これからも会おう
「わかる? 私は毎日朝練もトレーニングもちゃんとやってるのにのほほんとお昼と放課後だけ花乃は参加するわけ。それなのにセンスがあるのかどんどん上手くなってあ、来年は抜かれるかもなって思ったら直接私倒して全国行くし! まじ辛いのわかる?」
「わかるよ」
さっき3回くらい似たようなこと言ってたしな。
駅の前に喫茶店を発見したので、僕と美月はそこに入った。
そこで美月はやっと完璧に戻ったのかもしれない。
「ていうか花乃全国決まったらさらにほっとしたのかだらけててさ、まあ練習はそこそこ来てたけど絶対太ってて動き鈍くなってるし、今日の相手だって私だったら勝てたんじゃないかとか考えちゃうわけ。で、そういうこと考える私って超性格悪いよねって自分で自分に突っ込むじゃん。そしたらもっと悲しくなって泣いちゃうの」
「なるほどなるほど」
美月は僕にいいたい放題言っている。
今まで溜まった分があるからな。しょうがない。全然嫌な気持ちはしない。
それでもしばらくすると、だんだん口数が少なくなってきた。
「ねえ、なんでだろうね」
「何が?」
「なんかすっきりした」
「愚痴ったからじゃない?」
「……そうだよね。ごめん」
「いや、僕、やっぱ美月といるといいなって思った」
「なんで……うざくないの?」
「うざくないよ。少しもうざくない」
「……ありがと。やっぱり智洋だね」
美月はなぜか僕と少し目を逸らしてそう言い、ポケットを探った。
出てきたのはどんぐりごま。
この前作ったやつだ。
美月はそれを回す。
前は綺麗に回ってたけど、今はゆらゆら回っている。
「なんかあんまり回んなくなった」
「まあ、時間が経ってるからどんぐりの重心だって変わってるだろうし。前は無理して綺麗に回ってたんじゃない?」
床と擦れて、止まりかけてるどんぐりごまを見て、僕はそう言った。
「どんぐりが無理して頑張るわけないじゃんウケる」
美月はそう笑って返した。
今の笑顔はなんかほっとする美月の笑顔だよな。
当たり前だけど。
「これからも時々会いたい」
「え?」
僕が突然言いすぎたからか、美月は笑顔から驚きの顔になった。
「いいよ。会お会お。ていうかめっちゃ会おう!」
「おっけー」
僕はなんだか晴れ晴れした気持ちになった。
そんな僕の様子を見て少し不思議そうな顔をしながら、美月はどんぐりごまを大切そうにポケットにしまった。
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