第四話 裏技
RPGゲームってゲーム崩壊レベル裏技使っても虚しさが残るだけですよね
ペット?え、ちょっと待って、ペット?
犬っころとかキュートな猫とかの、ペット?
動揺というか、何を言ってるんだこいつという呆けた様子を見せている俺に気づいたのか、この覇龍は言う。
「ペット、眷属が必要でな、お主といると楽しそうだからの、じゃあお主を眷属にしてしまおうとな」
眷属、眷属?ってあの、主に従うあれか?じゃあ、こいつの眷属になったら…「行けっフブキッあの国を潰すのじゃ!」とか命令されんのか?絶対嫌だな。
それに、面白いってどういう事だ。特別なスキルとか別に持ってないんだがな。
「お主、異世界から来たものじゃろ。」
ッ!何で気づいた!?別に隠してはないけど!
「それに、あやつらと違って転生者か」
あやつらって誰だ?俺の他にも、この世界に来た奴がいる?
「つまり、お主には人の人格があるという訳だ。」
ぶんぶんと縦に首を振る。
「少なくとも、お主は妾を殺す気などないだろう?あやつらと違って」
いえいえ滅相もございません!それよりあやつらとやらが気になるんだが。
「なら良い、堅苦しいとか、妾の力を目当てにやってくる奴らは嫌いでな!」
ああ、これだけ力があると狙われたりするのか。覇龍の力を求めて、冒険者が雇われる。あぁ、すぐ想像できてしまうな。
「それにのぉ、妾の眷属にならばそれ相応の力は手に入るぞ?」
思わず喉がゴクリと鳴る。覇龍の力、それは一体どのような効果を及ぼすのだろうか。
「どうじゃ?悪くないじゃろ?」
なる。というかならないメリットが無い。だって断ったら、人間の国を何個も潰す覇龍だ。何をするか分からない。断ることなど許されていないのだ。
俺の判断にうむ!と男らしく返事をした覇龍は儀式の準備を始めようと言う。儀式とかあるんだ。
「お主は基本的にそこに立っとるだけで良い。」
そうなのか、一安し「妾の血を飲んでもらうからな」
ん?血を飲む、血を飲む?聞き捨てならない言葉があったが、もう始まってしまった。
「ーーー……従いし者となり、我が眷属となる。今ここに覇龍の名において、レッサーバットと契りを交わす、ーーー……」
何やら異世界っぽい厨二心をくすぐる詠唱を唱えている。
「血を飲め」
差し出された白く細い腕には、一本の赤い筋が通っていた。え?これ飲むの?え、本当に?
「血を飲め」
あっはい、飲みます。ゆっくりと、確実に血の味を確かめていく…
!?
何だこの、味は!美味しい!
まるで何年もののワインのような、豊満な香りが漂う。つい沢山飲んで、腕についた血を飲み尽くしてしまう。理性が崩れかけていたところ、覇龍が呼び覚ます。
「馬鹿、飲み過ぎだ!一滴で十ぶ」
突然身体に痛みが走る。燃えそうなほど心臓は熱く。鼓動がバクバクと聞こえるほどに強く、疾く鳴る。
「お、おい、どうした?」
次第に俺の体は発光していく。
「これは…」
俺はここで死ぬのか?身体が崩れていくのが分かる。
異世界に来て数日、高瀬フブキ、死んじゃうのか。
せめて、誰か人と会いたかったなぁ。
そのまま意識が薄れていく。
「……」
◇ ◇ ◇
青色の少女がこちらを見下ろす。こいつは…
「覇龍?」
「やっと起きたか」
何故しゃべれる?何故見える?というか、何故生きてる?
様々な疑問に上を向いて考え始める俺に覇龍は呆れたような様子で言う。
「お主、どうやら進化したらしいな」
進化、日本人ならば知っている人が多いであろう言葉に首を傾げて惑う。
「進化ってどうゆうことだろう?」
また思ったことが口に出てしまった。
「妾も見るのは久しぶりじゃったぞ」
久しぶり、ということは過去には見たことがあるのだろう。
進化とは俺が知っているので間違いないのだろうか。
「お主、レッサーバットからヴァンパイアに成ったのじゃよ、本来ならあり得ないのだがな」
そっか、ヴァンパイアになったのか。
「本来ならあり得ないって?」
「妾の血を飲み過ぎで死ぬのだ、本来は」
「えっじゃあ何で俺は…」
「お主のスキルがあるじゃろ、吸血とかそんなものが、あれの能力を説明してみよ」
「えっと、対象の血液を吸うことによってステータスを一時的に上昇する、だっけ?」
「大体そんなところじゃろ、妾は強力であるがゆえ、血なぞ一滴以上も飲めば、レッサーバットなどは耐えきれず身体が崩れていくのが普通なのだがな」
「お主のスキルが発動したのじゃ、恐らく血が濃いほど強化率が上がるとかな。とんだ荒療治じゃ」
「へぇー」
結果良かったんじゃ無いのか?
「へぇー、じゃない。こんな裏技があったとは…」
「裏技って?」
別に効果通りの能力だろう。
「その、いわゆるスキル「吸血」はな、雑魚と呼ばれるものの一つなんだ。」
「吸血の効果があるうちに進化すれば強化が際限なくできる。これはまずいな、まわりにバレると非常に厄介だ。」
なんかぶつぶつ言ってる。
「でも結果的に成功したんだからいいんじゃないのか?」
「よくない、普通は強化率には限度があるのじゃ」
「そう、通常は強化率にも限度があり、耐えられないはずなのだが、契約がそれを可能にした?」
あの覇龍が戸惑っていますよ、流石ですね。ニル様
邪神って、いいですよね