振り返る幼馴染
「ほんとまじありがと〜ね美月。あと彼氏さんも!」
「彼氏じゃないよ!」
美月と美月と同じ高校の人が何やらしゃべっている。
僕は少し離れたところにいて、スマホをいじっていた。
検索しているのは、関東大会のトーナメント表。関東大会のベスト8以上が全国大会に出場できることになってて、今年の美月の結果は、ベスト16。美月の全国大会出場をあと一歩のところで阻んだのは、まさかの今、美月と話してる人だった。
強豪校だと、同じの高校の人同士で潰し合うこともあるんだなあ。
そんなことを考えていると、美月とその人はお互いに手を振って別れてるところだった。
「おまたせ」
「ああ、うん」
まだ午前中だ。
「帰ろ」
「ああ」
まあなんというか、元気ないな……。
当たり前っちゃ当たり前か。去年は立てた全国という舞台に今年は立てなかったのだから。
前を歩いている美月に声をかけた。
「えらいな美月は」
「何が?」
「だって、今日応援に来てたし、ていうか美月以外応援に来てなかったよな」
「まあねー。うちの部活、結構部内のライバル意識強いからね〜。団体戦の時はすごい団結するけど個人戦だとこんな感じだよ」
「なるほどな……」
「ま、私はちゃんと応援来たから確かにえらいかも」
「うん」
絶対悔しいのに、応援に来て、ちゃんと声も出して。えらい。
だけど。
「美月ってそんなにえらい子だったっけ?」
僕の知ってる美月じゃないと感じていた。三年会わないうちに大人になったんだなあと思っていたけれど、やっぱり、昔美月と仲良く遊んでいた頃を思い出す。
まず、普段の遊びの時から負けず嫌いだった。
僕にゲームで負けると怒り出すし、勝つまでやるし、コントローラーかちゃかちゃやって気を散らそうするし。
テニスの試合だって小学生の頃からジュニアの大会に出てたけど、負けたらわんわん泣くし、なぜか僕をぽかぽか叩くし、そのまま夜までゲームに僕を付き合わせてずっと愚痴ってるし。
僕から見て美月はすごい幼馴染だ。
けど、それは美月が完璧だからそう思うのではない。
完璧なのは絶対おかしい。それくらいは最近会っていない幼馴染にでも、わかる。
だから三年ぶりに会った幼馴染の美月がまだ美月のまんまでいてくれているのなら。
美月が振り返る。
その表情を見て、僕はほっとした。