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おてやわらかに 【6】

「タツロー様」

「はい__」


チェレミーの呼び掛けに、呼吸を合わせる様にタツローが答える。


「御紅茶を__」

「これはかたじけない__」

傍で見ていれば笑い出すようなタツローの応対ぶりにも些かの動揺も無く、チェレミーは一心に想いを込めて応じていた。もしかしたら、チェレミーも気負いの余り状況を普通に把握できていなのかも知れな。



ティーセットをテーブルに並べて、茶を注ぐ瞬間にも、心地良い疼きを抱きしめるようなたたずまいのチェレミーであった。そんなチェレミーを前に、息を殺してそこに座すタツローの姿は慎重そのもので、以前ヤクザに雇われて、町の与太者を始末する時に見せた時以上の用心深さであった。



「どうぞ__」

薫り高い上品な芳香の漂う中、チェレミーに促され、仄かに湯気を上げる飴色の液体を満たしたティーカップを口に運ぶタツローであった。そんなタツローから追い詰められたような焦燥感が漂ってくるのは何故だろう。



チェレミーの見守る中、タツローは無心で、文字通り思考停止状態のまま、何も考えずカップを口に運ぶ__その時。


「__!」

「タツロー様?!」

タツローが慌ただしく口からカップを話した。その勢いで、当然カップに注がれた熱い紅茶が零れてタツローの膝にかかった。


「あちゃ、あ熱ウ!」

「タツロー様!」

慌てふためくタツローを見かねて駆け寄ったチェレミーだが、矢張り本職ではない俄かメイドの悲しさ、咄嗟の事態にどうしていいか分からない。


「大変、タツロー様!」

「あ、大丈夫、大丈夫でっから__」

熱いと言っても熱湯が掛った訳ではない。その時は幾分熱くとも、火傷を負うほどの温度ではなかった。カップをテーブルに置いて、平静とは言い難い物の何とか持ち直した口調でチェレミーに答えた。


「__でも」

「いやいや、御心配なく」

きまりが悪そうに答えるタツローに、チェレミーが心配そうな眼差しを向けた。

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