桜桃
次の日菫は、桜子と桃花に藹藹喫茶に来てもらっていた。
「ありがとうございます。すいません、こんなことになっちゃって」
「大丈夫。大丈夫」
桜子は店に入ってから、ずっとペコペコしている。
当事者の桃花は店の中にいるお客さんに話しかけまわっていた。
「ねえねえ!それなあに?」
「ん~?これは珈琲だよ」
ご丁寧なことにお客さんは大体の人が桃花の質問に答えてくれた。
「ごめんなさい。あの子元気だから」
「謝らなくていいよ。見てるだけで面白いから」
桜子は桃花の様子を見てもっと申し訳なさそうになり、菫はアハハと笑っていた。
ガチャッと騒がしく音を立てながら女の子が菫の家から喫茶店に繋がるドアを開けて入ってきた。菫はその女の子を見てニコッと微笑む。
「おはよう。若葉」
「おはようございます。菫さん、あ、桜子さんお久しぶりです!桃花ちゃん元気ですか?」
彼女の名前は檜垣若葉だ。菫の家に訳あって12歳の時から居候している。現在は高校生で、喫茶店の手伝いもやってもらっている。
ちなみに菫の家は喫茶店の左側にあり、喫茶店と繋がっている。元々菫も住んでいた場所だが、今は若葉だけが住んでいる。
「あ、桃花ちゃ~ん!!」
若葉は桃花を見つけるとすぐに駆け寄り抱きしめた。
「きゃー!!苦しい!」
きゃははと桃花が笑っている声が店内に響く。
それを見て桜子は少し安心したみたいだ。
「これからお願いします。」
「うん。分かった」
「あ、最低でも1ヶ月に1回は会いに来れるようにします」
この喫茶店の上にある家に居候するのを知らない桃花と居候してくると知らない若葉がじゃれあっている姿を桜子と菫は優しく見守っていた。