練度は、90を超えてるよ」
こっちでは魔術を使ったことがないけど、多分いけるだろう。
「すまん、もう一回言ってくれんか?」
「さっきとデジャヴじゃん、もう一度だけ言う、俺の魔術熟練度は、90を超えてるよ」
「ど、どうしてそんな数値に!?」
「いやー、ちょっと一悶着あってね」
一悶着どころではないが。
「一悶着って、お主は一体進化過程でなにがあったんじゃ…」
色々ありましたよねぇ、ニル様?
(あり過ぎでしょう)
聞き慣れた声がする。ニル様、覇龍がこんなにも慌ててますよ。
「人族がここまで、高い数値を出すなんて久しぶりに見たのう」
(覇龍ね…実際に見たのは初めてだけど、これは、確かに強いわね)
ニル様の声が頭に響く。やっぱり覇龍って強いんですか?
(そうね、低級の神族なら渡り合えるかもしれないわ)
「一回見せてもらった方が良さそうじゃ」
えっ、ちなみに、ニル様にも通用しますか?
「お主」
(バカ、そんなわけないでしょう。私と渡り合える奴なんて、いくら世界広しと言っても、数えられる数しか居ないわよ)
やっぱりですか。
「お主」
(それより、覇龍さんがなんか言ってるわよ、聞いてあげたら?)
あっやべ、忘れてた。
「お主、一回魔術を使ってはくれんか?」
「あー、俺水の魔術しか使えないけどいい?」
全然おっけーじゃ!とキラキラした目で見てくる覇龍をよそに、準備を始める。
「水球×3」
三個同時発動は疲れるな。
ん?覇龍が固まっている。もしや、お気に召さなかったか?
「お主…」
お主?
「凄いのう!」
ほっと息を吐こうとしたところ、めんどくさいのがきた。
「で、どうやったんじゃ?」
満面の笑みを浮かべて、純粋な目で質問をしてくる覇龍。正直これに関しては言えないんだよな。
「ごめん、これは言えない。」
(うんうん、フブキの核心に至るものだものね、これがないとフブキはただの雑魚だから、明かすことは余程の事態じゃない限りはやめなさいよ)
雑魚って、まぁ、その通りなんですけどね…
「ふむ、理由は?」
「それも言えないな」
いたちごっこな気が…
「主従命令だ、理由を言え」
(あら、命令までしてくるの、そこまで知りたいのね、でもフブキには…)
「やだですね」
「なっ!お主、なぜ主従命令を断れる!?」
何でって言われても、それより大切な契約があるので。
(嬉しいこといってくれるじゃない。)
若干テンションが上がっているニル様をよそに覇龍へと目を向ける。
「まぁ、元より主従の命など使うつもりはなかったからいいといえばいいかの」
なんか、意味わかんない納得のされ方をされた。上下関係にはそこまで興味がないのかな?
(まあ、確かにただ言いなりになるペットもつまんないわよね)
そういうものですか?
(そういうものよ、フブキだって、無表情の機械みたいな犬がいたらちょっと嫌でしょ?)
まあ、確かに愛想があったほうがいいですね。
(おまけにこの覇龍はそういうの嫌いそうじゃない。主従の命は奴隷などにも使うから、嫌悪感でも抱いてるんじゃない?)
えっ、そうなんですか?じゃあ、俺、今奴隷状態?
(そういうわけじゃないわ、でも、奴隷との契約に使うことが多いのも事実よ)
(私は奴隷なんて大っ嫌いだけどね)
確かにニル様はそういうの嫌いそうですね。
(私から命をだすことはあんまりないから、安心していいわよ)
滅多にってことは出すには出すんですか?
(まあね)
「あの」
「ん、どうした?」
「とりあえず、服を着てくれんか?」
「あっ」(あっ)
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