少女(ダンジョンマスター)+自称魔王軍四天王(1736字)
『あなたはダンジョンマスターになりました』
機械的な声が聞こえる。
わたしは、気がつくと洞窟の中に立っていた。
『チュートリアルを開始します』
「なにこれ?」
目の前には大きな水晶玉がある。
『あなたのステータスを表示します』
水晶玉から声が流れる。
「えっと……」
名前:(なし)
種族:人間
年齢:18歳
Lv.1 HP:500/500
MP:500/500
STR:100
AGI:50
VIT:100
MND:150
DEX:80
INT:200
スキル:言語理解Lv-
称号:ダンジョンマスター
『あなたには名前がありません。名前をつけますか?』
「名前はいらないかな」
わたしは考えることを放棄した。
どうせ適当でいいだろう。
『では、あなたの名前はアカリです』
「はい?……ってあれ!?︎」
名前を入力してないのに勝手につけられた!
『あなたは今からアカリです』
「……わかったよ」
まあ別に嫌じゃないし、むしろありがたいけど……。
それよりも早くチュートリアルを進めて欲しい。
『まずはダンジョンについて説明します』
そう言って水晶玉が光る。
すると、洞窟の壁の一部がスライドして本棚が現れた。
本棚には本がびっしりと並べられている。
『この本棚にある本のページを読んでください』
言われるままに本を手に取る。
タイトルは『ダンジョンの基礎知識』と書かれている。
中を開いてみると最初の方にダンジョンの構造やモンスターの種類などが書かれている。
「なるほどね。この内容を覚えればいいんだ」
アカリはスラスラと読み進めていく。
『チュートリアルを終了します』
そう言われて、わたしは顔を上げる。
いつの間にか、本は全てなくなっていた。
「全部覚えたぞー!」
これでいつでもダンジョンを作ってもいいらしい。
次は仲間を召喚するみたいだ。
さっき読んだ本の内容を思い出す。
「えっと、確か最初に水晶玉に手を置いて、好きな場所を思い浮かべるんだったよね」
わたしは手を置いた。
すると、頭の中で何かが繋がったような気がした。
次の瞬間、地面が大きく揺れる。
「うわぁ!」
思わず尻餅をつく。
しばらくして、揺れが収まった。
何が起こったのか確かめるために立ち上がる。
「なにこれ?」
そこには大きな扉があった。
扉には文字が書かれている。
『ここから先はダンジョンとなります』
わたしはその扉を押し開ける。
そこは巨大な空間になっていた。
天井も高く、どこまで続いているのかわからないくらい広い。
そして、その中央に人影が見える。
わたしはゆっくりと近づいていく。
その人影は身長2メートルを超える大男だった。
全身を覆う黒い鎧を身につけており、兜からは角のような突起物が二本出ている。
手には大きな戦斧を持っている。
男は突然、こちらを振り向く。
「ひっ……」
わたしは後ずさった。
男が一歩踏み出すたびに大地が震える。
男の赤い瞳がじっとこっちを見つめてくる。
わたしは恐怖心を抑えながら声をかける。
「あ、あの〜」
反応はない。
ただ黙って見下ろしてくるだけだ。
(どうしよう……)
困っていると、男がおもむろに口を開いた。
「我を呼んだのは貴様か?」
「え?」
アカリは困惑した。
言葉が通じるとは思わなかったのだ。
「はい。そうです」
「そうか」
アカリはほっとした。
よかった。話が通じそうだ。
「あの、あなたの名前を教えてくれませんか?」
「我が名を知りたいだと?ふむ……」
男は少し考え込む。
「いいだろう。我の名はベルゼブブ。魔王軍四天王が一人だ」
「魔王軍!?︎」
まさか、本当に魔族がいるなんて……。
しかも四天王の一人だって!?︎
「あの……私のダンジョンの、戦力になっていただけますか?」
「いいだろう」
「ありがとうございます」
アカリは嬉しくなった。
これでダンジョン運営に一歩近づいたからだ。
「だが、条件がある」
「条件ですか?」
「ああ。お前のダンジョンに住まわせろ」
アカリは驚いた。
こんな大きな人がわたしのダンジョンに?確かに、この人は強いみたいだけど……大丈夫かな?
「どうした?早くしろ」
「わかりました」
こうして、アカリは新たな仲間を手に入れた。
アカリはダンジョンコアのある部屋へと戻ってきた。
アカリは部屋の真ん中に立っている。
ベルゼブブはアカリの後ろで待機している。
「では、始めます」
アカリはダンジョンマスターの能力を発動させる。