申し訳ございません 【4】
「それでは、もうすぐ昼食のお時間でございますので__用意が整いましたらお呼びに上がります。それ以外でも何かご用が御座いましたらお申し付け下さいまし」
「は、はい、その時は、是非__」
タツローは必死でチェレミーに調子を合わせるとちぐはぐな答えを返した。
“しんどいなあ__”
チェレミーが部屋を後にしたのち、漸く室内で一人になると、ソファにへたり込む様に腰を沈めたタツローが溜め息をついた。
“御奉仕されるちゅうのはエライ大変な事っちゃなあ__”
そんな気楽な立場ではないはずであろう。
しかし、タツローは事態の深刻さを未だ認識していないらしかった。
『いつまでも、ずっと、ここに__』
正直、昨日チェレミーの口から出たこの台詞を思い出すと身震いするようなタツローではあったが。
“ん、まあ、何とかやり過ごしたらエエがな”
この男、用心深い性格かと思えば、肝心な所で妙にズボラで大雑把な一面がある。と言うのか、今は屋敷に居座る事が大事であり、それ以外の事は重要ではないのだ。
“一応、調子は合わせとかにゃあ__”
館の主の娘がああまで尽くしてくれようというのである。本音を言えば悪い気はしないし、ハッキリ言ってしまえばもう成り行きに任せようという、投げやりな気分になったとも言えるのであった。
この不用心が、彼の命取りになるのである。