テニスの全国大会を見に行った
テニスの全国大会の会場は、東京の都心、とある埋立地の上だった。
かなり遠く感じたけど、実際は、一時間と少しで最寄り駅まで着くことができた。
今日は女子の全国大会があるらしく、たくさんのテニスウェアを着た女子が歩いていた。
僕はその中を静かに、時折空を見上げて歩き、会場まで行った。
テニスコートが沢山あり、その周りに少し観客が座れるところがある。
一番目立つところにある運営窓口みたいなところには、トーナメント表が貼ってあった。
僕は腕時計を見た。
見てもあんまり意味ないか。
僕はあたりを見回した。
人があまりに多い。
正直、適当に歩くしかないかも。
そう思って、僕はぐるぐる歩き回っていた。
あ、これ、不審者だと思われそうだな。
そう思った時、小さな後ろ姿を見つけた。
僕はその後ろ姿を目指して歩く。
そしてその人の少し離れたところ……でも隣って言ってもいいくらいのところに座った。
「美月」
「え、えええ、なんでいるの?」
「まあ来たかったから」
「そう……私のこと探してたの?」
「探してたよ」
探すのは大変だった。
運営窓口のトーナメント表には、選手の名前と、一回戦の開始時刻とコート番号が書いてあった。
だから開始時刻の少し前に、試合があるコートに行けば選手とは会えるだろう。
でも、この人数で、選手ではない美月を探すのはなかなか大変だった。
美月は、テニスウェアを着ていなかった。
僕と美月が沈黙の中並んで座っていると、目の前のコートで一回戦が始まった。
「あの人、一緒の部活の子」
「そうか」
なるほどな、だからここにいるのか。もう少し僕に推理能力があれば、美月と同じ高校の選手がいるかチェックしてもっと簡単に美月と会えたかもしれない。
てか、試合のレベル高いな……。
僕の高校のテニス部で部内戦かなんかやってるところをたまに見るけど、なんかそれと比べてすごい戦いを繰り広げてる気がする。
当たり前か、全国大会なんだし。
美月と同じ高校の人の方が劣勢だった。
というか相手がすごい。身長が百八十センチくらいありそうだ。
「どんまいどんまい!」
僕の隣で美月が声を出している。
僕も出そうかと思ったけど、突然見知らぬ人に応援されるとペース狂うだろうし、やめとこうと思った。
結局、美月と同じ高校の人は、負けてしまった。